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【TE第2話】ナイトソロで嵐山中隊護衛【鬱ブレイク】 [マブラヴ]

もし黄金の鉄の塊で出来ているナイトがアニメ版TE第2話に出て来たら? そんな"もしも"のSSです。






≪ブォロロロロロロロロ……≫


「…………」


1998年、重慶ハイヴから東進したBETAが日本に上陸してから約一週間後。

一機の77式戦術歩行戦闘機"撃震"を乗せた輸送車が嵐山補給基地を目指して移動していた。

そんな輸送車の助手席には銀髪の長身の男が座っており、腕を組んで景色を眺めている。


「(折角 日本に来れたが、早くも見納めか)」


身長190センチ前後はありそうで、30歳近そうな日本人不相応な容姿をしている帝国軍の軍服を着た男性。

何を隠そう彼はかつて母なる大地"ヴァナ・ディール"と呼ばれる世界から来た人間であった。

早い話 剣と魔法のファンタジーの舞台で有り、其処では誰もが強さを認めるナイトして名が知られていた。

そんな彼は別次元の世界では北海道の不良学生とかだったと言う記憶も持ち、何とも謎の多い外人である。

ぶっちゃけると因果律量子論が絡んでいる為なのだが、彼はヴァナでの転移魔法の失敗が原因と断定した。

それならば帰る手段は無いし、命が有ったダケでも儲けモノだと自己完結して"この世界"で生きようと考える。

だが丁度この地球は謎の生命体に侵略されている最中だった為、ナイトらしく世界を救おうと衛士を目指した。


「(もう地球は駄目かもしれにぃな)」


衛士に成るに当たって彼に立ちはだかったのは言葉の壁であり、見た目に反して彼は日本語しか話せなかった。

しかし卓越した身体能力と衛士としての適正の高さにより、彼は最速で衛士と成り最前線へと送り込まれる。

その時と場所は……1988年の欧州。

今から10年前で有り彼がBETAの世界に来た時と同様 若干18歳であった。

当時の大陸は今と同様 当然の如く地獄であり、彼は生き残っては来たが連戦連敗の悪循環。

ヴァナでの力は失っていない為、兵士級や闘士級は倒す事が出来ても大型の物量には彼は無力だった。

よって何時からだろうか? 騎士の誇りは枯れ果て、ただ死にたくない一心で能力を使う様に成ったのは。

もはや共に戦って死んでいった人間の数など覚えていない。

最初は助ける事で必死だったが、今となっては無駄な努力でしか無いと悟ってしまったのだ。

そうなると只でさえ大陸での言葉を使えないのに無口に成った彼の待遇は杜撰(ずさん)となる。

ただ機体を与えられ、中隊の末席に配属され可能な限りBETAを倒して敗走する日々を繰り返す。

すると何時の間にやら失語症のレッテルを貼られていたが、彼は気にもせず世界の流れに身を任せていた。

その為 28歳に成っても彼は未だに少尉で有り、宛がわれる機体も旧式のモノばかりであった。

部隊に配属されようと煙たがられ、何も喋らず自衛に徹する者の機体など、ポンコツで十分なのである。


「大尉」←アニメの赤の人

「ん?」


――――そんな落ちこぼれの衛士に、赤い斯衛の軍服を来た短髪の女性が真横の運転席から声を掛けて来た。


「今回の任務を快く引き受けて頂け、感謝の言葉も有りません」

「それほどでもない」

「しかし……本当に宜しかったのですか?」

「何がだ?」

「失語症が治られたのは つい先日との事。それなのに帝国軍 転属と成ってから初の任務が訓練兵の支援など」

「気にする程でもない。何処でも激戦だろうし配属されるならヒヨッコの多い部隊の方がバランスがいいべ」

「助かります。流石に訓練兵10名を抱えると成るとオレ一人では自衛と指示で手一杯でしょうから」

「斯衛にしては随分と弱気な気がするんですがねぇ?」

「アハハ。オレはまだ実戦経験は2度しかないんで耳が痛い話です。同じ赤でも斯衛はピンからキリ……例えば月詠とかの赤に比べたらオレなんて足元にも及びませんよ。今はそれだけ人手不足って事です」

「ほむ」

「大尉は如何ほどで?」

「100回から先は忘れたぞ」


此処で違和感を感じた だろうが、彼は敗戦を重ねていった末で遂に転機が訪れた。

戦いの部隊が日本に移った事により彼はようやく自然に喋る事ができ、失語症のレッテルが消えたのだ。

それにより光州作戦で負傷した為 戦力外通告された彼を帝国軍が拾い10年の功績を考え大尉待遇を与える。

対して以前の彼なら首を横に振っただろうが、日本は第二の故郷である場所な為 今回は断る理由が無かった。

よって将来を有力視される斯衛軍 衛士養成学校のヒヨッコとの随伴を2つ返事でOKしてしまったのである。

生憎 九州での防衛戦には参加する事が出来なかったが、京都の防衛には間に合い彼としては本当に良かった。


「と、ところで大尉殿は今回の戦いをどう見られますか?」

「九州で杜撰な防衛をしたツケが来るな。間違いなく京都は落ちるべ」

「!? そう……ですか」

「光州作戦では本気で死ぬかと思ったからぬ。あの数が そのまま日本に来て耐えられる筈ないぞ」

「……ッ……」

「それに大半の衛士が機体の性能を殆ど活かしきれてにぃ。それを何とかせんと話にならんな」


今の戦術機では彼の思った事の半分すら実行できないが、言った所で どうにも成らない事は分かっている。

ならば大尉では無くもっと上の地位に昇る必要が有り……今回が ようやくその一歩を踏み出せる瞬間だ。

現金な話だが、彼は唐突に"大尉"と言う評価を貰えた事で僅かに自分の失われた信念に光が射していた。

対して斯衛の女性は彼の言葉に顔を顰(しか)めるしか無かったが、気を取り直すと片手で何かを渡してきた。


「……っと忘れる所でした。大尉」

「なにかようかな?」

「コレが今回 面倒を見て頂く者達です。御確認ください」

「良いぞ。顔と名前は一致させて置くべき」


――――受け取ったのは書類で有り、それを見た彼は今回護衛する面子を見て驚愕する。












嵐山第一小隊

省略




嵐山第二小隊

篁 唯依(16)譜代武家

甲斐 志摩子(16)武家

石見 安芸(16)武家

能登 和泉(16)武家

山城 上総(16)武家












「どうかされましたか?」

「おいィ……おれには全員女で、しかも16歳っぽく見えるんですがねぇ?」

「それで当たってますよ? 問題なく読めてる様で安心しました」

「ちと洒落にならんしょこれは……今迄 頑張って戦って来たのは何だったんだと言う顔になる」

「仕方有りませんよ。でも志願兵で事足りてるとも言えます」

「思ったより日本も深刻だったんだぬ」

「元からだと思いますよ」

「このままでは衛士の年齢がストレスでマッハなんだが」

「???? どう言う意味で?」

「何でもにぃ。ともかく難易度の高いクエだなこりは」


日本で帝国議会が女性の徴兵対象年齢を16歳まで引き下げる修正法案を可決させたのは周知の事実。

その第一波が彼女達だと言う事になるが、彼は大陸ので戦いに明け暮れていたので知識に疎かった。

共に戦ってきた同僚が男性ばかりと言う事が原因で自覚が無かったが、彼の様な高齢の男性衛士すら少ない。

その為10年間戦い続けて5体満足で生き残っている彼を、赤服の女性が評価していないワケが無かった。

だが自覚の無い彼は気にも留めず気を改め、今や数ヶ月前までの生気の無い表情の名残は完全に消えている。


「見えて来ました。あそこが嵐山補給基地です」

「見事な基地だと感心はするが何処も可笑しくは無いな」

「む、迎えが居ますね。其処で停車させます」

「ジュースを奢ってやろう」




……




…………




日本帝国 斯衛軍 衛士養成学校に通い始めてから半年も経っていないウチでの実戦。

だが衛士を目指し四六時中教本に目を通す程 熱心だった篁 唯依としては、むしろ望むところであった。

正直 生き残れるかどうかも分からないので、怖くないかと聞かれれば肯定するだろう。

されど尊敬する父や憧れの叔父は過去に更なる過酷な状況下を生き抜いて来たのは明白。

ならば怖気づく訳にはゆかず、ひたすら現実と向かい合うしか無い。

恐らく全員が生き残るなど夢の様な話だろうが、仲間の屍を乗り越えてでも前に進むしか無いのだ。

若干16歳である少女の思考にしては何かが麻痺しているかもしれないが、この狂った世界では妥当。

斯衛の人間であらば尚更であり、場所によっては10代前半でも戦地に赴く事を余儀なくされるのだ。


「第一小隊・第二小隊 集合しろ!!」

『――――はっ!!』


現場に向かって最初に言い渡された指示は待機。

実戦経験が無く訓練課程も終えていない彼女達は正規軍の足手纏いとの事。

納得はいかないが間違い無い為、暫くの間 大人しく待っていると先程の赤服の中隊長の声が響いた。

それにより慌てて少女達が駆け寄ると、中隊長の横に見慣れない外国人が立っていた。

自分達より10歳以上も年上だと思われる、銀髪・長身の帝国軍のジャケットを羽織った男性。

更には右手に何故か歪な形をした鞘にも収まっていない"剣(グラットン・ソード)"を持っている。

正直 女性だけの空間には非常に場違いであり皆が注目したが、中隊長は無視して叫ぶ。


「良いか!? 先程 防衛線が突破されたとの報告が有り、突出したBETAが間もなく鷹峯 辺りまで迫って来るとの事だ!! 即ち既に此処が最前線……貴様達にも間もなく出撃指示が出るだろうッ! だが貴様ら全員が死の8分を越える事が出来ないのは目に見えている!!」

『…………』

「其処でッ! 帝国軍は貴様らヒヨッコの為に大陸の猛者の一人を付けてくれた!! 今回の任務で同行して頂ける事と成ったブリリアント大尉だ!!」

「…………」

「大尉殿?」


少女達と同様に彼も"やはり"そうだったかと実感し、言葉に詰まっている側だったようだ。

だが中隊長の言葉で直ぐに我に返ると彼は無言で敬礼したので、それに唯依達も続いた。

そのギコちなさに彼は昔の自分の姿が重なり、無意識のウチに大きな高揚感と責任感を得た。

何としてでも この少女達には生き残って貰わなければならない……全滅など持っての他だ。

ならば相手が訓練兵らしく先ずは堅苦しい緊張感を抜いて貰うべきと考え、自分を右手の親指で挿しつつ言う。


「おれの名はブリリアント・アンルリー・レーザー・オブ・ノーブル・テザー大尉だ。言い難ければブロントで良い。国は欧州の辺りなんだが、何故か日本語しか喋れないバグが有るので国籍を近い内に移そうと思っている感。それで若い頃は不良だったので喧嘩も強いしバイクもヘルメット被らないで乗る。あと自慢じゃないんだが戦術機の操縦に関しては衛士界のイチローですねと言われたことも有る(捏造)」

「え……えぇ~?」

「(た、大尉……だよな?)」


絶望によって もう何年も言う機会が無かったが、コレがブロントの本領発揮である。

いわゆる銀髪イケメンに反する話の内容……余りのギャップに上官相手に間の抜けた発言をする安芸(あき)。

また彼の横に居た中隊長も、先程まで隣に居た頼れる衛士は同一人物なのかと疑ってしまった。


「(何で名を名乗るのに最後は大尉をつけたのかしら?)」


―――― 一方ブロントの発言に意外と冷静な唯依。


「(い、言ってる事は良く分からなかったけど、凄く格好良い人……)」


――――彼に見惚れて話を良く聞いていなかったリボンの少女・志摩子。


「(イチローって……誰の事? それよりも……)」


――――目の前の大尉など どうでも良いから早く敵討ちをしたい眼鏡の少女・和泉。


「(私達の緊張を解して下さっているのね。流石 大陸の衛士ですね)」


――――何をどう間違ってかブロントの発言を前向きに捉えた上総(かずさ)と、他の少女の反応も様々だった。


「と、とにかく足を引っ張らない様 死力を尽くせッ! 小隊各員 戦術機内で待機せよ!! ブリリアント……」

「ブロントで良い」

「……ブロント大尉は"撃震"で同伴する!! 以上 解散ッ!」

『了解!!』×10


≪たたたたたたっ≫


「大尉。どうですか? 見解は」

「アレだと ほぼ全滅なのは確定的に明らか」

「――――そんなッ」

「まァそう成らん為に おれ達が居るんだべ? お前も斯衛(笑)を避ける様に頑張るべき」

「言われる迄も有りません。それではオレも失礼します」

「うむ」


中隊長が去ると何となくブロントは気配を感じ早足で外を眺めに行くが、其処で見た光景に舌打ちする。

丁度 飛行して戻ろうとした機体2機が光線級のレーザーに撃ち落されてしまったのだ。

確か正規軍と言われていたが、彼が現実に目を戻す度に呆れるような死にっぷり無駄っぷりが出て来る。


「まるで基本が成ってない感。今迄 何習って来てた訳? 突撃級に棒立ち迎撃とかもギャグだろ」


――――そう呟くとブロントは溜息を吐きながら背を向け基地の内部に戻ってゆく。


「ともかく。腕を選ばないナイトが居れば全員 生還 確定だが、出来れば"コレ"の出番は欲しくにぃな」








ナイトソロで嵐山中隊護衛:開始








■簡単なキャラの情報■

ブロント:銀髪長身。エルフ耳が無い。

篁 唯依:本編と違って短髪。

甲斐 志摩子:後頭部の赤いリボンがチャームポイントで長髪。一番スタイルが良い。

石見 安芸:背が低くて短髪なボーイッシュ。

能登 和泉:ツインテールで眼鏡。恋人が殺されている。

山城 上総:古手梨花をそのまま大人にした感じの容姿。

中隊長(赤):唯依と安芸より更に短髪。姉御っぽい顔。








『…………』


中隊長の指示で"瑞鶴"内で待機する中、必然的に訪れる沈黙。

まさに嵐の前の静けさであり、普段気にも留めない心臓の鼓動が何時もより非常に大きく聴こえる。

それは極度の緊張の為に仕方無い事……既に精神安定剤の世話に成っている隊員も居る。

しかし唯依は冷静に深呼吸をして気を落ち着かせていると、場の空気を和ませようと安芸が回線を開く。


『なァ皆ッ。あの突然 来たブロントって大尉の事だけどさ、どう思った?』

「どう思ったって……」

『え~っと、何でも良いんだよ。何でも』

「なら安芸は どうなの?」

『あ、アタシ? そうだなァ……』


――――質問を返されて少しの間 考える石見 安芸。話題を振ったは良いが、特に深い意味は無かった模様。


「…………」

『えっと……何か口調が変だったよな? 言ってる事が矛盾してたし。やっぱり外国人だからかな?』

「そう考えれば何を言ってたか良く分からなかったのは仕方無いとして、翻訳機も無しでアソコまで片言が無しで話せてたって言うのは凄いかもしれない……かも」

『だよなッ? 大陸で戦ってたって言うのに、良くそんな余裕が有ったなって思うよ。イザと言う時に間違った指示を飛ばされるのは困るけどさ~』

「指揮は中隊長が執るみたいだし、大丈夫だとは思うけど……」

『後 変なギザギザしてた剣みたいなのも持ってたのは何だったんだろ?』

「さぁ?」


――――多少 気には成るが考える事は別に有ると思う唯依は、軽く首を傾げて答えるダケだったが。


『特に珍しい事でも無いでしょう』

「山城さん?」

『何でだッ?』

『最も手に馴染んだ得物を戦術機に持ち込むのは五摂家 等では当たり前と聞きます。大陸で戦っていた者にも成らば尚更なのでは無いのですか? 必要になる様な状況に陥るなら死んだ方がマシかもしれませんけど』

『へぇ~。でもさァ? ギザギザな剣でBETAなんか斬れるのか?』

『……生憎 外国の武器には其処まで詳しく有りません』

『ははッ。そりゃそうだ』

「(全く安芸らしいわね)」


――――此処でクスクスと微笑が毀れた為、その調子で安芸は今の話題を続ける事にした。


『志摩子。アンタは どう思ったのさ?』

『えっ? わ、私は……凄く格好良いって思ったかな?』

『はぁ~っ!? こんな状況で"そんな印象"抱くなんて大丈夫なのかよ?』

『ち、ちちち違うよッ! 口調や剣の事は安芸が言ってたから、次は"その事"かなって思ったダケで!』

『アハハハ。顔真っ赤にさせても説得力無いって。まァ……背も高かったし男前だったってのは認めるけどね』

「でも重要なのは衛士としての実力だと思う」

『た、頼りになるのかなッ? 格好良くって凄腕だったら言う事 無いよねッ?』

「中隊長が認めてる みたいだったから間違い無いと思うけど、大尉が撃震に馴染めるかが心配ね」

『そうですわね。ファントムの搭乗経験が有れば問題無いとは思いますけど』

『……ってか志摩子。アンタやっぱり惚れてんじゃん(和泉の2の舞に成らなきゃ良いけど)』


――――彼女達の心配する一方。ブロントは重量型タイプの戦術機の方が好みだった為 特に問題は無い。


「ともかく。ブロント大尉が来てくれた事で間違い無いのは、私達が生き残れる可能性が上がったと言う事」

『!? そう考えるとアタシ達ってラッキーなのかな?』

『間違い無いですね。少なくとも私は只者では無い方だと思いました』

『だったら何かアドバイスでも貰って置けば良かったかな~?』

『そのついでに生き残った後は食事の御誘いってか?』

『そ、そんな事 考える無いでしょ~!? 安芸の馬鹿ッ!』

『……でも』

「和泉ッ?」


――――此処でBETAの九州侵攻で恋人を失った能登 和泉が初めて口を開いた。


『そんな大陸の人達が もっと頑張ってれば、あの人も死なずに済んだのに……』

『そ、それはッ』

『気持ちは分かりますけど能登さん。そんな事は大尉の前で では言ってはいけませんよ?』

『……ッ……』

『え~っと。コレって惚気た事言った私の所為だよね? ごめんなさい』

『うぅん……大丈夫だよ。志摩子』

「(流石に良い流れで実戦とは いかないみたいね)」


――――少し場の空気が悪く成るが、良いか悪いか今のタイミングで警報が鳴り響き中隊長からの通信が入る。


≪ヴンッ≫


『貴様等。お喋りは此処 迄だ』

『……ッ……』

『BETA斥候軍 尚接近中。総数凡そ220。先頭デストロイヤー級・後続にグラップラー級。光線級は其の最後尾だ。全機カタパルトに移動しろ』

『了解ッ!』

「お父様……どうか私達を御守り下さい……」




……




…………




……出撃した11機の瑞鶴と1機の撃震が匍匐飛行で迎撃ポイントへと向かっている。

その際 意外にも特にブロントは発言する事無く、各衛士の武装などを念入りに観察していた。

訓練兵が実戦でマトモに戦える事など不可能と考えている彼は、迂闊なフォローをする訳にはいかないからだ。


『篁の率いる第二小隊はデストロイヤー級の殲滅』

『第二小隊・了解』

『オレの率いる第一小隊は第三小隊を支援。ブロント大尉 率いる第三小隊はグラップラー級を各個撃破しつつレーザー級の殲滅を最優先とする』

「第三小隊・了解したぞ」


本来 中隊長とブロントを除くと分隊は2つ有り各5名の合計10名だが、今回は3小隊編成で各4機である。

先ず第一小隊は中隊長を小隊長に、唯依とは別の部隊の衛士3名が配置された。

この小隊は中隊長が指揮を執るので比較的に被害が抑えられるだろう。

次に第二小隊だが、唯依・安芸・志摩子・和泉の編成。

最も早く接触する突撃級を抑える役目を担う事から、リスクが高いと見て間違い無い。


「(第二小隊……開幕で誰か一人は死ぬと見て良いべか)」


そしてブロントの第三小隊は、上総に加えて2名の衛士が彼の背中を頼りに実戦に臨む。

レーザー級殲滅を担うと言う事から、支援突撃砲を装備しているので要撃級には極端に弱い部隊だ。

其のフォローをする為に第一小隊が居るのだが、中隊長はともかく訓練兵が的確なフォローが出来るか?

それ以前に要撃級に第一小隊員が倒されてしまう可能性も非常に高く、彼の不安は募るばかりである。

尚 小隊長のブロントの機体は左手に盾・右肩に長刀・右手に突撃砲を装備する迎撃後衛を執っている。


『…………』


――――そんなウチに各機体が配置に着き全員が息を呑んでいると、敵が地面を揺るがし接近してくる。


≪ドドドドドドドド……ッ!!!!≫


『あれが……BETA!?』

『ギリギリまで引き寄せる。戦術行動は100メートル以内』

『了解!!』

「(これは220どころじゃにぃな。ちと訓練兵には無理な数だべ)」

『良いか!? 迎撃シフト・アローヘッドワンッ! 全機・兵器使用自由……行くぞ!!』

「(やっぱりテンプレの指示か。それじゃ訓練兵だと勘違いするぞ)」


民家を粉砕しつつ文字通り突撃して来る突撃級に、ブロント達は広い畑を戦場として迎え撃つ。

そうならば先行するのは指示通り唯依の第二小隊。

山吹色の機体を先頭に安芸・志摩子・和泉の白い瑞鶴が走ってゆく。


『うああああぁぁぁぁーーーーッ!!』


≪ドパパパパパパパパ……ッ!!!!≫


だがブロントの予想通り志摩子の瑞鶴が突撃級との距離を詰めながら無謀にも突撃砲の36ミリを乱射する。

しかし当然 倉庫に弾かれ突撃級は止まらず"兵器使用自由"と言う言葉すら訓練兵を勘違いさせていた。

もし最初に接触するのが要撃級であり、交戦中に突撃級が迫れば棒立ちで轢き殺される様な最期に成るだろう。


「(やれやれ。やっぱり言わにぃと分からんのか?)」


――――よってブロントは息を吸い込んで"勘違い"を正そうと叫ぼうとしたのだが。


『訓練を思い出して!! 志摩子ッ!』

『!?!?』

『デストロイヤー級は!?』

『わ、分かってる……!!』

「(ほぅ……経験が活きたな)」


横から入った唯依の言葉で我に返った志摩子は、機体をすかさず跳躍させると可動兵装担架システムを作動。

やり過ごした突撃級の背後から振り返らずに36ミリを当てる事で一度目の危機を乗り越えた。

一方 唯依・安芸・和泉も宙で機体を反転させて正確に突撃級の弱点を撃ち抜く事で役割を果たす。

それに安堵して志摩子は意味も無く振り返りつつも、笑顔で溜息を漏らしたのだが。


「――――高度を下げろ馬鹿!!!!」

『えっ!?』


【レーザー警報】


『志摩子ッ! 高過ぎる!!』

『そ、そうだッ』


突然のブロントの怒声に志摩子が警報を察知して慌てて高度を下げると、スレスレをレーザーが通過。

かなりのタイムラグが有ったのでアラートが鳴ってから声を掛けても間に合わなかった だろう。

もし彼が声を出さなければ、志摩子は直撃を受けて爆死していたのは間違い無かった。

だが大陸での戦いを繰り広げて来たブロントからすれば、警報が鳴らずとも危険な高度は分かる。


『はぁっはぁ……あ、有難う御座いました大尉』

「最初の行動から予想できていた感。それより第一小隊と共に おれ達のフォローをするべき」

『り、了解ですッ』

「タカムラ。筋は良かったが詰めが甘けりゃフォローの意味が無いぞ?」

『……すみません』

『ひるむなッ。敵の懐に飛び込めばレーザーは来ないッ! 次の迎撃シフトに移るぞ!?』

『――――了解!!』

「1000以内の光線級は もう片付けたぞ。ヤマシロ以下3機・残りを殺れ」

『は、はい。嵐山11・目標のレーザー級は?』

『右前方1200。中継局の手前ッ!』

「ほぅ(……何人か"向いてる"のが居る系の話が有るな)」




……




…………




約220体のBETAの第一波に対し、嵐山中隊は完全に優勢を維持していた。

殆どの突撃級・光線級の殲滅が済んだ今、後は敵の主力で有る要撃級を残すのみだ。

……しかし弾切れによる弾倉の交換すら間々ならない訓練兵達には十分脅威と成る相手であった。

正面から向かってくる要撃級は36ミリで蜂の巣にすれば良いダケなのだが……


≪――――ガキンッ!!!!≫


「ひっ!?」


直ぐに追加の要撃級に距離を詰められると腰が引けてしまい、初陣でも有ってか腕が動かない。

その一つの躊躇でアッサリと命を散らすのだが、僅かな勇気の欠如が死の8分 最大の壁であった。

たった今も盾で要撃級の一撃目を自動防御したにも関わらず、突撃砲を撃てば倒せると言うのに撃てない。

撃たなければ数秒後に死ぬと言うのに何故か? 危機感が足りず死ぬ瞬間まで それに気付く事が無いからか?

志半ばで死んだ衛士が余りにも多く今や測れる事では無いが、仲間の死で実感するのが生の執着への一歩。

だが"そんな成長"など遂げて欲しくないブロントは すかさず右手の突撃砲でフォローし僚機を救った。


『た、助かりましたァ大尉』←嵐山12

「次は躊躇せずトリガーを引くべき」

『了解ッ!』

『私の方も何度も助けて貰っちゃって足を引っ張って……』←嵐山11

「気にする程でもない。ナイトとしてPTメンを守るのは当然の事だべ」

『……あぅッ』


此処で2名のモブ衛士の少女の顔が赤くなる。

始めは男前ながら口調が変な胡散臭い男と言う認識だったが、実は天才クラスの衛士だと分かったからだ。

訓練兵ばかりな為、中隊長は既にフォーメーション構築の指示は諦めての戦いを余儀なくされる中。

必要最低限の動きと弾倉で向かってくる全てのBETAを倒しつつ、別小隊の味方のフォローまで行う衛士。

まさしく10年の実戦経験者に違わぬ衛士で有り、実力ダケでなく味方をシッカリ気遣う紳士でも有った模様。


≪ドドドドドドッ!!≫


『大尉ッ! 危ない!!』


――――さて一時的に緊張感を解いたブロントの背後から更なる要撃級が接近し、上総が声を上げるが。


≪ブウウゥゥンッ!!≫


「下段ガードを固めた おれに隙は無かった」


要撃の右腕の一振りを背を向けたまま撃震を しゃがませる事で回避させると。

左腕の一撃も立ち上がり小噴射と言う荒技ながらも機体には影響を特に与える事無く避けてしまい。

クルリと振り返って長刀に持ち替えつつ、頭部のメインカメラを淡くギラつかせたりした直後。

前方噴射で一気に距離を詰めると攻撃の反動で直ぐには動けない要撃級の頭部に腕を振り下ろす。


≪ゴオオォォッ!!!!≫


「ハイスラァッ!!!!」

『す、凄いッ』

「別に見習っても構わんぞ? ヤマシロ」(チラッ)

『クスッ。死んでも御免ですわ』

「オゥフ。だが中隊長……皆 生きてるな?」

『はい。戦闘開始から8分。損害は無しッ』

『……乗り切れたのですね……』

「此処からが本番だろうがぬ」


中隊長が話した様に既に戦闘開始から8分が経過していた。

その際 8分の初陣の終えた少女達は皆 安堵の溜息を漏らす者ばかりだと思われたが。

まれに特殊なケースが有り今回も該当者が居た。

今 自分の命が有るのは決して己の実力ダケの戦果では無い。

何を隠そう背中を預け合った仲間達に支えられた事で得た結果なのである。

既に仲間を失っていたとすれば尚更で有り、間違っても調子に乗ってはいけないのだが……唯依の第二小隊。

ブロントからの目から見ても訓練兵ながら志摩子の件 以降かなりの奮闘を魅せ感心できるレベルだった。

特に弾切れを起こした安芸のピンチに、ブロントのフォローの前に戦術機 越しの支援を入れた唯依。

訓練兵で真似できる様な技術では無く将来の成長が楽しみだが、それらの戦果が安芸を必要以上に高揚させた。

自分達4機が揃えばBETAなど恐れる事は無い……死の8分も通過したので、そう錯覚してしまったのだ。


『ハァハァ……やった、やったよ!? 唯依ィ!!』

『安芸?』

「…………」


≪――――ズシンッ≫


『死の8分を乗り切ったッ! アハハハハッ! コレでアタシは――――』

「五月蝿い黙れ」


だがブロントは似たような感じに成った者達の末路を何回も見て来ている。

今現在は少し……いや彼女にとって非常に危険な状況に陥っているが、レーダーを見ていないのだろう。

だが都合は良いので彼は黙って彼女の背後まで撃震を移動させると、盾で体当たりして安芸機を弾き飛ばした。


≪ズウウウウゥゥゥゥンッ!!!!≫


『痛ぅッ!? 大尉!! イキナリ何するんですか!?』

「一瞬の油断が命取り」


――――対して相手が上官とは言え意味がわからない安芸はブロントを睨むが、直後 通り過ぎてゆく突撃級。


≪ドドドドドドドド……!!!!≫


『……あッ……ぅあ……』(お漏らし第一号)

『石見。貴様 大尉に突き飛ばされなければ死んでいたぞ?』

「ふん。口で説明する位なら おれは牙を剥くだろうな」

『相変わらず遠回しな事を仰いますね』

「それほどでもない」

『褒めてませんわ』

『(良いなァ山城さん。私も第三小隊の方で戦いたかったな~)』

『安芸ッ。立てる?』

『う、うん……大丈夫だよ和泉。えっと……大尉。調子に乗って すみませんでした』

「礼は何度もフォローしてくれてたタカムラに言うべき」

『はい。唯依も有難う』

『気にしないで。この調子で持ち応えましょう』

「う~む。おれが思うに"死の8分"とか言うのは教えなくても良いのではにぃか? ヤマシロ」

『本来BETAと戦った初陣の衛士が、戦場で生きていられる時間の平均に過ぎませんからね』

『うわぁ……だ、だったらアタシって凄い勘違いしてた?』

『そ、それ以前に私は1分で終わるトコロだったんだ……』

「死の9分で良い」

『余り変わらないと思いましてよ? 大尉。それと最後の光線級を撃破』


≪ドドドドドドドド……!!!!≫


『……っと各員。お喋り戦闘は此処までだ』

「突撃級か。新手なのは確定的に明らか」

『どう言う事だ? 後続集団の報告は受けていないが……』

「CPとの通信は当の昔に切れているぞ?」

『なっ!? まさか……CPッ! CP応答せよ!!』

『……何故黙って おられたのですか? 大尉』

「おれはともかく、お前等は それどころじゃ無かったべ」

『避難が済んでれば宜しいのですが』

「何とも言えにぃな。ともかく光線級が来る前に引くべ。もう此処を守る意味は無いぞ?」

『くそッ……全小隊に告ぐッ! 直ちに この戦域を離脱。第8ラインに迄 後退せよ!!』

『了解!!』

「(さて。コレで終われば良いんだがな)」

『(全員が生き残れてるなんて。もしブロント大尉が居なかったらと思うと……)』

『(もう2度と同じ間違いなんてしないよ? 冷静に訓練の事を思い出せば平気)』

『(皆の御蔭で死の8分を乗り切ったんだ……此処まで来て死んでたまるかよッ)』

『(もっと戦って"あの人"の敵を……でも、また皆で一緒に過ごしたいかも……)』

『(貴方と同じ小隊に入れた事を誇りに思いますわ。告げるのは終わってからで)』


――――奮闘も虚しく嵐山補給基地 陥落。間もなく京都全土がBETAに蹂躙されようとしていた。




……




…………




「……すっかり遅くなったか」


≪キイイィィーーーーン……≫


京都府内の市街地をブロントの操る撃震が、京都駅方面を目指して匍匐飛行している。

だが周囲に共に戦っていた瑞鶴の姿は無く……何を隠そう彼が彼女達を先に脱出させたからだ。

さてアレから彼らは早い段階で第八防衛ラインを目指して撤退を開始したモノの、既に八幡防衛ラインすらも陥落しようとしており、ブロントの読み通り最早"あの場所で"たかが12機の戦術機が留まっていても何の意味も無い様な状況であった。

故に嵐山中隊は更なる後退を繰り返しつつ生き残りの帝国軍衛士と合流し、第三ラインまでは下がったのだが。

跳躍ユニットをヤられたりして孤立した衛士を回収したり、錯乱した衛士を宥める等して何かと手間取っていると、当然の如くBETAの後続に追い付かれようとしていた。

よって状況的に何機か戦える機体を囮に時間稼ぎをし、消耗の多い機体が即刻 離脱するのが定石だったが……


≪さて。殿は私が務める。お前達は第八防衛ライン上の京都駅に向かえ。其処が集積場に成っている≫

≪…………≫

≪上手くすれば補給を受けられるだろう≫

≪し、しかしッ≫

≪上官の命令に逆らうつもりか!?≫


――――合流した唯依達の教官でも有ると言う帝国軍大尉が左腕を失った満身創痍の機体で殿を申し出た。


≪おい止めろ馬鹿≫

≪ブロント大尉?≫

≪なッ? 貴官は……見ない顔だが?≫

≪そんなポンコツで時間稼ぎすると言う浅はかさは愚かしい。此処は おれに任せておくべき≫

≪なに。生憎だが片腕を失っていようと、不知火は撃震に遅れを取る様な機体ではない≫

≪ウザいなお前、喧嘩売ってるのか? 性能とか言ってる時点で相手に成らない事は証明されたな≫

≪な、何だと?≫

≪そもそも救助でモタモタしてたのは おれの指示なんですわ? お? だから責任を果たすのは当然な感≫

≪それでしたら大尉ッ! 是非 私達 第三小隊も……!!≫

≪元々大尉が居らっしゃらなければ無かった命ですからッ≫

≪この命……惜しくは有りません≫

≪どちらかと言うと大反対だな。時間が無いから其処の怪我人を 引き摺ってでも連れて行くべき≫

≪!?!?≫

≪お見通しだったか≫

≪伊達に10年のキャリアが有る訳じゃにぃ。むしろ一人の方が遣り易いな≫

≪……クッ……大尉……どうか御武運を≫

≪何をしている山城ッ! 急いで撤退するぞ!?≫


しかし機体の損傷で帝国軍大尉の怪我を見抜いたブロントは、自分が単機で囮役を担う事を選んだ。

それにより二中隊に膨れ上がった瑞鶴・不知火・撃震やらが京都駅を目指し壮絶なゲリラ戦を繰り広げた結果。

長刀は折れた為 破棄・拘りが有るので捨ててはいないが盾も半壊し、36ミリは ほぼゼロで消耗は甚大。

されどボロボロに成りながらも決定打は受けず、五体満足で時間稼ぎを終えてBETAを振り切ったブロント。

殲滅ではなく注意を引き付ける為ダケに置いての自衛でしか射撃・白兵しかしていないでの戦いだというのに、此処まで彼の機体が消耗すると言う事は、余程 長い時間の陽動を行って来たと言う事だ。

もはや撃震で出来るような機動では無かったが、少女達と日本を守りたい気持ちと長年の間 培って来た業。

そして"この世界"と"彼の元の世界"でも理解 出来ない、今 取り戻したナイトの誇りががブロントを抗わせた。


「しっかし撤退ルートが平地の上だとはな……もし光線級の視界が開けてたら半分は堕とされてたぞ」


――――とは言え今や慣れた"時間稼ぎ"だったらしく、ブロントが撤退中考えるのは これまでの状況の事。


「まさか訓練兵だから低空飛行し易いルートを選んでた訳? 撤退が遅れて詰められてたら良い的だったべ」


――――今思えば嵐山補給基地は、まるで其処まで落とされる事は無いかの様な空気だったかもしれない。


「それにしても……日本にも思い切った事をする奴は多いな。彩峰中将の事と言い、今回の艦砲射撃と言い」


実際 後退が遅れて間に合わずに散った者が大半だが、琵琶湖からの砲撃に助けられたのは嵐山中隊も同様。

京都の歴史的建築物をBETA諸共 塵にするという苦肉の策だったろうが、その恩恵は計り知れない。

アレで今回 侵攻して来た数を大幅に減らす事に成功しており、残りを蹴散らしてしまえば一度は凌げる筈。


「まァ……京都も持って3ヶ月と言った所だろうがぬ」


――――だが大陸がBETAの前に落ちた今、小さな島国の日本など防衛に徹すれば飲み込まれるのは必然。


「全く人類。特に米軍は何してる訳? さっさと攻勢に出てハイヴを9個くらい落とすべきだと思うんだが」


前述の通り現実に目を向け始めたブロントは、ブツブツと変な日本語で人類の戦い方の不満を漏らす。

謎な理論が多い彼にとっては、当然"この世界"に対するツッコミ所は多く話そうと思えば幾らでも出て来る。

だが愚痴りながらも警戒は全く怠ってはおらず、彼は飛行しながらも地面が揺れている事で危険を察した。


「とうとう大物が来たべか」


≪――――ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


線路上を通って京都駅を目指している中、ブロントは撃震を唐突に減速させて着地させると。

全高66メートルをほこる要塞(フォート)級の頭部が出現し、彼の機体を標的としたか広い線路に乗り出す。

正直 熟練のパイロットでも単機でも手に余る存在な為……艦砲射撃を切り抜けて以降 放置されたのだろう。


「来いよ。カス猿」


≪――――フオオオオォォォォンッ!!!!≫


「バックステッポゥ!!!!」


対してブロントは全く臆する事なく状況観察をする。

先ず要塞級の内部にはBETAは入っておらず、周囲のレーダーにも特に反応は無いので完全なタイマン。

よって熟練を通り越している彼にとっては何の問題もは無く、要塞級の触手を先読みの後方跳躍噴射で回避。

その際 交戦に問題は無いが流石に機体が軋むのを気にしつつ余裕を持って距離を詰めると36ミリを連射。

それによって50発程 残っていた弾倉が直ぐ空に成るが、この時の為に温存していた120ミリが火を吹く。

ブロントとって要撃級はおろか突撃級 相手でも120ミリを使うのは愚の骨頂で有り節約での戦いが定石。

他の120ミリを使った時と言えば訓練兵のフォローをした時 程度で有り、確実性を目指した結果だった。


≪――――ズウウウウゥゥゥゥンッ!!!!≫


「破壊力抜群。追撃の滑空砲でダメージは更に加速した。さて京都駅に急ぐべ」


――――さてメタな発言だが特に描写も無く要塞級を倒したブロントは、再び跳躍ユニットを起動させるが。


『や、やった~ッ! 繋がった!! ブロント大尉ッ! 大丈夫ですか!?』

「んっ? お前は恥知らずなカイ(志摩子)か? 特に問題ないぞ? もうちょいで合流できる予定だべ」

『良かったァ~……って"恥知らず"って どう言う事ですか~!?(……確かに直ぐ死んじゃう所だったけど)』

「そんな事より顔が真っ青な理由を教えるべき。死にたくないなら教えるべき」

『そ、そうでしたッ! えっと。アレから私達は撤退する途中でフォート級と接触したんですけど、その際 先行していた篁少尉・能登少尉・山城少尉がブツかってしまって、周辺のビルに落ちてしまったんです!!』

「なん……だと?」

『当然 助けに行こうとは思ったんですけど、怪我人が多い上に皆の弾倉を集めていたのが あの3機だったので何もする事が出来なくて……御願いしますブロント大尉ッ! 唯依達を助けて下さい!! 御願いしますッ!』

「生憎 今 弾切れになった所なんですがねェ?」

『うぅッ』

『あ、アタシからも頼むよブロント大尉ッ! ……ってか、このままじゃ教官が一人で再出撃しちまいそうなんだ!! 今は中隊長が羽交い絞めにして止めてるんだけど、他に頼める人が居ないんだよォ!!』

「良いぞ」

『へっ?』

「例の要塞級は潰したから中型が居なきゃ短刀で何とかなるべ。カイは さっさと座標を教えるべき」

『は、はいッ! 場所は――――』

「ほむ。此処からは比較的に近いな。直ぐ終わるから天然のジュースを用意して待っていろよ」

『アタシも小遣い全部使ってでも用意して置くよ!!』

「9缶で良い」

『既に補給を受けて再出撃した人も多いですッ! だからブロント大尉、それまで皆を守って!!』

「五月蝿いよ馬鹿。分かったから鼻水を拭くべき」

『ひゃ、ひゃい……グスッ』

「ともかく生き残ったオマエ等は本能的に長寿タイプ。通信切るぞ」


――――急遽 入った志摩子&安芸からの通信により、ブロントは新たなクエストにへと赴くのであった。


「……今回こそは流石にグラットンの出番が有りそうなのは確定的に明らか」




……




…………




「……あれか。悪運が強い奴だべ」


光線級の万が一の存在を考え慎重に低空飛行する中、ブロントは京都駅ビルの屋上で動かぬ戦術機を発見。

それは山吹色の瑞鶴……篁 唯依の機体で有り視線を移すと同ビルに戦術機が入れそうな穴も開いていている。

正直 要塞級の周囲に小型種が居なかった事を考えると嫌な予感しかしないが、彼は躊躇せず撃震で近付くと。

機体を屋上に着陸させて跪かせ、管制ユニット内部から出るとグラットン・ソードを片手に唯依機に歩み寄る。


「生きてたら応答すろ。タカムラ」

『…………』

「チッ。バイタルの状況をリンク……ひとまずは問題にぃか」

『…………』


通信は繋がっていた為 声を掛けて見るが、どうやら意識を失っている様だ。

だが機体の様子から屋上の高さが幸いとなり大きな怪我は無いと判断したブロントは冷静に状況を整理する。

大声で叫んだり撃震で衝撃を与えて起こすのも良いが、機体の内部に居れば小型種が相手なら安全だ。

そう考えれば生身の足手纏いが増えるよりかは、一人で行動した方が彼女の為に成ると結論付けた。


「それ以前に、短刀が有るから何とかなると言ったのは良いんだがな」


彼の実力を駆使すれば余程 複数で戦車級に襲われない限りは、地形を活かす事で撃退は可能だ。

しかしビルの内部での戦いとなると相場が違い、そもそも戦術機は其の様には作られていない。

人間には広いが機体には狭いビルの内部で衛士の救出に当たるのなら尚更で有り、戦術機では足枷になる。


「レーダーの反応を考えると、中に居る戦車級は……20体はくだらんか」


せめて長刀さえ無事で有れば全ての戦車級 以下を始末して残りの2人を探せば良いダケなのだが。

先程の穴から降下して戦車級の群れの中央に突っ込み、無双する余力が彼の撃震には残されていなかった。

よって生身で慎重にスニーキングしつつ、瑞鶴に夢中な戦車級の隙を突いて2人を救出して此処まで逃げる。

そしてBETAが追って来れば撃震の短刀で撃破しつつ、唯依を起こして皆を乗せて戦域を完全に離脱。

改めて考えれば絶望的な難易度だが、ブロントは せめて亡骸の確認ダケは行おうと覚悟を決めていた。

特に短い間だが訓練兵ながら彼とのエレメントを務めた"山城 上総"……簡単に捨て置ける存在では無い。


「全く。おれが居なくなった途端に いくえ不明になるとはな」


――――またもや愚痴るブロントだったが、時間が惜しい事は承知しており早足に階段を降りて行った。




……




…………




……先程まで死を覚悟していた能登 和泉は まるで夢でも見ているようだった。


「ブロント大尉……?」

「良し。生きてたな」

「た、助けに来てくれたんですか?」

「助けたくて助けるんじゃない。助けてしまうのがナイト」


落下の際は皮肉にも山城機がクッションと成り、比較的 早く目を覚ました彼女だったのだが。

冷静さを失い周囲の状況をロクに確認せず"自分ダケ取り残された"と思った和泉は迂闊にも脱出を図る。

だが恋人のロケットを放り出して迄 慌てて外に出ようとした彼女は即 兵士級に気付かれて逃げ惑った結果。

何時の間にか囲まれてしまい、今まさに食われ様とした時……唐突に目の前のBETAが縦に両断されたのだ。


「マジでかなぐり捨てんぞ!?」


崩れ落ちた兵士級 越しに見えた者は、自分達を逃がす為に殿を務めてくれた胡散臭い帝国軍大尉。

だが そんな印象を取り払うかの様にブロントはグラットン・ソードを振り回して一撃で兵士級を葬ってゆく。

コレは強化装備と彼の肉体・そして剣の斬れ味から成せるモノであり、特に未知の力(魔法)は使っていない。

元々ガタイの良いブロントにとって、歩兵でも重火器が有れば楽に倒せる兵士級は何の脅威でも無いのだ。

尚 彼が和泉の存在に気づいたのは、彼女のロケットを拾っている時に大きな悲鳴が聴こえたからである。


「立てるか? メガネ」

「……能登です」

「ほう。其処でツッコミが出来る様なら問題にぃな」

「えっ?」


≪ポンッ≫


――――無意識のウチに自分の苗字で返す和泉に対し、ブロントは軽く口元を歪ませると彼女の頭を撫でる。


「良く諦めなかったな」

「……ッ!?」

「御蔭で間に合ったぞ」

「うッ、うぅうう~っ」








≪誰か助けてええぇぇーーーーッ!!!!≫








何やかんやで武家の娘で有る彼女は、恋人の敵を討つ為に戦地に死にに逝く覚悟はしていた。

だがクスリを服用していようと死に直面すれば、食い殺されるのを受容 出来る精神力は持っていない。

よって泣き言を叫んだワケだが、それは決して恥ずかしい事では泣く彼女の生への執着が命を繋げた。

殿を務めた……死んでしまったと思われた胡散臭い衛士が、兵士級に食い殺される瞬間に間に合わせたのだ。

この状況を理解する迄には時間を要したが、ブロントの言葉で それを認識できた和泉は声を殺して泣いた。

コレは死んだ恋人 意外には弱みを見せないと言う少女にしては気丈な精神の表れでもあった。

対してブロントは自分に抱きついて泣く和泉の背中を軽く摩りながら、ビルの更に奥へ視線を移して言う。

もう少し彼女を宥めても良いのだが、今度は早急に上総の状況も確認する必要が有るからだ。


「タカムラは屋上の機体の中で気絶してるべ。ヤマシロは何処に居るか分かるか?」

「え、えっと……分かりません。無我夢中で逃げようとしてたダケだったので」

「そうか。だったら おれが奥を見てくるから屋上で待機してろ」

「ひ……一人で行かれるんですか?」

「当然だべ。ナイトは剣と強化装備が備わり最強に見えるが、素人が来ると頭がオカしくなって死ぬ」

「でも――――」

「おれが居る限りBETAは上がって来ないだろうが、もし来たら撃震は動くからタカムラと逃げろ」

「!? そ、そんなの嫌ですッ! 皆を残して逃げる位なら、私が死にます!!」

「おいィ。誰の御蔭で助かったか分かってるんですかねぇ?」

「それに……もう待ってるの なんて嫌……絶対に嫌です」

「死ぬよ」

「えっ?」

「ノコノコ付いて来たら死ぬ。それでもか?」

「……はいッ」

「やれやれ。この話は早くも終了ですね。全く彼氏も こんな我儘なメガネの何処が良かったのか」

「能登です!」

「ともかく御守りだ。持ってろ。コレは女にとっては神の贈物だが、おれに とっては地獄の宴だからな」

「あ、有難う御座います」


――――そう言ってロケットを和泉に返すブロント。何故か笑ってるのは彼女の気丈さが賞賛に値する故だ。


「この騒ぎで来ないと言う事は小型種は居にぃな。だが おれから離れるなよ? メガネ」

「分かってます。それと能登です」

「(まァ護衛クエなんて何時もの事だべ)」

「(御免なさい。私……もうちょっとダケ、生きてたいみたい)」




……




…………




……剣装備のブロントと、ハンドガンを持った和泉が慎重に階段を降りてゆく事 数分。


「どうしてこうなった」

「や、山城さん……!」


物陰から顔を出して2人は山城機と思われる白い瑞鶴を発見したのだが、複数の戦車級をも確認したのだ。

数も多いとは言え既に戦車級が瑞鶴にカブりついてる為、隙を突くなら気付かれていない今 詰めるしかない。

だが背後の和泉の存在と救出を諦めざるを得ない程の最悪の状況が、ブロントを躊躇わせてしまっていた。


「ちとこれは洒落にならんでしょ……」

「大尉! このままでは山城少尉がッ」

「ぐぬぬ。どうするべか……アソコまで戦車級が集まる前にベイルアウトしてないって事はだ……」

「そ、そう出来ない状況に有る?」

「骨折してる線が強いのは確定的に明らか」

「そんなッ」

「もっと早く来れてれば良かったんだがぬ。通信しても おれらが脱出し難く成るに過ぎにぃな」

「(戦車級が相手なら、いくらブロント大尉が強いからって……)」

「それ以前に骨折してるのならば、機体から出れんし助ける事も無理な感」

「だとすれば――――」

「戦車級がコックピットを引き剥がした時を狙うしかにぃ」

「!? い、幾ら何でも無茶ですよ~ッ」

「そんな事は分かっているサル。ともかく救援信号を期待して見守るしか無いべ。苦汁の選択だが」

「間に合いますか?」

「おれが知るかよ(リアル話)」

「……ッ……」


グラットンを強く握り締めつつ2人で更に近付き息を潜めていると、瑞鶴の装甲で食事を始め出した戦車級。

既に瑞鶴は戦車級に覆い被されており、既に上総の存在にも気付いたらしくコックピットに腕が伸び始める。

だがブロントは状況的に動くに動けず、救援と言う"天の助け"を只 直前まで願うしか無かったのだが――――


『和泉ッ! 和泉!! 居ないの!?』

「(!? あの馬鹿ッ!)」

『山城さん!! 応答してッ!』

「(ゆ、唯依の声?)」

『ブロント大尉……ご無事なんですか!?』

「(どうやら目を覚ました様だぬ)」

「(ど、どうしましょう? 私達に気付かず山城さんの瑞鶴に近付いて行ってます!!)」

「(……殺るか……)」

「(ブロント大尉?)」

「(良いかメガネ。何が有っても顔を出すなよ?)」

「(!? ま、まさかッ)」

『山城さんッ! 山城さん!?』

『……がい……おねがい……』

『山城さん? しっかりしてッ』

『……おねがい……おねがい……おねがい……』


≪――――バコンッ!!!!≫


唐突に唯依からの通信が入ったと思うと、ブロントが通った階段を降りて彼女が早足に姿を現してしまう。

タイミングが悪かったか彼女は気配を消して移動していたモノの、無人の撃震と瑞鶴を見て通信を開始。

即ち冷静に見えて焦っている様であり、未だに仲間の姿が確認 出来ない事で最悪の展開を考えたのだろう。

その急な展開にブロントと和泉が対応できないでいると、大きな音と共に山城機のコックピット内が露になる。

すると中には頭から血を流して満身創痍な様子の上総が震えており、虚ろな瞳で"御願い"と呟いていた。


『や、山城さッ』

『うってよ……おねがい……わたしを……はやく……』

『……ッ……』


――――そして現実受け入れられない唯依と上総が目が合った瞬間。上総の頭の中で何かがプチンと切れた。








「撃ってよおおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!! コイツ等に食われる前に!!!!」








『!?!?』








「唯依いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーッ!!!!!!!!」








「ぐっうッ」








――――声は裏返り半狂乱に成って叫ぶ上総に、唯依が既に構えていた銃のトリガーに力を入れ掛けた瞬間。








「おい止めろ馬鹿」








「えっ?」








≪――――カカカカッ≫(+あのBGM)








聞き覚えの有る声に唯依が ふと指を止めると、何かが自分の横を通り過ぎたと思ったと同時に跳躍。

強化装備の恩恵が有っても到底 出す事など出来ないジャンプ力で、駆け出したブロントが跳んだのである。

当然 彼はグラットン・ソードを両手で構えており、跳んだ勢いをそのまま剣先を最寄の戦車級に突き刺した。

それは戦車級にしては小さなダメージに過ぎなかった様に見えたが、何故か直ぐに動かなくなってしまう。

何を隠そうダークパワーを開放させ、闇のオーラを纏っているグラットンには36ミリを超す威力があるのだ。

そうなると周囲の戦車級は上総を守るブロントの方に注意を向けるが、彼は迫り来る戦車級に剣を薙ぎ払う。


「お前らは一級衛士の おれの足元にも及ばない貧弱起源種!!」


≪ザシュッ!!!!≫


――――その闇を纏ったグラットンの一撃で、明らかに長さが伸びた様な剣撃を受けて両断される戦車級。


「その起源種どもが一級衛士の子分に対してナメた行為を行う事で おれの怒りが有頂天になったッ!」


≪ガシュッ!!!!≫


――――また"右手"で振り下ろされた袈裟斬りに対し、アッサリと縦に真っ二つにされてしまう戦車級。


≪ガチンッ≫


「この怒りは暫く……治まる事を知らない!!!!」


≪ドシュウウゥゥッ!!!!≫


たった今は自分の両足を食い千切ろうとした戦車級の歯をジャンプして回避し、兜割りをカマしたブロント。

そして更にブロントがグラットンを振るう度に、BETAは物言わぬ肉片へと変えられて落下してゆく。

まさに阿修羅の様な暴れっぷりであり、一方 当然 唯依・和泉・上総は口をポカンと開けるしかなかった。

ロケットランチャー等を持った歩兵なら ともかく、生身の白兵戦で戦車級に無双など聞いた事も無い。

しかも変なオーラも纏っているし、暴れまくっている大尉は本当に人間なのかとも必然的に思ってしまう。


「た……大尉……?」

「助けに来てやったぞ。ケアルを奢ってやろう」


≪――――ポワッ≫


「えっ?(暖かい?)」

「掴まれるか?」

「は、はい」

「飛び降りるぞッ! 舌噛むなよ!?」

「きゃああぁぁ!!」


≪――――ズダンッ!!!!≫


ブロントはコックピットに押し入り、能力がバレない程度の気休めの回復魔法(ケアル)を上総に掛ける。

それにより痛みながらも多少は動ける様になった彼女は、無意識のウチにブロントの首に抱き付いていた。

対してブロントは左手を上総の尻に添えて体重を預かると、躊躇せず瑞鶴から飛び降りて身を低くして着地。

直後すぐ立ち上がって正面を見ると、先程 蹴り落とした戦車級が起き上がって唯依を標的にしていたが。


「ひっ!?」

「篁さん!」

「チッ。ウザってぇ(更なぬ封印を解くしかにぃな)」


――――距離が遠かった為かブロントが舌打ちしつつ、グラットンを地面に刺して何かを呟いたと思うと。


「生半可なナイトでは使えないホーリーッ!」


≪ボゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「な、何なの この力は……」

「!? 大尉! まだ敵がッ」


彼が掌を突き出した直後、背を向けていた戦車級の体がバラバラに弾け飛び、唯依のピンチを救った。

何か白く光った攻撃と言うのは分かったが、それを行った者がブロントと言う事で皆は唖然とするばかりだ。

しかし油断は出来ず新たな戦車級が迫っており、ブロントに抱き付きながらも上総が指摘するのだが。


「プロテス」


≪ガキンッ≫


「きゃっ!」


――――戦車級の豪腕を防御魔法で弾き返すと、上総をヒョイっと浮かせて右腕で抱える様に変更し。


「ギガトンパンチ!!!!」


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「見ろ。見事なカウンターで返した。おれパンチング・マシンで100とか普通に出すし」

「ひ、百どころでは無いですね」

「それほどでもない」

「今回は素直に賞賛させて頂きますわ」

「最強の武器を装備してると、全身から醸し出すエネルギー量がオーラとして見えそうに成る」

「既に見えていた気がしましたけど?」

「……気の所為だ」

「仕方有りませんね。では今は逃げる事を考えて下さると助かります」

「良いぞ? タカムラ。さっさと"とんずら"するべ」

「り、了解ッ!」


ブロントの雷属性の左が戦車級の腹に直撃し、ブスブスと煙を出させながら どうと倒れさせるのであった。

もはや守りたい少女達の為に抑えて来たリミッターを完全に解除してしまっているが、後悔はしていない。

今の話が広まってしまえば大事に成ってしまうだろうが、彼女達は失った騎士の誇りを取り戻してくれた。

よってブロントは改めて騎士として地球の為にBETAに抗うと決め、手を振って叫ぶ和泉の方へと駆ける。


「唯依ッ! 大尉!! 早くッ! こっちこっち~!!」

「和泉!? 無事だったのね!?」

「うん。ブロント大尉に助けて貰ったのッ!」

「おれの撃震は まだ動くぞ? アレに乗って脱出するべ」

「戦術機に4人も乗れるのでしょうか?」

「おいィ。おれを誰だと思ってるワケ?」

「……それは勿論……私達のナイト様ですわ。そうですよね? 篁さん」

「うん。今迄ブロント大尉が言っていた意味が、ようやく分かった気がします」

「ちょっと話してる場合~!? 戦車級が まだ来てるわよ!?」

「問題にぃ。黄金の鉄の塊で出来ているナイトが、皮装備のタンクに遅れをとる筈は無い」

「(訂正……やっぱり殆どは理解できないみたいです)」


――――もはやモチベーションが有頂天となったブロントを、戦車級 如きが止められる筈が無かった。


『此方 武御雷。救難信号をキャッチしたが……遅かった様だ。戦車級を多数発見したので排除する』




……




…………




≪……キイイイイィィィィン≫


幾度も戦車級を振り切ったブロント達は、ボロボロの撃震に乗り込み集積場を目指していた。

その際 何機かの哨戒中の戦術機とも擦れ違ったので、残して来た戦車級も片付けられるだろう。

尚 今現在はシートに座るブロントの膝に両足が骨折している上総が座って心地良さそうに背を預けている。

また彼の左には唯依が体育座りで座っており、右では腰が抜けた和泉が膝を折って何やら呟いていた。


「アハハハ……私達 生きてる……生きて帰れるんだ……」

「本当に命が有るのが信じられません。もう大尉の御蔭としか言い様が無いです」

「おれが居なくなった結果がこれ。お前等 調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」

「……耳の痛い話……ですわ」

「ところで。ブロント大尉のアレは一体 何だったんですか~?」

「私も気に成って仕方が無いです。"その剣"だけで戦車級を物ともしなかった」

「おれの諦めない力が そうさせたダケだべ。諦めたら其処で試合終了だよ と言う名台詞を知らないのかよ」

「き、聞いた事無いですけど……何か良いですね? それって」

「確かに。でも上手く誤魔化されている様な気も」

「能登さん・篁さん。少なくとも今はブロント大尉に感謝はせど、問い質す立場では無いかと思いますが」

「うッ……」

「す、すみません」

「ヤマシロ」

「はい?」

「チカラの事は機会が有れば話すとして、もう我慢をする必要は無い感。見てて痛々しいんですわ? お?」


――――此処で駅ビルを離陸してから、彼の膝でずっと震えていた上総をブロントが気遣わない筈が無かった。


「(私は さっき泣いたけど)」

「(山城さんの代わりに……私は後で泣こう)」

「!? ……ぅうッ……うぐっ……大尉ィッ! ……わたし……!!」

「BETAに お前等の悲しみの何が分かるってんだよ」


≪ぎゅっ≫


「……本当にッ怖かった……死にたくなかった……うっ……う"ああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!」

「(想像を絶する怒りがブロントを襲った。今回も負けたがチクショウ覚えてろよ? BETAどもめ)」


≪……キイイイイィィィィン≫


さて。そんな奇跡の生還を果たしたブロント達が、志摩子達に熱烈な迎えを受けた事は言う迄も無いのだが。

ブロントに抱き付いて離れようとしない事で、上総が他の女性陣とモメたりして別の意味で疲れたりもするも。

度重なる絶望の中にも僅かな希望も有り……それが潰える事の無い限り、何時までも彼は戦い続けるであろう。


「良く御無事で」

「ナイトは状況を選ばない」


≪パチンッ≫


――――そして合流の際に中隊長と交わしたハイタッチが新聞に載り、彼の存在が世界に認可されるのあった。








■エピローグに続く■
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コメント 11

ぱうあ

更新おつかれさまです
by ぱうあ (2012-07-22 17:30) 

Shinji

対応が遅れてすみません。
理想郷が非常に重いので幾つかのSSを自サイトで読めるように編集しました。
by Shinji (2012-07-22 18:14) 

NO NAME

贅沢言うようだがブロ語スキルをもうちょっと上げてくれないと半端に上手く見えるためにかえって読みにくい不具合。というかテンションあがらにぃ。
例えばプロ手素なんかは『その攻撃がナイトに通じると思う浅はかさは愚かしい』とか汎用せいrふでもいいと思うんですhai!

それにしても発言のそこかいsこが軍人っぽさがオーラとなって見えそうになってるむせるブロントさんだべ。新しい……惹かれるな

すかし勝手兜の緒を締めろという名セリフを黄金の鉄の塊の記憶力で忘れないのが大人の醍醐味。まあどっちにすろBETAがグラットンスウィフトでバラバラに引き裂かれるのは確定的に明らかなんだが(リアル話

gdgd言ったが結構面白いと思う感。期待してるので続き【はい。お願いします。】

それにしてもナイトのリア♀攻略スキルは圧倒的に流石って感じ。凄いなー憧れちゃうなー(自画自賛
by NO NAME (2012-07-26 09:12) 

NO NAME

エピローグはよおなしゃす!
by NO NAME (2012-07-27 07:50) 

Shinji

なかなか理想郷が復活しない~。
もっとブロント語は多用したかったのですが、一応彼は10年間負け続けて精神が病んでいる状態だったので其処まではっちゃけさせる事はできませんでした。でも数年後のエピローグに成ると……後は分かりますね?でも短いと思うので過度な期待はしないで下さい。
by Shinji (2012-07-29 00:41) 

NO NAME

エピローグ上げるの忘れてる・・・?
by NO NAME (2012-08-09 05:40) 

Shinji

ちょいと時間が取れないためもう少々お待ちください。
by Shinji (2012-08-13 01:35) 

NO NAME

読ませていただきました~
個人的に山城は好きだったので生き残ってくれてうれしいですw
エピローグたのしみにしてます。
by NO NAME (2012-08-13 17:56) 

Shinji

どの場面を最後に持っていこうかは決まりましたがその組み合わせでの会話を色々と考えている最中です。アニメをなぞるならともかく、別の話を短いながら考えると少し労力が要りますね。
by Shinji (2012-08-17 03:15) 

NO NAME

エピローグ投稿オナシャス!!
by NO NAME (2012-09-01 01:12) 

Shinji

現在執筆中であります@w@
by Shinji (2012-09-01 02:03) 

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