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TAS娘さんがBETAと戦うようです【前編】 [マブラヴ]

何となくTASさんを擬人化させてマブラヴ世界で動かしてみようと思って書いたSSです。
ツッコミ所が多そうですが"私ならこうする"と言うダケなので、描写方法は千差万別かと。





唐突に目を覚ました僕はベットから体を起こすと自分の肉体を手触りで確認した。

今回の肉体は約160センチ前後の中肉中背の女性のモノで、胸は大きくも小さくも無い。

またガラスに映る髪は瞳の色と同様に黒く肩に掛かる程度の長さで、訓練兵の白い制服を着込んでいる。

持ち物を確認してみると、ポケットからは身分証名称が出て来た。

最近"例の分隊"とは程遠い位置付けに存在する訓練小隊に配属と成った何の取り得も無い新米だそうだ。

名前は"相沢 亜衣"。

誕生日は01月11日。

どうだい? この上なく覚え易いだろう?

面倒なので苗字も名前も"あ"で済ませようとしたんだけど、流石に改変されてしまった様だ。

ふ~む……与えられた記憶からすると、僕は どうやらBETA侵攻で両親を失った孤児みたいだな。

もはや生きていく事すら困難で、食い繋ぐ為にヤケクソになって衛士として志願した設定か。

……とは言え運動能力は平均以下な肉体みたいだが、衛士としての適正はボーダーラインな為 通った模様。

元々孤児な為に使い潰すには丁度 良い存在で有るだろうし、設定としては妥当な所だろう。

まァ"この世界"に僕が受肉した事で、情報が無理矢理 書き加えられたダケなので深く考える必要は無い。


「う~ん。初期アイテムは少し弄るべきだったかな?」


更にカラダを弄っていると、右の太腿に拳銃一丁・左の太腿に一本のナイフが挿し込まれていた。

正直 何の役にも立たないアイテムだろうが、今回は初期装備ボーナス無しで挑む事を決められたんだったな。

無論 体格もディフォルトなので、特徴が無いのが特徴みたいな女学生に成ってしまったが後悔はしていない。

ちなみに性別を女性にしたのは、"この世界"だと数が少ない男性を選ぶと余計なイベントが障害に成るからだ。


「与えられた"第一"の任務は月のBETAの完全なる駆逐か……くくくくっ。これは歯応えが有りそうだね」


――――とりあえず、先ずは暢気に眠りコケている未来の英雄を起こす事にしようか。




……




…………




……数分後。

ベッドの上でお互いに正座しながら向かい合うと言うシュールな初対面を果たす。

僕は状況が十二分に分かっているからニヤけているが、例の彼は困惑の表情だ。


「始めまして。僕の名前は"相沢 亜衣"。今年で16歳だ」

「お……俺は"白銀 武"」

「白銀君か。始めまして。此処でイキナリぶっちゃけてしまうと、僕は君と同じで別の世界から来たんだ」

「えっ!? だ、だったら――――」

「バルジャーノンやゲームガイの事も当然知っている。ループした回数は君よりも遥かに多い(嘘だがね)」

「でも俺は君の事は知らないけど?」

「生憎 僕も記憶が曖昧で その問いに明確は答えは出せないが、僕は君の協力者で有る事は間違い無いさ。
 けど何を隠そう……幾ら繰り返しても"何か"決定的なモノが足りなくて、結局 人類は滅びてしまってね。
 八方塞で困っていたんだよ。今や気が狂っていないのが不思議なくらいだ。理不尽な人生だよ本当に」

「…………」

「だけど今回は こうして白銀君と僕と言う存在が一緒に目覚める事が出来た。コレは大きなチャンスだろう」

「……って事は……」

「出会って間も無いのに勝手な事を言って済まない。どうか僕と一緒に地球を救っては貰えないだろうか?」

「!? お、おうッ! 回数が多いって事は散々 苦労して来たんだよな? じゃあ一緒に頑張ろうぜ!!」

「くくくくっ。頼もしい限りだ。こう見えて僕は事の采配には自信が有る。出来る限り君のサポートをするさ」

「それなら……相沢さん?」

「亜衣で良いよ。僕の方が先輩だけどね」

「わ、分かった。なら亜衣は……白稜柊の制服を着てるけど、それは元の世界のモノなのか?」

「いや。僕の制服は"横浜基地"のモノさ。ワケ有りの207B分隊とは全く違う隊に居るけどね」

「そうなのか」

「では互いに情報交換だ。先ずは僕の"この世界"での立場を言うから、白銀君の事も色々と教えて欲しい」

「御安い御用だぜ」




……




…………




「おい。こんな所で何をしてるんだ?」

「外出でもしていたのか?」

「はい。僕は国連軍 横浜基地・衛士訓練小隊 所属の相沢です。少し散歩をしていました」

「こりゃ物好きな娘も居たモンだ」

「通るには許可証と認識票を見せてくれ」

「どうぞ」

「アイ・アイザワ訓練兵。間違い無い様だな」

「通って良いぞ? では……其処のオマエもだ」

「えっ? お、俺は――――」

「生憎ですが伍長殿。彼に"その様なモノ"は有りません」

「???? どう言う事だ?」

「紛失したでは通らないぞ?」

「彼は香月副司令より与えられた特別任務の最中でして、僕が迎えに上がったのです。そうでしょう?」

「あ、あァ……出来れば取り次いで頂けると有り難いんスけど」

「むぅ」

「!? いや待てッ! 彼女は間違い無いが、コイツの制服は何か変だぞ?」

「い、言われて見ればッ」

「怪しいヤツめ……!!」


≪――――ガチャッ≫


「おや? 香月副司令に関する事は、どんな些細な事でも報告しろと言われている筈ですが?」

「……チッ……確かに そうだが、訓練兵が何故そんな事を知っているんだ!?」

「明らかに不自然だろう!!」

「ちょっ!? 亜衣!! やっぱりダメだったじゃね~かッ! ……げッ」

「それは迂闊だよ。白銀君」

「ふんッ。自分からボロを出しやがったな!?」

「一応 報告は してやるが、身柄の方を拘束させて貰おう!」

「おっと危ない」


≪――――ドタッ!!!!≫


「ぐわっ!?」

「な、何をするんだ!? 貴様!!」


僕は白銀君に詰め寄ろうとした片方の伍長の腕を掴むと、そのまま遠心力を活かして投げ飛ばした。

肉体は華奢な女子学生なんだけど、動きを完全に読んでしまっていれば、この程度は造作も無い事さ。

ともかく此処で拘束されて時間を食っても勿体無いので、僕はスタスタと歩みを進めて受話器を目指す。

尚 僕が投げ飛ばした伍長は真空投げが綺麗に入った様で失神しており、黒人の方が銃口を向けてくる。

それに対して僕は仕方なく足を止めると、そのままカラダの向きを変えずに口を開く。


「こんな か弱い女の子に銃口を向けるのかい? BETAと言う共通の敵が居ながら由々しき問題だ」

「御託は良いから早く手を上げて膝を着けッ! それ以上 進むと言うならば撃つぞ!?」

「お、おい亜衣ッ! 此処は素直に……!!」

「くくくくっ。どうぞ御自由に」


≪――――カキンッ≫


「!?!?」

「……銃の誤爆で失明したければね」

「んなっ!(後ろに眼でも有るのかよ!?)」


僕は素早く抜き取ったナイフを、振り返らずに投げつけると同時に再びスタスタと歩き出した。

結果は確認しなくても分かっている。

ナイフは100%黒人兵の銃口に突き刺さり、色々な意味で撃たせる事を適わなくさせている。

もはや人間業では無いと思うが、それが僕と言う存在……"TAS"の能力で有り絶対的なチカラだ。

肉体が力無き少女で有ろうと、振り掛かって来るモノ全てを利用して糧とする事が当たり前の様に出来る。

無論それはBETA相手でも例外では無く、小型・中型 数百に同時に襲い掛かられても生き残れる程だ。

反面 仲間の死やルートの崩壊など、ややコミュニケーションが不得意な僕達だが其処は"君達"の腕次第さ。

即ち僕は可能性は無限大でも製作者の采配に大きな影響を受ける……今回は相場が違うみたいだけどね。

全くアドベンチャーの世界に僕を強引に捻じ込むなんて、頭が どうかしているマスターも居たモノだよ。

でも与えられた任務を全うするのが僕の存在意義で有り使命。

僕は例え月を抑える事が出来ても更なる指示を受け、元の世界に戻る事は出来ないだろうが……

能力ダケで明確なルートの指示が無いって事はTASの新たな可能性を担うテストの意味合いも有るのだろう。

よって僕は行動の自由を与えられていると言う展開に心躍らせつつ、白銀君に向かって言うのだった。


『もしもし。何の用かしら?』

「白銀君。副司令に電話が繋がったよ。早く誤解を解いてしまおうか。それと僕のナイフを拾って来てくれ」

「おッ。おうよ(……何だか不安だ)」




……




…………




……数時間後。


「お疲れ様。白銀君。どうやら再び訓練兵をするみたいだね」

「あァ。前回は情けなくて足を引っ張っちまったけど……次こそは世界を……アイツらを守ってやるんだ」

「結構結構。それでは暫くは別行動だね」

「亜衣は別の分隊で訓練兵をするんだよな?」

「冗談。僕の様な体力の無い か弱い女の子がマラソンやらトライアスロンやら出来る訳が無いよ」

「だ、だったら どうすんだよ? 衛士に成るんじゃないのか?」

「くくくくっ。御生憎様。既に一足先に僕は衛士に成らせて貰ったよ」

「あ……あんですと~!?」

「白銀君と違って、僕は香月副司令での理論でも解明できない、完全にイレギュラーな存在だからね。
 読めないし吐かないし、危うく消され掛ける所だったから"使える"様に動いた事で結果が伴ったと言う訳さ。
 よって今の僕は若き大尉様だよ。白銀君に免じて敬語は要らないが場を弁えてくれると助かるかな?」

「い、いやいやいやちょっと待てよ!! 何でモノの2~3時間前に別れて既に大尉なんだよ!?」

「軽くヴォールク・データを非武装の撃震で流させて貰って、ぱぱっと最下層まで到達して魅せたダケさ」

「あのOSの撃震で……さ、最下層まで……だと? マジっすか?」

「肉体的に少し厳しかったけど、何とか成ったよ。でも流石に毎日走りこみ位はする必要が有るかな?」

「……ソレが本当ならよ……もう亜衣 一人で良いんじゃないのか?」

「それが そうも行かないのさ。恐らく"この世界"は君が居なければ間違いなく滅ぶ運命に有る」

「な、何で俺が?」

「簡単な事だろう? 別世界から来た存在は僕と白銀君しか居ない。だけど僕は幾ら頑張っても無理。
 そう考えれば白銀君に未来を切り開く可能性が有るとしか思えないだろう? 自惚れては困るけどね」

「けど俺……亜衣の存在で何だか自信なくなって来たよ」

「伊達に長く生きてはないからね。それとも僕との立場と変わってくれるか? そう捉えて良いのかな?」


≪――――ずいっ≫


「いや……その……わ、悪かった」

「くくくくっ。冗談だよ。ともかく僕には僕の新しく国連軍大尉として与えられた役割が有る。
 そして白銀君にも訓練・仲間とのコミュニケーション・新OSの提案と成すべき事が当然ある。
 よって先ずは目先の事を片付けて、着々と副司令を始め仲間との信頼関係を築いてゆくしかないさ」

「確かにそうだな。分かったよ」

「では頑張ればプレゼントを進呈しよう。世界の平和の為に務めてくれ給え」

「???? 何を貰えるんだ?」

「僕の処女だが」

「ぶふぅっ!?」

「うわっ。汚い」

「ゲホッ! げほっ! な……何なんだよ一体。笑えない冗談は止めろっつーの!!」

「くくくくっ。予想通りの反応を有難う。冗談では無いが、その様子では僕の眼に適うのは遠そうだ」

「適って堪るかってーの!」

「さて置き。早速着替えてくるから、君は先にPXで待っていてくれないかい?」

「はいはい。了解しました大尉殿~っと」


こうして僕のマブラヴ・オルタネイティヴの世界での最初の最後の使命が幕を開けるのだが。

先ずは白銀君を調子の乗らせない様にしつつ、僕自身も体力を付けなければ話にならないな。

能力値ゲージを最大まで上げれば そんな必要すら無かったんだけど、それも使命の一環と考えるべきか。

僕は下着姿で両足の太腿の武器の位置を調整しながら思考しつつ、長く使う国連軍の制服を身に纏った。


「う~ん。子作りを考えると成るとやはり白銀君か。彼女を差し置くのは気が引けるが何事も能率さ」

『た、タケルちゃ~んっ! 何だかヤバいッ! 別の意味でヤバいよ!! 早く私に気付いてぇ~っ!!』








●相沢 亜衣●

階級:大尉
年齢:16歳
身長:160cm
体重:45kg

力量:D
敏捷:C
知識:EX
体力:D
操縦:EX

道具:IDカード サバイバルナイフ ハンドガン(9mm)




●白銀 武●

階級:訓練兵
年齢:17歳
身長:17?cm
体重:7?kg

力量:A
敏捷:A
知識:B
体力:A
操縦:S

道具:IDカード ゲームガイ 携帯電話








「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」


≪たったったったっ……≫


僕がマブラヴの世界で受肉し、国連軍・横浜基地の大尉と成ってから数日の間。

今や夜になるとジョギングするのが日課と成っており、今日も僕は体力を付ける為にグラウンドを走る。

その駆け方は全くムダが無く筋力を最大限に活かせており、走るペースも最も適した速度と言えよう。

だけど僕の肉体は早くも悲鳴を上げており、やっぱり少女の肉体には1時間走るのすら厳しい模様。

初期装備だと言う事で愛着を感じ、今も装着している太腿のナイフとハンドガンも非常に重く感じる。

当然 冬ながら汗はダラダラと出て呼吸が苦しく成って来ており、そろそろ色々な意味で危なくなるだろう。

尚 危険という意味で最も重要なのは、万が一 何者かの奇襲を受けても良いように走る余力は欲しいと言う事。

何事にも抗える僕だけど、カラダが満足に動かない状況では出来る手段が少なくなってしまうからね。

よって僕は適当なタイミングでランニングを切り上げると、中腰に成り両手を両膝に沿えて荒い息をつく。


「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」


そして最低限の時間で呼吸を整えると、額の汗を拭って少し乱れた衣服を整える。

ちなみに僕の今の服装は軍服の上着を抜いたダケと言う単純な状態だ。

しっかし……いけないな~。

僅かながら体力の向上を実感して、つい調子に乗って走ってしまったようだ。

効率・能率・最速を目指していた僕と言う存在(TAS)にとって、今の自由度の高さは自重を怠らせる。

まァ周囲に敵意の気配は皆無だからなんだけど……1周分ほど抜いていた方が良かったのかもしれない。

そう今夜 寝入れる予定の時間までをも計算してたりしていると、僕の方へと近付いて来る者が居た。

確かマブラヴのヒロインの一人で有る"御剣 冥夜"だったかな?

彼女は何かを手に持っており、すぐ近くまでやってくると背を向けて空を見上げていた僕に声を掛けてくる。


≪――――ザッ≫


「大尉。宜しければコレを御使い下さい」

「んっ? 君のタオルかい? 僕が使っても良いのかな?」

「はい。今宵は素振りのみ行っていた私には必要有りませんでした故」

「くくくくっ。それなら有り難く使わせて貰うよ」

「はッ」

「う~ん。やっぱり寒くても汗は出るモンだねェ」

「ですが汗は直ぐに冷えるでしょう。よって風の当たらない場所に移るべきかと」

「正論だね。じゃあ行こうか」

「はい。では私は大尉の上着を取って来ましょう」

「すまないね」


僕と御剣君は建物の傍まで移動すると、階段に腰を下ろして少しの間 無言で休憩した。

本来 部屋に戻ってシャワーで汗を流すつもりだったんだけど、このまま別れるのも芸が無いからね。

でも彼女達との交流は全て白銀君に任せる予定だったが、彼女も毎晩 此処で走っている設定だったんだ。

それなら今のタイミングで声を掛けてきたのも必然であり、今の今までは遠慮していたんだろう。

何せ ある日 見慣れない国連軍の大尉が突然 自分が走ろうと思ってたグラウンドでランニングを始めたんだ。

僕は一言だけ"気にしないで良いよ"と声を掛けたけど、御剣君は謙虚にも短距離走や剣舞に予定を変えていた。

対して僕はランニングを終えると直ぐに帰った為に機会が無かったが、今回その場で少し留まる選択をした。

よって御剣君は思い切って接触した来たのだと思われ……それを僕が飲んだと言う事だ。

しかしながら。

御剣君はワケ有りそうな僕に対し、タオルを渡した後に何を言うかは考えていなかった様子。

僕は勿論 気付いているが、たまにチラッと此方を見てから顔を顰めると言う気配が僕の遊び心を突く。


「……ッ……」

「ところで。君の名前は何て言うんだい?」

「!? はッ! 私は国連太平洋方面 第11軍 横浜基地 衛士訓練学校・第207B分隊所属――――」

「こらこら。僕は"名前を教えて欲しい"と言ったんだよ?」

「し、失礼しました。私は"御剣 冥夜"と申します」

「御剣君か。素敵な名前だね。僕は"相沢 亜衣"。大尉と言うのは階級証を見て判断したのかい?」

「肯定です。間違いであれば面目有りません」

「いや正解さ」

「誠でしたか」

「それにしても恥ずかしい限りだよ。国連軍の大尉と言う者が こんな運動音痴で驚いたよね?」

「そ、それは」

「遠慮は要らないよ? 正直に言う事を許可しよう」

「……畏まりました……確かに私の目から見ても、体は華奢でスタミナも相応のモノだと感じました」

「違いないね」

「ですが妙にも思いました。走っている大尉の姿は彫刻と言うか……とても絵になり目を奪われたのです」

「僕は只 自分のペースで走っていたに過ぎないんだけど?」

「大尉としては本当に そうなのかもしれませんが、少なくとも私の印象は告げての通りであります」

「ふむ。ちょっと反応に困っちゃうな」

「お許し下さい。どうも言葉で表すのが困難でした故」

「頭を下げる必要は無いさ。むしろ参考には成ったよ」

「恐縮です」

「逆に御剣君も凄い剣の使い手だよね? 免許皆伝か何かを持ってるのかい?」

「はッ。無現鬼道流を嗜んでおります」

「成る程。傍から見せて貰ってたけど、訓練兵で有るのが勿体無い程だと思ったよ」

「そうでしょうか?」

「うん。非常に気高い心も感じるし、晴れて衛士と成れば必ずBETAに抗える筈さ」

「有難う御座います」

「くくくくっ。こんな僕でもBETAとは戦えるんだからね」

「で、では……やはり大尉は実戦の経験が御有りで?」

「当たり前じゃないか。戦術機に乗るには体力も大切だけど、もっと重要なのはレバテクさ」

「ればてく?」

「じゃあ楽しい時間の御礼に、僕のテクニックと言うのを魅せてアゲようかな?」

「かッ、感謝を」


――――困惑した表情の御剣君に対して、僕はスクっと立ち上がると適当な方向を指差した。


「標的はアレでも良いかな?」

「えっ? 何も見えませぬが」


≪――――ヒュッ!!!!≫


先ず僕は左手でナイフを取り出すと天高く放り投げた。

ソレを御剣君は目で追うんだけど、直ぐ僕は右手でハンドガンを取り出して銃口を闇に向ける。

そして銃口の角度を それなりに上げると発砲……サイレンサーが付いているので音は殆ど響いていない。

だけど御剣君には聴こえているので視線は此方に戻り、僕は銃口に息を吹きかけるとスカートを捲る。


「よいしょ」

「!?!?」


対して"見えた"か女同士とは言えギョッと瞳を見開く御剣君だったけど。

真っ逆さまに落ちて来たナイフが僕の太腿のホルダーにスッポリと納まった。

少し間違えれば御剣君の頭や僕の足にザックリいったかもしれないけど、有り得ないのは分かるよね?


「じゃあ御剣君?」

「は……はい?」

「ちょっと悪いけど的を見て来てよ。一番遠いヤツを狙ったからさ」

「!? ま、まさか……射撃訓練用の的を狙ったと言うのですか?」

「勘が良くて優秀だね。其の通りだよ」

「幾ら何でも遠過ぎるかと……それ以前に最も手前の的さえ視界に入っていません」

「おや? 君は上官に同じ事を言わせる気かい?」

「……クッ……失礼致しました。確認して参りましょう」


場合によっては上官相手でも折れない面も持つ御剣君は、納得がいかない様子で走ってゆく。

一方 座り直した僕は鼻歌(夕暮れ)を口ずさみながら、ハンドガンをクルクルと回しつつ待っていると。

行きとは3倍くらいのスピードで、御剣君が此方まで慌てて走って戻って来た。


「くくくくっ。おかえり。早かったね」

「ハァハァ……只今 戻りました」

「弾は当たっていたのかな? 分かり易い様に麻酔弾を撃ったんだけど?」

「は、はい。確かに麻酔弾の針の部分が的の中央に刺さっておりました」

「良かった。ではコレで僕の実力を分かって貰えたかな?」

「痛い程に。どうか……先程の無礼な態度を御許し下さい」

「許すも何も怪訝に思うのは当然だからね。特に気にしてないよ? 何よりも慣れているからさ」

「さ、左様ですか」

「でも遣ろうと思えば誰にでも出来る事さ。的は絶対に動かないし、最初から位置は分かっている。
 後は当たる様に位置を調節して引き金を引くダケ。君でも500回は追記すれば命中するだろう」

「ですが大尉は一度で命中させてしまいました。ナイフを投げられた事で満足に集中できない状況下の中で」

「しかしながら。何故か出来てしまうのが僕であり、その才能が国連軍の大尉にさせたと言う事だよ」

「……最もです……」

「だけど本来は君よりも遥かに か弱い女の子だ。そもそも僕は御剣君よりも年下だしね」

「な、ななななっ!?」

「何だよ そのリアクションは。僕は見た目の通り今年で16歳だよ?」

「そんな……ま、まさか2つも下だとは思いませんでした」

「くくくくっ。逆に君は更に2つか3つは上に見えるけどね。ともかく。余り畏まった態度はしないで良いよ」

「しかしッ」

「ついでに言うと僕は白銀君の友達なんだ。彼に対してと同じ様に仲良く接してくれると助かる」

「は、はあ」

「それにしても……君はイチイチ面白いね。気に入ってしまったよ」

「???? それはどう言う……」


≪むぎゅっ≫


――――僕はハテナマークを浮かべて首を傾げる御剣君の張りのある乳房を、衣服の上から片手で鷲掴んだ。


「ひゃんっ!?」

「そうそう。気丈で冷静な性格に相応な珍しい口調ながらも、恋には疎い乙女の一面も有る。本当に斬新だ」

「あっ! ちょ、大尉ッ……何の冗談、ままま待っ……ひっ!?」

「ところで僕は思う。何故 此処の女性達は皆 良い体をしているのだろう? 我慢できずに揉んでしまう程に」

「そ、そんなっ! 今度は両手で!? ……ぁッ……んんぅっ!」

「けど殆どの女性は恋が実る事無く散る。これは由々しき問題。よって僕は新たな決意を胸に刻むのだった」

「はぁッ、はぁっ……はッ……ぅうっ……」

「おっと。すまない。気をヤってしまった様だが大丈夫か? 御剣君」

「ハッ!? だ、だだだ大丈夫です!! しかし唐突に何を――――!」

「くくくくっ。君を試したに過ぎないよ。強化装備・羞恥心。この2つから導き出される答えは何だい?」

「そ、それは……」

「今ので動揺してしまうので有れば、まだまだ修行が足りないよ? 相手が僕の様な女性なら尚更だ」

「……ぐッ……返す言葉も有りませぬ」

「物分りが良い娘だね。それでは僕は失礼するよ? また明日も此処に来るから、仲良く訓練するとしよう」

「はッ。御疲れ様でした」


御剣君の敬礼を背に受けながら、僕はヒラヒラと手を振ると上着を肩にスタスタと建物に入ってゆく。

対して彼女は さっきと同じ場所にいるので、何か考え事をしているようだ。

恐らく僕が余計な事をベラベラ喋ったからだろうが……歩みを進めようとすると見覚えの有る4人と対面。

先程から凄まじい殺気を放って来ていた、赤の斯衛 月詠中尉と白の斯衛で少尉 神代・巴・戎の3名だ。

御剣君を無視していた時は何も違和感は無かったけど、やっぱり接してしまうと警戒されてしまったか。


「こんばんわ」

「……ッ……」


――――けど争う理由には成らないからか、月詠中尉達は苦虫を噛んだような表情で僕に道を開けた。


≪コッ、コッ、コッ、コッ≫


「あの……真那様。行かせて宜しいのですか?」

「め、冥夜様に あの様な不埒な事をするなんてッ」

「それ以前に唐突に大尉に昇格だなんて怪しいですわ」

「癪だが奴に最初に声を掛けられたのは冥夜様の方だ。それに先程の動きは お前達も見ていた だろう?」

『…………』

「まだ若いが只者では無いダケで戸籍は有る。それよりも"白銀 武"と言う死人の方の警戒が先だ。良いな?」

『はい!!』




……




…………




……更に数日後。

一人でシュミレータールームで仕事をしていると、A-01とか言う夕呼先生 直属の部隊の娘に捕まった。

尚 僕が行っていた作業の内容は、白銀君と情報交換をして早期に必要なXM3の微調整を行うと言う事。

僕は戦術機を動かすのは得意でも自分で考えて修正してゆくのは苦手で、白銀君の話を無しには出来なかった。

TASは何でも出来るようなイメージが有るかもしれないけど……他人の為に何かをするのは平凡な存在。

でも情報さえ有れば思い通りに弄れる反面、彼との短時間の情報交換での内容しか更新できないのが悔やしい。

そんな頼りになる白銀君は、少し僕に懐いてしまった様で何度かB分隊と一緒に食事に誘われたりもした。

無論 御剣君との交流でさえ妥協している継続イベントなので断ったけど、彼はOS更新の度に目を輝かせる。

自分が行いたくても行えなかった戦術機の機動を、僕に言ったダケで次の日には其の通りに修正してしまう。

ならば白銀君が喜ぶのも必然であり、より任官に向けて気合が入ると張り切っていた。

けど調子に乗っては欲しく無い為……いや彼が いずれ躓く度に全ての能率が下がる事から――――


"ところで白銀君。まさか実戦経験も無いのに、御剣君達に自分が全てを救うとか豪語してないよね?"


――――とか聞いてみたら、大慌てて否定したので恐らく原作と違って言ってはいないのだろう。

何故か僕の所為だとか言ってたけど、謙虚に務めてくれているようで何よりだね。

それで話を戻すけど……始めたばかりで作業が終わっていないのに"また"中断させられてしまったか。

全く国連軍の者ダケかは知らないが、こういう連中は同志に絡むよりも他に遣る事が有るんじゃないのかい?

もし追記できれば発生しない様に成るまで粘りたい所だけど、今回はA-01なダケ話くらいはするか。

当然 他の絡んできた連中は僕が上官と知ると直ぐに引っ込む者も居れば、"勝手に転んで"失神する者も居る。

後者の処理は勿体無いが他人に任せてはいるけど、BETAと戦っても役立たずだろうし死ねば良いと思うよ?

横浜基地 全ての人間は皆 存在自体が僅かでもBETAに抗う糧と成っている大切な存在。

それなのに上官の僕が少女と言う事で、御構い無しに喧嘩を売る……正直 首を折りたくなったね。

最初の僕なら殺していたかもしれなかったけど、白銀君や御剣君の反応を気にする限り甘くなったモノだ。

さて置き。

今回 強化装備 姿の僕に絡んだA-01の女性は皆が御存知の"速瀬 水月"中尉。

彼女は少々 特殊で悪意は感じず、純粋に僕とシミュレーターで模擬戦をしたいと言って来たのだけれど。


「お断りする」

「えぇ~っ?」

「悪いけど僕は副司令の指示で外せない仕事をしているんだ。またの機会にして欲しい」

「で、でもそれって……戦術機の訓練みたいなモノですよね? 私も付き合せて下さいよ」

「機密だから言えないけど、コレは只 戦術機を動かしてるダケじゃ無い。どうか察してくれないか?」

「其処を何とかッ! 御願いします!!」

「全く。一対一とは言え君は一度の模擬戦で電気代が どれだけ消費されるか分かっているのかい?
 それ以前にシミュレーターと言うのは、行った内容が衛士の糧と成らなければ何の意味が無いんだ。
 恐らく僕と君が戦っても……少なくとも君には得るものが全く無いだろう。逆に精神的な負担になる」

「ど……どう言う事ですか~?」

「相沢大尉。私には貴女が速瀬に圧勝できる様にも聞こえるのだが?」

「伊隅大尉。貴女まで僕の事を疑い、仕事の邪魔をしようと言うのかい? 余り僕をガッカリさせないでくれ」

「……水月に……圧勝……(本当なら確かに凄いけど……)」

「そ、それでしたら是非とも証明して見て欲しいんですけどね~?」

「(少々興味 深いから黙って見ているのも良いわね)」

「この期に及んでまだ煽るのか。そして見ぬ振りをする同僚。馬鹿は死ななければ分からないのかい?」


≪チャキッ≫


――――僕は棚に置いて有ったナイフをホルダーから引き抜くと、瞬時に速瀬中尉の顎に突きつける。


「うぅっ!?」

「み、水月ッ」

「相沢大尉!! す、すまない私の監督不足だ。此処は抑えてくれ(……動きが全く見えなかった)」

「くくくくっ。本当に刺したりはしないさ。だけど君達は誰も反応が出来なかった。その意味が分かるかな?」

「は……はい」

「無論 戦術機同士での戦いと成ると僕は手加減ができない。極力 無駄な時間を費やしたくは無いからね」

「……ッ……」

「しかしながら。君達とは いずれ一緒に戦う時が来る可能性が高い。其処で大サービスだ」

「さーびす?」

「君の勇気に免じて僕のヴォールク・データを見せよう。30秒後モニターに映すから勝手に見ると良い」

「ど、どうも」

「操作完了。では僕は仕事に戻るから邪魔したら殺す。尚データに対する質問も受け付けないので宜しく」

「り……了解」


≪――――バタンッ≫


「え~っと。大丈夫? 水月」

「こ、怖かった……いきなり雰囲気 変わり過ぎよアイツ!」

「だが我々も弛んでいたのは間違い無いな。階級は絶対だ」

「そうだよ? 本来アソコで殺されてても文句は言えなかった」

「うぐッ!」

「人の所為にする気は無いが、香月副司令の存在で少々 感覚が狂っていた様だな」

「じゃあ……早速 相沢大尉のヴォールク・データを見させて貰いましょうか?」

「うん。機体は撃震みたいねェ」

「さて。本当に言うダケは有ったか見定めさせて貰うとしよう」


――――1時間後 僕が一旦 筐体から出て来ると、案の定 伊隅大尉達は凄く何か言いたそうな顔をしていた。


「あの。夕呼先生」

「何よ? 変態女」

「イキナリ酷いな~。それはそうと今月11日は出撃させて貰っても構いませんか? 機体は撃震で良いです」

「別に構わないわよ。でも出来れば死んで来てくんない? 全て洗い浚い吐いてからで」

「くくくくっ。まだ子供は愚か彼氏すら居ないのに死ぬワケにはいきませんよ。それに僕 処女ですし」

「アンタには2年早いわよ……全く何で こうも面倒臭いのが唐突に現れちゃったの? 非科学的だわッ」




後編
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