SSブログ
海外の業者がコメントを荒らす為、ブログユーザー以外の書き込みを禁止しました。
管理人に用事がおありの方は、[Pixiv][Twitter]で直接連絡をお願い致します。
また、2021/10/27に旧HPのリンクが再び変更されました。[こちら]から飛んで下さい。

第28話【午前の謁見】 [鬼畜王じゃないランス]

現在アルカディアが繋がらないので"鬼畜王じゃないランス"の最新話を此方でもアップしました。
このまま復帰しない可能性も十分に考えられるので、今回より専用のページも作成してみます。




=LP03年07月2週目(月)=


流石に半月も経過するとリーザス城内の忙しなさも治まって来た気がする。

逆にカスタム軍・上杉軍・そして緑の軍が集結したのか城外は騒がしそうだが……

どちらにしろ俺が無駄に気に掛ける必要は無いので、残された事を消化してゆくのみ。

よって週明け(?)の今日は午前の時間をも使い、先ずは謁見から始める模様。

それらのスケジュールは相変わらずマリス頼みだったのは さて置き。

最初に現れた人物とは意外にもクルックー・モフスで、一人の女性を連れて来てくれた。

御存知の通り先日から言っていた"心当たりの有る"ヒーラーであり、何と俺も知ってる人物だったのだが……

"こちら"で始めて見る顔にしては違和感を得たと同時に、何故か熱の篭った視線をも感じた。

だとすれば一体 誰なのだろう……と直ぐには答えが出なかった為、諦めて名前を聞いてみると俺は驚愕する。

"ピカ"の一件で王座から転げ落ちそうになったランスと迄はイかんが、それに近い衝撃が走ったと思う。

しかし努めて平然を装いつつ、左右にリアとマリス・ナナメ前のクルックーを他所に正面で跪く女性を見下ろして言う。


「ヒカリ・ミ・ブランだと……?」

「はいッ。御会い出来て光栄です!! 王様ッ!」

「ちょッ。クルックー?」

「……彼女が申していた"冒険の御力に成れそうな者"で間違い有りません」

「へぇ~。まさかヒカリが来るなんて思わなかったよ~ッ、元気にしてたァ?」

「それはもうッ。リア様も結婚おめでとう御座います!!」

「(仲の良い設定だったっけか? 流石に記憶が曖昧だな)……どう言う事だ? マリス」

「"あの一件"の後にヒカリ殿は花嫁修業の一環として、カイズのAL教会にて働いておられたと言う噂は耳にしていました」

「ふむ。知ってたら知ってたで意外だったが……そんな流れが……」

「彼女はリーザス城下有数の貴族で有るブラン家の次女。かつ"パリス学園"で特別生徒に任命された方でも有りますので」

「成る程な(パラパラ・リーザス……略してパリスってか?)」

「マリスさんの仰った通り……彼女の事は私の耳にも入って来ていたので、普段からの真面目な姿勢とシスターとしての才能を私が買い、ランス王の旅の同行者として選出させて頂きました」

「法王で有るクルックーが言うなら間違い無いんだろうが、予想外の者が現れて"少し"驚いたぞ? ……それ以前に……」

「ダーリン?」

「既に俺達の目的は聞いているだろう? 正直 命の保障は出来ないし、少しでも躊躇いが有るなら遠慮して貰っても構わんぞ?」

「!? その心配は要りませんッ! 私は王様……ランス様と再会する事を夢見て花嫁修業に臨んでおりましたから!!」

「な、何だって?」

「やはりヒカリ殿もランス王に心を奪われた御一人と言う事ですか?」

「おまッ(マリスさん直球 過ぎィ!)」

「め、面と向かって聞かれてしまうと恥ずかしいですけどね……」


さも当然の事かの様に言うマリスに対し、両手で口元の辺りを覆うといった典型的な"恥ずかしい仕草"をするヒカリ。

見た感じを"そのまま"述べると、ふわっとした赤い髪をショートにした青い瞳の美少女(18歳くらい?)……なのだが……

何を隠そう"ランス1"でリア(正確には かなみ)に攫われ、依頼を受けたランスに助けられた"ヒカリ"と同一人物だったとはッ。

しかもランス(俺)の性格の変化も関係ナシに、何を間違ってか惚れてる様だし……俺は戸惑うしか無くリアも面白くなさそう。


「生憎ぅ。ダーリンの正妻はリアだけどね~!」

「とんでも有りませんッ! 私は王様の御傍に居させて頂けるダケでも――――」

「ぶぅ。ダーリンがモテちゃうのは当たり前だけど、ど~してヒカリまで そ~なっちゃうのかなァ?」

「……(救助されて心を奪われたヒカリ殿より、仕置きとは言え強姦で虜と成られたリア様の方が特殊なケースだと思いますけど)」

「ゴホン。だとすると……クルックー? まさかヒカリを選んだのも"俺様"に対して……」

「はい……有能なシスターと言うのが一番の理由なのは間違い無いですが、彼女の強い希望も有った事からの結果です」

「もしかして候補だったら結構 居たりしたのか?」

「有能な者"だけ"で考えれば50人程は」

「ほぉ~……(結構多かったんだな)」

「ですから この様な運命的な再会の機会を設けて下さった法王様には幾ら感謝しても足りない位ですッ!」

「ふむ。ランス王を知り・慕い・才能が有る。更には家柄も学歴もリーザスの範疇から見れば文句無しと成らば……」

「最早 拒む理由など無いってか? まァ危険も承知の上みたいだし、決定は極めて前向きに考えよう」

「あ、有難う御座いますッ!」

「マリス」

「はい。それではヒカリ殿を部屋に御案内して下さい」

「はッ!」

「くれぐれも粗相の無い様にするのですよ?(念の為に釘を刺して置きましょうか)」

「し、承知しております!」

「それではランス様! リア様! 失礼致します!!」

「うむ」

「また後でね~!?」


立ち上がると丁寧な御辞儀をして去ってゆくヒカリに、その背をブンブンと手を振って見送るリア。

どうも驚いているウチにトントン拍子で話が進んでしまったが、優良物件を紹介してくれたと言うのは疑い様も無い。

尚 即採用とは行かなかったのは、念の為に詳しい経歴を知ってからでも遅くは無いと思った為なのは さて置き。

アームズやクルックーには悪いが、やはり"全く知らない者"より知っていて かつ好感を抱いてくれていると本当に遣り易い。

だがヒカリについては"知ってたダケ"に過ぎないとも言えるので、突発的に浮かんだ疑問を周囲の者に投げ掛けてみよう。


「クルックー」

「はい?」

「ヒカリがリアに"しでかされた"事は如何ほど知っている?」

「……リア王女に誘拐され……ランス王に救出された程度は」

「ふむ。それなら説明の手間は省けるが、何でリアと仲良く成ってんだよ? あの娘は」

「たまたまヒカリ殿へは"そう言う方向"で責めたそうでしたので」

「そ、そうか」

「????」

「理解する必要は無いぞ? クルックー。しかし彼女の花嫁修行を中断させて、差し支えは無かったのか?」

「いえ……だからこそです。神官クラスの者を選ぶより、修行者の方が都合が良かったのも有りましたから」

「それもそ~か」

「また3年間の修行を終えたら、結婚の為にブラン家に戻られたでしょうし……えっと……」

「うん?」

「はぇ?」


――――何となく言いたい事は察せるが、柄ではないのか無表情ながら口ごもるクルックーをマリスがフォローする。


「彼女は花嫁修行に当たりランス王との"婚約"を望んでおられた様ですが、冒険者だった頃のランス王を考えると身分も違いますし実現は難しかったでしょう。ヒカリ殿の場合は前者を信じて臨まれていたでしょうが、そんな中で入ったリア様の御結婚とランス王の即位。当然 驚かれたモノの慕われていた御二方の吉報を祝福するしか無い反面……私では計りかねぬ悲しみと失念が有ったでしょうが……」

「あッ! 其処で法王様が直々に誘ってくれたから!?」

「……(思ってた事をリアが言ってくれたな)」

「はい。偶然が旨く重なり幸運にもランス王の側近として勧誘された。その"魔軍に抗う為の迷宮攻略"と言う大儀有る護衛と成らばランス王の傍に居るには十二分な理由ですし、リーザスの王と少しでも御近付きしたい貴族が極めて多い現状からして、ブラン家としてもヒカリ殿は文句無しの出世頭と言えるでしょう。それ故にランス王が花嫁修業の中断を懸念される心配は無いと言う事ですね。不躾な考えでしたが、仰られたかった事は"そんな所"でしょうか? クルックー殿」

「概ね間違い無いと思います」

「むしろ詳し過ぎるだろ……」

「ヒカリ殿との面識は僅かながら有りましたので」

「……("それだけ"で其処まで洞察出来るのは知恵の指輪とか関係無いんだろうなァ)」

「ともかくゥ。ま~たダーリンと一緒に居る娘が増えちゃうけど、ヒカリなら別に良いかな~」

「マリス。念の為にヒカリの履歴を洗って置いてくれないか? 結果は近日中に知らせてくれ」

「畏まりました」

「ランス王……」

「あくまで"確認"の為に過ぎないから気にしないでくれ。良い人材を紹介してくれた様で感謝するぞ? クルックー」

「……いえ」


――――正直 クルックー(正確には天使)のヒカリに対しての"テコ入れ"が気に成ったからでは有るが、不自然な事では無いだろう。


「そんなワケで次に移るか。上杉謙信と直江愛"ら"を呼んで来てくれ」

「親衛隊各員。宜しく御願いします」

『ははっ!』


≪たたたたたッ≫


「…………」

「(まだ居るのォ~? この娘は)」

「(やはりリア王女からの視線を強く感じます)」

「クルックーは別に居てくれても良いからな? リアと違って落ち着いてるしバランスが取れる」

「!? そ、それってリアが喧しいって事ォ!?」

「言ってる傍からコレだよ」

「(ハァ。JAPANの方達のリア様に対してのイメージが崩れるのも時間の問題かもしれませんね)」

「(反面……ランス王が何を考えてるかが本当に分かりません。警戒されている事は間違い無さそうですが)」




……




…………




……リアのヘイトを意図的に上げ、絡んで来るのを相手にする事で時間を潰す。

そんな最近 覚えた高度な"暇潰し"を5分ほど行っていると、やがて謁見の間に足音が響いて来たので気を改める。

尚 リアは既に機嫌を直して俺の膝の上に座っていたが、右手で右肩に手を添えたダケで意図を察して立ち上がってくれた。

よって美人と言える上にヒカリに近い"想い"を持っている"姫君"への、有る程度の保険にも成ったと思いたい。


≪コッコッコッコッ……≫


やがて足音と共に(謁見の間は"それなり"の広さなので)小さな人影が、案内役の親衛隊を別に2つのみ見えた。

うち一人は当然"上杉 謙信"であり……例の長い兜が無く白いリボンを付けた、同じく白の鎧を装着した立ち絵と全く同じ姿。

そして予想してくれた通り もう片方は"直江 愛"で、謙信のやや斜め後ろを歩き……互いに緊張した面持ちである。

此処で俺としては大道寺と南条も来るかと思っていたので、別に問題は無いが何となくマリスに聞いてみる事にした。


「ん? 呼んだのは2人だけか? マリス」

「恐れながら事情が御座いますので」

「ふ~む。それなら仕方無いな」

「はい」

「……(なァ~んだッ、綺麗って聞いてたけど思ったよりは……)」


地味に王に対して正直な返答をするマリスだが、一連の付き合いで互いに妥協・許容しているのは さて置き。

"JAPANの者達と合うから連れて来て"と言う遠回しな指示で、俺と会う事が許されるのは謙信と直江のみだった模様。

確かにリックやキンケードを呼んでも本人しか来なかったし……名指しなら当然一人のみで、複数なら限りなく人数を抑える。

新参であるJAPAN組から考えれば"者達"でも2人にしなければ、忠誠心が飛び抜けてる将軍達は納得せど他は不満に思うのだ。

俺が直接 会いに行く事に関しては文句を言わせる気は無いが、この場での謁見とも成ると従来の規律を守る方が定石だな。

マリスの言葉で瞬時に そう勝手に納得した俺は、早速 謙信を観察しているリアに続いて完全に注意を彼女に向けるのだが……

2人が近付いて来るにつれ謙信の表情に対しての"違和感"が強くなってゆき、答えを探しているウチに互いに跪いたので思考を切る。


「ランス王。上杉謙信……参りました」

「同じく直江 愛……参上致しました」

『この度は拝謁の栄誉を賜り、恐悦至極に存じます』


意外にも声を合わせて来た謙信と直江……発言から王様では無く、殿様にでも成った気分だった

またソレと同時に完全なる静寂が訪れ、どうやら全員が俺が発言するのを待ってるってのを察せる事が出来る。

だとすれば さっきの"違和感"の事は後回しと割り切って、此処は2人の持ち掛けた"流れ"に乗るとしよう。


「そう硬くなるな。面を上げて良いぞ」

「ははッ」

「感謝を」

「直江。JAPANの者達にとってリーザスは慣れない場所だろうが、旨くやってゆけているのか?」

「!? とんでも御座いませんッ。むしろ此方の方達には良くして頂いており、逆の意味で戸惑った事が多々有った程です」

「ほォ。となると?」

「はッ。我々の呼び掛けにJAPANより逃れた者達が予定以上に応えてくれ、1000名規模の部隊を編成 出来るかと」

「そりゃ膨れ上がったな。急に拵(こしら)えた様だが大丈夫か?」

「正直に申しますと個々の錬度はリーザスの兵達と比べれば及第点。連携には時期 故に不安は残りますが必ず結果は出しましょう」

「把握した。まだ時間は残ってるし出来る限り調整しといてくれ。予算も足りなかったら遠慮なく担当の者に言えよ?」

「死力を尽くす次第です。資金に置いては既に十二分に頂いておりますので、コレ以上の融資は利子が嵩張ると返済が……」

「うん? 貸しでは無くて只の"投資"だぞ?」

「投資?」

「マリス」

「えぇ。"その辺り(金銭面)"の詳細は他の者が口頭で述べるのは当然として(言い得て妙だけど)書類でも信憑性が薄いでしょうから あえて省かせておりましたので、元より此方の場を借り私の口から説明させて頂くつもりでした」

「は、はあ」

「また他にも侵攻に繋げるに当たって数点 確認して置きたい事も有りますので少々 御時間を宜しいでしょうか? ランス王」

「構わないぞ」

「有難う御座います。それでは最初に――――」


先日も述べたが上杉軍へのリーザスからによる待遇は非常に厚く、冷遇されていたJAPANの女性陣とも成ると尚更だ。

ちなみに直江が招集を掛けた際には性別を問わずだったらしいが、JAPANの男性は皆 生き恥を晒すまいが如く討ち死にしている。

よって"戦国"の通りの女性軍が完成してしまい、マリスが言った様に口頭でも書類でも何か罠が有りそうと納得しないのも仕方無い。

俺としてはバウンドやソウルと言う盗賊ですら軍属として扱った上に、似たような者達を大量に雇うケースもゲーム内で知っている。

また彼女達が武将としても(原作を知っていれば)優秀なのは間違い無い……のだが、それらの事を豪語したら只の精神異常者だろう。

しかし迷宮での戦いでの実績を元に"王様"の俺が認めてしまえば、原作通り本人達への風当たりが殆ど無くなるのは間違い無いのだ。

此処で話が変わるが……今 述べた通り"リーザスの王が認めた"と言う後ろ盾は非常に強く、口頭であれ極めて高い説得力を持つ。

マリスが"口頭であれ書類であれ信憑性が薄い"と言ってたのは その為で、俺ダケでなくマリスの名を出しても同等クラスの力が有る。

だとすれば"その名"を借りれば遣りたい放題できそうだが、バレたら確実に処刑と言うリスクにより今の所 粛清者は出ていない。

まァ言ってもリーザス関係者にしか効果が無いのは さて置き、そんな事を考えてるウチにマリスは直江と淡々と言葉を交わしてゆく。

先ずは殆どの経費に置いて1ゴールドも必要ない事から始まり、言葉の通りエクス達と合流するに至る迄 での要点を再確認する。

俺の素人耳にしても単純な内容だったが、それを"マリスの口から肯定する"と言う事実が侵攻を円滑に進める為の重要事項だった。

更に証人が俺・リア・更にクルックーとも成らば、エクス・ハウレーンなら口頭であれ協力しない方が異常と考えても良いだろう。

まァナンダカンダで俺も行くんだから多少 面倒事の懸念が少なくなる程度だろうが、ゲームとは違うので僅かな混乱が敗北を招く。

何気に"こう言う様子"の他にも色々と影で指示してたりするが……それはともかく、思考を終えると必然的に2人に注意が向くのだが。

一見マリスが何時もの様に"普通"に話し、対する直江が受け応えている様にしか見えないが良く見ると彼女は額に汗を垂らしている。

コレは誰もが感じるスーパー侍女に対するプレッシャー(一部の者を除く)であり、戦国より更に優秀そうな直江でも例外では無い模様。

互いの立場も有るので当然と言えば当然だが、少なくとも直江はマリスが自分より色々な意味で"格上"だと言う事は理解したと思う。

それにしても国を影で操っていると言う立場で言えばステッセルと同じだが、何処で差が付いた……って早くも区切りがついた様だ。


「確認したかった件は そんな所でしたでしょうか? ランス王」

「おッ? そうだな」(適当)

「話の内容についての問題は御座いませんでしたか?」

「特に何も無いな」

「恐縮です。それでは上杉軍の健闘を期待させて頂きます」

「ははッ!」

「……畏まりました」

「掛かった予算は後日 詳細を纏めて頂ければ此方で清算致しますので、お早めに宜しく御願いします」

「な、何から何まで感謝の言葉も有りません」

「……(しっかり見据え礼を言わねば成らぬのに……どうして私は……)」

「何なに? やっと終わったの~?」

「あァ。一番 済ませたかった事はな。そんなワケで"おやつ"でも食べに行ってこい。俺……様が街で直々に買ったヤツが有るゾ」

「ホント!? 嬉しいッ! それじゃ~ダーリンまた後でねーっ!!」

「うむ(案の定イメージが崩れたか謙信と直江はポカンとしているな)」


≪すたたたたたたた……≫


「(悪いが人払いを頼む。マリス)」

「(はい)では親衛隊数名はリア様を警護し、残った者はクルックー殿の御案内を」

『――――ははっ!』

「ランス王?」

「ヒカリの紹介に置いては感謝する。テンプルナイトの都合も期待しているぞ?」

「……分かりました(此処で留まるのも無粋ですね)」

「えっ? えっ?」

「ら、ランス王?」


軍事関連の話を終えると唐突に"人払い"を企(くわだ)てた俺だったが、その理由として最初に謙信から得た"違和感"が挙がる。

此方に近付いている上に観察する時間も有ったので既に分かってしまっているけど、実は謙信の目のクマが凄まじかったのだ。

恐らく"戦国"の様にランスに一目惚れした事から食事が喉を通らず、彼を想うと涙が出たりして夜も眠れていなかったんだろう。

原作では立ち絵に変化が無かったので特に印象は無かったけど、リアル(現実)に再現されれば此処までインパクトが強かったのか。

一緒に迷宮攻略していた時は"そんな症状"は確認できなかったが……傍を離れた事で事情が変わってしまい、今に至るって事か?

ともかく美人が台無しであり……ずっと謙信を観察していたリアが御機嫌で立ち去ったのは、彼女に対して優越感を得た為の筈。

更には食べ物で釣ったので簡単に誘導されてくれ、頭は良いが根が単純なのはリアの欠点でも有り好ましい意味での利点でもある。

一方 俺の配慮の意味が分からないのか謙信は跪いたままキョロキョロと焦り、直江は少し意図を察したか俺を見据えて首を傾げた。

またクルックーは既に俺達→親衛隊へとペコリと頭を下げると出口の方へと案内されており、足音が完全に消えると俺は口を開いた。


「一点 気になった事が有ってな。確認して置きたかったんだ」

「か、確認……?」

「先程の話は"問題無い"との事でしたが……」

「いや別の話だ。謙信殿のカオは何が有った? 明らかに全然 寝れて無かったって感じだろ」

「!?!?」

「やはりそうでしたか」

「リアとマリスは面識が無かったが俺は共に迷宮に潜ったからな。指摘しないって時点で無理な相談だ」

「あッ、うぅ……」

「……(謙信……)」

「実は最初から気に成っていたんだが、もしかして俺様に惚れてたりするのか?」

「……ッ!?!?」


――――此処で"びくぅっ!"と体を強張らせる謙信だが、対称的に直江は"あッやっぱり分かってたか"と言った納得の表情をした。


「あらまァ……」

「まさかの図星?」

「いッ、いえ!! ああぁあのッ!」

「はァ……(まさかランス王から気を遣って頂けるなんて)」

「わたッ! わたわた私は……!!」

「ほら。折角 機会を与えて下さったんだから、白状してしまいなさいよ」

「あァ。そうしてくれると話が早いと思う」


人払いをしたのは"この瞬間"にリアや親衛隊達が居たら面倒な事に成るのが予想できた為なのは、今更 説明する迄も無いとして。

俺・マリス・謙信・そして自分しか"この場"に居ない事から、直江は関係を繕うのを止めたのか謙信の脇腹を肘で突いて告白を煽る。

対して初っ端は動揺が微塵にも隠せていなかった斬新な様子の謙信だったが、俺ら3人が黙って見守っていると観念して口を開く。


「わ、私はランス王を……お慕いしています」

『…………』

「その……カスタムで初めて見た時から……心を奪われておりました」

『…………』

「共に行動させて頂いた時は、戦いに専念する事で気が紛れましたが……傍を離れ貴方を想うと胸は高鳴り涙が出る」

『(可愛い)』×3

「(ハッ? 私にはリア様が居ると言うのに……!)」

「(!? で、でも私からは何も言えない。けど謙信の気持ちをランス王なら……)」

「(う~む。べそをかきながらってのは予想以上の破壊力だが……)」

「ですが今は……上杉家の無念を晴らさなければ成らぬ大事な時期だと言うのに……この様な醜態を晒してしまい……」

「謙信」

「え?」

「今 聞いた話によると、俺と共に行動してると普通に戦えるんだな?」

「は、はい」

「ならばJAPANで軍を率いない時は俺と一緒に迷宮に来い。そうすれば気は紛れるだろう?」

「!?!?」

「直江は どう思う? 姫様が再び危険な場所に赴いてしまうワケだが」

「いえ……願っても無い次第です。細かい話は抜きに"謙信"がランス王の傍に居れば調子が戻りそうですし……」

「あ、愛ッ!」

「ちょっと黙ってて。ゴホン。そして何より先日。謙信を"おまかせ"しても旨く扱って頂きましたので、更に鍛えて下さればと」

「はははッ。それなら問題無さそうだぞ? 謙信殿。俺としても何処までレベルが伸びるかも興味が有るし、再び護衛を頼めるか?」

「……ッ……」

「何 律儀に(沈黙を)守ってるの? 御答えしなさいよ」

「!? こ、断る理由は御座いません。私で宜しければ」

「感謝する。だが生憎"その気持ち"に今 直ぐ応える事は出来ないが、言ってみたら少しはスッキリしたんじゃないか?」

「はい……御蔭様で喉に詰まっていたモノが取れた感じです」

「ならば先ずはJAPANの方から何とかするぞ? 全てが片付いたら俺の返事を聞いてくれると有り難い」

「か、畏まりましたッ!」

「不束な娘ですがよしなに」

「ああぁ愛ッ! いい加減にしてくれッ」

「……確かに冗談が過ぎました。面目有りません」

「気にするな。ともかく。改めて上杉軍には期待させて貰うぞ? 故郷の奪還の為に死力を尽くしてくれ」

『ははッ!!』×2

「(ハァ。こんな話をリア様が知ったらヘソを曲げそうだけど、ランス王なら気を利かされているし大丈夫そうね)」


……こうして最高の状況で謙信の告白を受けれた事により、JAPAN侵攻の際は彼女も迷宮に同行させれる様に成った。

正直 目のクマに気付かなければ指摘しようとは思わなかったので、ゲームと違い現実での"リアルさ"に助けられたと言える。

だが彼女は本来のスペック及び限界レベルが高いとは言え、一概に強いダケの同行者ならばサイゼルの方が飛び抜けて優れている。

その反面"高すぎる"初期の好感度(?)により、"仲間にした時点"で最期まで付いて来て貰う事を期待できる数少ない女性なのだ。

かと言って"戦国"のランス同様 余りにも旨くゆき過ぎていると捉えるのも必然であり、此処は我慢して迷宮攻略で絆を深めよう。

目のクマなど何のその……慌てる様子は極めて愛らしかったのだが、午後にも此処で重要な人物と謁見する予定も有るんだしな。

そんな事を考えながら深く頭を下げてから立ち去る謙信&直江の背を消えるまで眺めていると、メモを終えたマリスが口を開く。


「お疲れ様でした。ランス王。コレで午前の謁見は終了です」

「ふ~む。あっと言う間だったなァ」

「ランス王の貴重な御時間を可能な限り取らせぬ様にとは常々思っておりますので」

「そ、そうか」

「何か確認されたい事は有りますでしょうか?」

「……"南条 蘭"の件については どうなってる?」

「式神と言う術? ……を使うのに必要な御札の量産ですか? それでしたら目標の"100回分"が揃うのは今週中でしょう」

「!? 間に合うのか。出来ればって数を言ったが大したモンだな」

「多大な支援に遣る気に成られた南条殿の指導 有ってこそです。性能はランス王が確認されておりますし、疑う余地も無いですから」

「まァ戦略兵器として活用して貰うさ。場合よっちゃ焼き払わずに逃げ出すのを煽る飛ばし方も出来るみたいだぞ?」

「それは便利そうですね」

「JAPANの事を詳しく調べるに、似たような力を使う奴は一人や二人じゃ無さそうだがな」

「そうですね。報告を受けたモノの予想以上の戦力に驚いた次第です」

「反勢力軍を遊び感覚で蹴散らしてたってのも間違いじゃ無いってか」

「…………」

「だ、だがバレス達やサテラ達が相手にしてるカミーラ勢が本気に成った方が数段キツいだろうし、そうも考えてられんさ」

「くれぐれも御気をつけ下さい」

「ヤバそうな相手ならサイゼルをブツけるから心配するな。んで"大道寺 小松"については?(将軍格だから気に成ったダケだが)」

「はい。彼女も女性ながらリーザスの上位騎士と比較しても高い水準の実力を御持ちですね。一言で申せば"真面目"なのですが……」

「うん? 何か有るのか?」

「……昼時に一人でリーザス吹奏楽団の練習ホールに入られる姿が何度か目撃されています」

「すいそうがくだん? あァ。戦争だと"そんなの"も一緒に付いて来るんだったな。しかし何故 昼時を選ぶ?」

「リーザス軍属の者で有れば自由に入室が許可されている場所ですが、他国の方ですので人の少ない時間に来られたのでしょう」

「納得した」

「生憎 その意図は分かりかねますが」

「そうさな。迷宮に潜ってる合間にファッション誌を読んでたのを見たから、その辺に興味でも有るんじゃないか?」

「成る程……」

「んっ? だったら"今時"だと居る可能性も高いし、其処を責めてみるのも悪く無いか」

「今後も"側近"を増やされる事は必然ですしね。ですがランス王……どうか……」

「分かってるさ。決してリアを蔑ろにはしない。それ以前に一度 誘ったのを断られた位だし心配は無用だぞ?」

「!?!?」

「直後にサイゼルを抱いた事がバレて殴られたけどな」

「……旨く遣られているのか否なのか。理解に苦しむ所ですね」

「自分でも良く分からん。正直リアの事は良く知らなかったからな。だから今 時間が有ったら性癖 以外で喜びそうな事を教えてくれ」

「よ、喜んでッ」

「(其処で露骨に嬉しそうな表情に成るのは良いが、本当に時間は大丈夫なのか?)」


マリスの"リア語り"は10分程 続いたが長く成りそうだったので、彼女の為にも途中で切り上げると時間を気にして慌てて走り去る。

その後ろ姿を見て余計な事を聞いてしまったのを申し訳なく思ったが、きっと知恵の指輪が何とかしてくれるだろう。(投げやり)

ともかく午後には"緑の軍"の新たな将軍・カスタムの2人との謁見が控えているので、前述の場所にでも行って時間を潰してみるか。

"吹奏楽団"の練習場など重要な場所とは到底思わなかったのでスルーしてたが、ゲームでのリーザスのテーマは聴いてみたいかもな。

だけど人が居ない時間っぽいので……それ以前に目的は他に有り、居なかったら居ないでピアノでも弄ってみようと考え訪れますと。




「うん?(其処に居るのは……)」




「おぉ~ッ! 奇遇ですなァ!!」




「えッ……お、おおぉ王様!?」




――――リーザス王・青の将の大男・そして上杉家の武将の少女と言う、一見 何の統一性も無い3人が偶然にも居合わせたのだった。








■あとがき■
作中での時間の経過は短いですがヒカリ・謙信のメインパーティー入りが確定し、次回は小松とのコミュみたいなのに繋がります。
コレでサイゼルが加われば鬼畜王基準のJAPAN戦は楽勝ですが、リセット無しの戦死者ゼロと考えると普通にキツいかもですね。
また戦争でも兵の補充が容易に可能な筈は無いので、JAPANで削られた兵力をそのままヘルマンと戦っても負ける程シビアかと。


Q:"鬼畜王じゃないランス"でのマジックの容姿は?

本作のマジックはガンジーとリズナの娘なので鬼畜王基準です。


Q:主人公に運命の女って居るの?

電卓キューブ関連のイベントは出ませんが、主人公に抱かれた時点で運命の女って言っても良い気がします。




目次
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 0

コメント 6

sig

更新あざっした!
アナウンスもなく短時間で直ったのを見ても恐らく舞氏の契約してるプロバイダがメンテナンスだったとかっぽいですね。
とはいえアルカディアが見れない時にも読める様にしてくださるのはとてもありがたいです。
これからも更新楽しみにしています。
by sig (2015-05-20 21:40) 

Shinji

コメント有難う御座います。
今迄アルカディアさんにはお世話になっているので、既存の連載は完成直後はあちらに投稿し、何らかの原因で見れなくなったら旧サイトか此方ですぐ読める様にしようと思います。
リアルの関係で更新が遅れ気味ですが、自サイトと理想郷はこまめに確認しているので御安心ください。
by Shinji (2015-05-25 11:38) 

まじっく

もっとマメに更新してもいいんだぜ( `ω´)



いやして下さい お願いします(  ・ิω・ิ)
by まじっく (2015-06-08 23:47) 

Shinji

ご無沙汰しております。ニコ動で宣伝ありがとね!
最近はガンオンとPSO2をちょくちょくやってて、SSはチョビチョビって感じだから時間が掛かって面目ない!
仕事なんかなきゃもっとガンガン書けんだけど、そればかりはどうしようもないね。
by Shinji (2015-06-19 21:13) 

ぺる

ランス03やりました?結構面白かったですよ
なんかプレイしてて本SSが何度も頭をよぎったのでコメしちゃいました
更新楽しみにまっています
by ぺる (2015-09-01 11:44) 

Shinji

ぺるさん>
コメント有難うございます。基本リメイクには手を出していませんね。
ランス9が正直ゲームとしては面白くなかったのもあります。
SSは更新が滞って申し訳ないです。なかなか時間が取れなくて。
by Shinji (2015-09-24 23:08) 

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。