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第1話:B.O.S.『センチネル』 [マブラヴ]

【クエスト開始条件】


・主人公が男性である。

・メインクエストをミニッツメンルートorB.O.S.ルートでクリアする。

・主人公がエルダー・マクソンから『センチネル』の階級を得ている。
(ミニッツメンルートでクリアした場合は取得クエストが新たに追加される)

・居住地を一定以上解放、かつ『サンクチュアリ』と『ボストン空港』の供給ラインが繋がっている。

・どれでも良いのでB.O.S.の無限クエストを合計10回以上クリアする。

・ミニッツメンの『キャッスル』が解放されている。

・『Blind Betrayal』を通過しておりパラディン・ダンスが生存している。

・B.O.S.と敵対状態になっていない。

・レベルが100以上必要。(超高難易度クエストの為)


……以上の条件を達成すると、『Muv-Luv Alternative』のメインクエストが発生する。







————2001年、11月11日早朝、BETA新潟上陸。




佐渡島ハイヴから出現した旅団規模のBETA群の唐突の侵攻により、警戒していた帝国軍日本海艦隊がロクな時間稼ぎも出来ぬまま全滅。

即ち第一次海防ラインを瞬く間に突破された事を意味し、新潟に上陸したBETA群は中越・下越・新潟の三方向に分流。

それ対して、帝国本土防衛軍の第12師団と第14師団が迎撃にあたる事と成るが、初動の大幅の遅れにより、既に新潟周辺の各地で戦術機とBETAとの戦いが繰り広げられていた。

一方、新潟の海岸沿いから少し離れた丘の上で、2つの人影が佇んでいた。

一見、重武装した機械化歩兵の様に見えなくもないが、何故か戦火の事など知らない模様。


『なッ……一体何処なんだ? 此処は……』


僅かに頭部を左右に動かしながら困惑した様に言葉を漏らす、男性と思われる片方の人影。

その者が纏っているのは、正式には"パワーアーマー"と言う歩行型装甲兵器である。

タイプはT-60とされ、カラーリングは黒。

また彼の所属する組織なのか、胸には剣に3つの歯車が合わさった様な白いエンブレムの塗装がされており、更に左前腕には知る人ぞ知る『パラディン』の階級章が赤色で描かれている。


「俺達は"ボストン空港"から"サンクチュアリ"へのテスト・テレポートを行った筈だが……」


もう片方の人影も声からして男性の様で、此方はその場で立ち尽くしている。

気付いたら"見知らぬ場所"に立っていた事により、彼はパワーアーマーに内装されているシステム画面を操り、マップ等を開く事で現在の場所を把握しようとしていた。

尚、彼もT-60型パワーアーマーを纏っており、前述の『パラディン』と殆ど塗装は同じだが、赤色の階級章だけは『センチネル』を意味していると言う違いが有った。

さて置き、レーザーライフルを構えている『パラディン』は、妙に周囲が騒がしい事を警戒しつつ、『センチネル』の言葉を待っている。


『只事ではない気配がするな……何が起こっていると言うんだ?』

「良し……Pip-Boyと連結完了……ッ……」

『どうした? センチネル。場所の照会はできたのか?』

「あァ。どうやら此処はニイガタ……と言う場所らしい」

『ニイガタ? 聞いた事が無い地名だな……』

「少なくともアメリカでは無さそうだ。一体何処まで飛ばされちまったんだ?」

『分かりかねるな。だが、我々は五体満足で立てている。今の状況で執れる行動は幾らでも有るだろう』

「そうだな……とりあえず、妙な状況を把握するのが先か……」


長い戦いの経験とテクノロジーの研究による知識から、2人はワザワザ言わずとも、今の状況はテレポートによる事故の所為だと判断した。

彼らが所属する組織……ブラザーフッド・オブ・スチール。

通称:B.O.S

主に『技術や知識が悪用されないよう管理する』のを思想としている。

連邦……最終戦争後のマサチューセッツ州のボストン周辺で活動しているB.O.Sは、市民を守るために立ち上がった団体……ミニッツメンと連携し、その地に存在する敵対組織を概ね排除する事に成功した。

しかし、広いボストンには何処の組織にも属さぬ無法者……レイダーや、人類が科学を悪用した事により生まれたモンスター等が未だに数多く存在しており、居住地の安泰やテクノロジーの安全な回収には、沢山の課題が残っていると言えた。

それにより、ミニッツメンの『将軍』としての顔も持つ『センチネル』は既に高い階級ながらも『パラディン』と共に継続して連邦の敵と戦い続けた結果、積もるに積もった功績が遂にB.O.Sの最高指揮官『エルダー・マクソン』の一つの"信念"を曲げさせるに至った。

結果として、訳有ってB.O.Sから追われていた『パラディン』の復帰が実現し、新たな任務としてミニッツメンとB.O.Sの共同開発による、居住地の円滑な防衛・救援を目的とした『テレポーテーション』の実証テストを行おうとした結果、今現在の状況に陥っていると言う訳である。

そのテストは残念ながら失敗してしまった様だが、この2人は"この程度"の修羅場には慣れている。

仮に周囲で戦闘が発生しているのならば、どちらかに介入してから現地の情報を聞けば良いだろう。

テレポートの失敗だけでなく、行動の方向性すら言葉を交わさずとも理解した二人は、早速移動を開始しようとしたが……


≪ドドドドドドドド……≫


『!? 多数の"何か"が接近しているッ!』

「な、何だコイツ等はッ? 初めて見るぞ!?」

『どうやら友好的では無さそうだが……』

「……ッ……」


唐突に聴こえて来た雑音の方向へと体を向けると、彼らは知らないが……兵士級と闘志級の群れが接近して来ていた。

その数は五十体を下らず、個々の実力を無視したとしても、連邦ですら此処までのエネミーが一斉に襲って来る事など滅多に無い。

さて置き、要撃級以上の大型のBETAは、既に横浜基地を目指す道中で戦術機との交戦を開始している。

一方、小型種とされるBETAは遅れての上陸となっており、かつ高い"対人探知能力"により、自殺行為にも等しい『戦術機にも乗らずに海岸近辺に居る』2人を最初の標的と認識しているのだろう。

だとすれば、2人の行動は一つしかないが……何故か『センチネル』は一瞬だけ言葉を失った。

間違いなく・正真正銘『初めて見る相手』でありながら、何処かで見た事が有るような錯覚をしてしまったのだ。

その理由はどうあれ、戦場ではその一瞬の硬直が命取りとなる。

正直、数多くの戦場で活躍し、生き残って来た『センチネル』あるまじき失態と言えた。

立場上、彼の指示が有るまで発砲を控えていた『パラディン』も、大きな違和感を得て、瞬時に反応した。


『どうした!? センチネルッ!』

「!? すまないッ! 蹴散らすぞ!!」

『了解ッ! 戦闘開始する!!』

「アド・ヴィクトリアム!!」


≪————パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パパンッ!!≫


『パラディン』の言葉に『センチネル』は直ぐに正気に戻ると指示を出し、それと同時に2人はBETAに向かって手にしていた武器でレーザーを連射する。

『パラディン』の持つ"ツーショット・レーザーライフル"は名の通り高威力のレーザーを2発同時に発射する兵器であり、どちらのレーザーも小型BETAの肉体を容易に貫通させている。

2本のレーザーが綺麗に直撃したBETAの中には、灰の山へと姿を変えさせられた個体も出ている始末。

それがセミオートでの連射が可能でもある為、『パラディン』は一切BETAの接近を許さず一方的な蹂躙を続けている。

一方、『センチネル』が持つレーザーピストルの『ライト・オーソリティ』は、単発の発射では有るものの、同じく連射が可能ながら威力は『パラディン』のそれを見るからに上回っており、BETAの肉体を貫通し後続の個体にも致命傷を与えている。


『リロード開始! ……完了!』

「情けを掛けるな!!」


更に『センチネル』は度々、常人とは思えないスピードでリロードを終わらせると、その直後にレーザーピストルでの高速連射を行っていた。

正確には『パラディン』のリロードのタイミングで必ず行っており、前述の連射も全て正確にBETAの頭部を撃ち抜いていて、その連携により2人のどちらかの射撃が同時に途絶える事は皆無だった。

これは『センチネル』の持つ『Pip-Boy』に内装されている機能の『Vault-tec Assisted Targetig System』……通称:V.A.T.S.と呼ばれる戦闘支援システムの恩恵なのだが、あくまで高速で銃口が標的に向くだけであり、しっかりと目標に攻撃を当てれているは、間違いなく『センチネル』の手腕によるモノだと言える。

対してBETA側は不格好な造りも有ってか、下肢の一部を失うだけでも地面に崩れて十分な行動ができなくなっているが、それを『センチネル』が見落とす筈が無く、容赦なくトドメを刺されている。


『見掛け倒しかッ! まだフェラルの方が歯応えが有るぞ!?』

「チッ! 数だけは、やたら多かった……が……!?」


しかし、その小型種を囮にしているかどうかは分からないが、複数の光線級が2人を捉えていた。

パワーアーマーは宇宙開発用のロケットのエンジンの直撃を至近距離で受けても、中の人間が無傷でかつ、装甲にも致命的なダメージを受ける事が無いと言う驚異的なスペックを持っているので、当然レーザー兵器に対しても高い耐性を備えているが、此処が何処だか分からない以上、装甲のダメージ自体が後々に響いてくる可能性も有る。

即ち、絶対に彼らが食らいたくない攻撃と言っても過言では無い。

対して、V.A.T.S.は索敵としても使える為、小型種が減って来た事により『センチネル』が銃口を逸らせて哨戒によるV.A.T.S.を起動させた際。

遠距離から此方を向いて何かを溜めているような個体を発見し、違和感に気付いた『パラディン』が再び声を張り上げる。


『何に気付いた!? 状況報告をッ!』

「射撃をして来そうな敵を、複数発見したッ! 順番に片付けるので、残りの雑魚を頼む!!」

『任務了解!!』

「早くもコイツを使う事に成るとはな……!!」


≪————ビッ! ビッ! ビッ!≫


『パラディン』に指示を出した『センチネル』は、レーザーピストルから"爆発の10mmピストル"に武器を持ち替えると、V.A.T.S.で自動的に合わされた方向に3回の射撃を行った。

サプレッサーが付いているので、殆ど音が鳴っていないのは、さて置き。

本来、ピストルで有れば距離が遠過ぎて威力が減衰してしまうのだが、爆発の効果が備わっていれば話は別。

そもそも適当に撃ったので3発のウチ弾丸が当たってすらいない射撃も有ったが、その名の通り着弾地点で爆発を巻き起こしており、装甲が無いに等しい光線級は一発の爆風でレーザー照射の機能を失った。

爆発が三発分と成れば尚更であり、このオーバーキルによって『センチネル』は早くも大体の耐久力を把握する事が出来た。

また、彼の数多くの戦いでの経験により、"遅れて奥の存在に気付いたと言うのに今更チャージを開始していた"と言う事は、恐らく味方を誤射しないタイプだからと察するにも至った。

そう『センチネル』は早くも結論を出しつつも、V.A.T.S.により索敵を繰り返して光線級を瞬く間に全て片付けてしまった。

V.A.T.S.起動の索敵による自動照準・即V.A.T.S.解除のマニュアル射撃後、すぐ同じ行動を繰り返してでの、彼にとっては何のスキルも要らない簡単な作業だった。

一方、光線級の全滅と同時に、最後の小型種が『パラディン』によって灰の山にされた。


『敵を殲滅した!!』

「こっちも終わった。アレは味方を誤射しないタイプで間違い無いな」

『ふむ。最も油断できないタイミングは、ある程度数が減って来た時だったと言う訳か……』

「パラディン・ダンス。コイツらに見覚えは?」

『無い。何にせよ、この数を考えれば、今後何度も見る事に成りそうだな』

「しっかし、今回も胸糞悪い趣味をしてやがる……!」

『同感だ。テクノロジーの悪用、此処に極まれりと言った所か……』

「ボストンに戻る"ついで"で、生み出した元凶が見つかれば施設ごと潰したい気分だぜ」

『同じ人間を襲っている時点で失敗作だろう。B.O.Sの役に立つとは思えんがね……』


BETAを全滅させて状況が落ち着いたと思ったのか、『センチネル』は『パラディン』をダンスと呼んだ。

それが片方の男の名前であり、ダンスは『センチネル』の部下と言える立場なのだろう。

だが先程の戦い様を見る限り、階級の隔たりは無い様なモノで、かなりの信頼関係を築いていると言えよう。

よってか、今度は軽口を交わしながら、武器を手にBETAの死骸を見下ろす2人。

BETAを知らぬ互いの認識は、今迄に戦って来たクリーチャーと同様、"人類が生み出した敵"だったが……


≪ドドドドドドドド……!!!!≫


「!? ま、まさか————」

『何ッ? 新手だと!?』

「更にデカいッ! 3メートルは有るぞ……!?」

『センチネル!!』

「クソッタレがッ! 片付けるぞ!?」

『動きが速い!? 油断するなッ!』


≪————パンッ! パンッ! パパンッ!!≫

≪————ビッ! ビッ! ビッ!≫


「良しッ、コイツも脆い!! 癪だが、後退して迎撃だッ!」

『了解した!! 足並みを合わせるッ!』

「そんなガタイで通じると思うな!?」

『皆殺しにしろ!!』


————落ち着きも束の間。

暢気に会話などさせるかと言わんばかりに、今度は戦車級の群れが接近して来る。

こちらも対人探知能力に優れたBETAではあるが、先程の二種よりも感知が遅れたのかもしれない。

最早、歩兵2人であれば戦う事を諦めるレベルの戦力差と言えたが、それでも彼らは冷静だった。

ダンスは"ツーショット・レーザーライフル"で主に胴体を狙い、相変わらず装甲は脆いのか、2本のレーザーは戦車級の胴体を大きく抉る事が出来ていて、3連射もすれば戦闘継続が不可能な程の部位破壊が出来ていた。

一方、『センチネル』は"爆発の10mmピストル"で戦車級の足元を撃って、複数の機動性を纏めて奪うのを優先させ、動きが鈍く成ればそのまま放置。

ダンスと共に後退しながら射撃を続け、撃ち尽くしたらV.A.T.S.による高速リロード、それと同時に頻繁に地雷を投げ置き、かつピストルの爆発効果によって起爆させる事も当たり前の様に行い、戦車級の波状攻撃を全く寄せ付けないようにしていた。

歩兵に対しても、戦術機に対しても、少数で有れば数の暴力で喰い殺せるのが戦車級の十八番であったが、2人はサイズにしては武器の火力が高過ぎて、面白い様に駆逐されていっていた。

歩兵2名に対しては、正面から同時に襲い掛かれるのは多くても4体だが、たったそれダケでは何の意味も無かったのである。


「これが連邦の正義だ!!」

『戦闘終了ッ! 周囲を警戒!!』

「チッ……本来であれば、既に十分な数の敵を倒したと言えるが……どうにも引っ掛かるな……」

『奇遇だな、センチネル。何故か、私も"これだけ"では済まない気がしてならん』

「周囲のV.A.T.S.での索敵を継続する。完全に安全なのを確認してから動いた方が良さそうだ」

『承知した……んッ?』


≪————ィィィィイイイイン……!!≫


「あれは、ロボット……!? こっちに近付いて来てるぞ!?」

『何!? まさかリバティ・プライムの類かッ? だとすれば不利————』

「いや、味方識別だッ。ひとまず発砲は控えてくれ!!」

『了解!! ……驚いたな、あの巨体でサーフェーシングしているのか……?』

「相変わらず、難しい言葉を知っているな。パラディン」

『……何処で"植え付けられた"知識だか分からんがね』

「ともかく。言葉が通じる事を願うばかりだな」

『欲を言えば"コズワース"や"キュリー"の様な人格者を期待したいモノだ』


特に問題なく戦車級を殲滅するも、今度は警戒状態を一切解かずに周囲を見渡す中……

BETA達が襲って来た逆の方向から、国連軍のカラーリングをした不知火が"噴射地表面滑走"で接近して来た。

それに対して、2人は大きな動揺をしておらず、軽口を漏らす余裕すらも見せながら待機している。

テレポートの失敗で知らない場所に飛んでしまったと思ったら、グロテスクな未知の生物に襲われたゆえでの連戦の直後に、謎の大型のロボットとの接触を強いられる……と言う、奇想天外な現実に何度も直面していると言うのに、何とも強靭な精神力である。


≪————ズシンッ!!!!≫


『其処の……機械化歩兵か!? まだ、そんな場所で戦っていたのか!? 此処はもう危険だッ、既にBETAの第二波が接近しているッ! 直ぐに退避してく……れ……?』

「(人格は女性みたいだが……)BETA?」

『其処のロボットよ。それが"こいつら"の呼び名だと言うのか?』

『……ッ……』

「うん?(AIにしては違和感が……まさか……)」

『う~む、聴こえていないのか? しかし退避と言われてもな。ここが何処か分からないのに、何方に逃れろと?』


戦術機……不知火は2人と10メートルほど距離を置いて停止してから警告して来る。

その中には聞こえたように、女性のパイロット……衛士が搭乗しているのだが、2人は連邦の常識から人工知能(AI)が機体を制御していると思っていた。

だが、今はその予想が的中しているかどうかは関係無く、重要なのは今まで戦っていた化け物が"BETA"と言う、聞いた事が無い名前だった事だ。

一方、戦術機に搭乗している"伊隅 みちる"大尉は、注意勧告の途中で思わず言葉を失ってしまった。

見た事の無い装甲を纏っている機械化歩兵と思われる2名の背後には、100匹を下らないBETAの死骸が転がっていたのだ。

彼女の常識から考えれば信じられない戦果であり、このコンビは只物ではない事が容易に察せられた。

今は銃を下ろしてくれているので敵意は無いようだが、まかり間違って彼らと交戦してしまうと、瞬時にコックピットを撃ち抜かれてしまいそうな、強いプレッシャーも感じられた。

現在は緊急時なので思考している時間は僅かしか無いが、この2名の機械化歩兵(仮)の詳細が、横浜基地でも割と高い情報照会の権限を持っている伊隅でも一切分からない事から、自分達のA-01と同様、何処かの特殊部隊に所属していると判断した。

それと同時に、伊隅は2人の戦闘能力を高く評価し、少なくとも同等以上の階級だと想定して、コンタクトを取る事とした。


『……ッ……失礼しましたッ。私は横浜基地所属の"伊隅 みちる"大尉であります』

「!? ……と言う事は……パラディン。やはり中に人が搭乗している様だぞ!?」

『何? それは驚いたな……戦前のコミックで読んだ程度だが、既に完成させていたとは……』

『(戦前?)恐縮でありますが、貴官らの所属は?』

「……ッと失礼。私はB.O.S……ブラザーフッド・オブ・スチールの、タケル・シロガネであります」

『同じくB.O.Sのパラディン・ダンスだ』


戦前に日本産の漫画でしか見た事が無かった"人間が乗り込むロボット"に少し興奮してしまったのか、タケル・シロガネと名乗った『センチネル』は丁寧な口調で答える。

それに"やれやれ"と首を振りながらダンスが続くが、互いに状況が状況なので敬礼は行っていない。

対して、伊隅はタケル・シロガネとダンスと言う名前以外は何も理解できない為、困惑するしか無かった。


『B.O.S……パラディン……』

「う~む。一から説明が必要な程、B.O.Sの存在は認知されていない場所なのかな?」

『やれやれ。悩みの種が、更に一つ追加された様だな』

『!? とにかく、貴官らは退避をッ。暫く南下すれば、民間人であれ避難できるトレーラーが有りますので、必要であれば利用されても結構ですから!!』

「それは願ってもいなかった話なんだが……」

『今から走っても、逃がしてはくれんだろうな』


≪ズドドドドドドドド……!!!!≫


『クッ!? もう、こんな距離にまで……!!』


タケルもダンスも、彼女に聞きたい事は多々有ったが、それは激しい振動によって妨げられた。

突撃級を先頭に、要撃級・要塞級の大型BETA……更には重光線級までもが姿を現したのである。

うち要撃級でも高さ12メートル(尾節込み)に及び、要塞級に至っては66メートル。

かつ数は大型種だけでも100は下らず、大きな振動はかなりの距離からでも響いていたのだ。


「どう見る? パラディン」

『流石に武器の変更の許可を貰いたいモノだな』

『なッ、何を言われているのです!? 奴らの場合、対人探知能力は低いので、狙いは我々です! 逃げる事は十分に可能ですから、無駄な戦闘は避けてくださいッ!』


小型種ならともかく大型種のBETAとならば、とてもでは無いが歩兵でどうにかなる相手では無い。

よって伊隅は遠回しに"戦術機で無ければ勝負にならない"と告げたつもりだったが、それでも2人はこの場を離れる気が無いようだ。

最初は振動に身構えた2人だったが、大型種の集団ゆえに若干距離に余裕が有る様で、再び口を開く。


「パラディン。そっちは"膝砕きのガトリング・レーザー"を使ってみてくれ」

『了解した』

『なッ!? まさか————』

「伊隅大尉」

『は、はい?』

「BETAとは……どう言う意味なんですかね?」

『人類に敵対的な地球外起源種……と言われておりますが……』

『地球外!? 何て事だ……』

「パラディン?」

『つまりだな。奴らは人類が造り出してしまった負債では無く、侵略者だったと言う訳だよ……』

「確かに、人間が関わっていたと考えるには、無理が有る構造だったしなァ」


≪————ジャキッ≫


2人にとって割と衝撃な事実であったが、実際に宇宙人・宇宙船すら見た事が有ったタケル。

よって、今度は規模を大幅に拡大して侵略して来ており、その場所が今回"偶然"飛ばされた"ニイガタ"周辺なのだと、暫定的にだが勝手に認識する事にした。

尚、この時点でタケルは個人携行できる核兵器であるヌカランチャーの"ビッグ・ボーイ"を構えており、銃口は既にBETAの大群に合わされていて……


「いェああァァ!! くたばれやッ! クソッタレどもが!!」


≪————ヒュルルルルルルルル……!!!!≫


丘の上に居た事が幸いしてか、個人携行ながらかなりの有効射程をもってして"ビッグ・ボーイ"から発射されたミニ・ニューク(小型核弾頭)は、武器の特性により何故か『2発同時』に発射されると、BETAの先頭集団に直撃して多大な核爆発を引き起こした。

従来の原子爆弾に比べると桁の減った小さな規模と言えるが、いち歩兵の一射だと考えれば5体の大型種・数十体の小型種を巻き込んだダケでも大きな戦果と言える。

更には、タケルは密かに薬物(ジェット)も使用していた様で、射撃の間隔も戦略兵器を運用しているとは思えない程短く、5秒程のインターバルで次々とミニ・ニュークを発射・かつ直撃させていた。

ちなみに、ジェットとは『周りの全ての動きが遅くなる』効果を有しているが、薬物特有のトリップなんぞでは無く、本当に動きが速くなってしまう驚異の性能を持っている。

また、タケルは薬物中毒を無効化するperk(特殊能力)を所持しているので、全くのノーリスクで使用する事が出来ていた。

しかも彼が仮に『本気』になれば、他の薬物の恩恵も同時に得る事で、更に火力を激増させるのも可能だったりする。


『エルダー・マクソンの為に!!』


≪パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!≫


パラディン・ダンスは膝を折った態勢でガトリング・レーザーを構えており、爆発を運良く抜けて来た突撃級・要撃級の迎撃をしていた。

正直、歩兵が大型種相手に『その場』に留まって迎え撃つのは自殺行為に等しい。

ガトリング・レーザーの弾幕は確かに激しく、特に連射速度が凄まじいのだが、相手が突撃級にもなると、一撃一撃で装甲を確実に削れているとは言え、流石に正面からの撃破は難しい……筈であった。

しかし『膝砕き』の効果により、突撃級はガトリング・レーザーの弾幕を装甲に数発受けたダケで、丘を登れない程に足にダメージを受け、更に数発を受けるとその場から全く動けなくなってしまっていた。

それは要撃級も同じであり、ガトリング・レーザーを構えるパラディン・ダンスの有効射程に入った直後の弾幕で、『大型種が歩兵に即無力化されている』と言う、まさに常識を覆す光景が広がっていた。

それなりに距離を詰める事が出来ていた突撃級も存在するが、それはスライディングの様な転倒をした個体だったに過ぎない。

当然、この様な圧倒的な戦果を歩兵が8分も経たずにも挙げられるとは、考えた事も無かった伊隅は、戦術機のコックピットの中で唖然とした表情で見ている事しかできなかったが……


≪————ヒュルルルルルルルル……!!!!≫

≪パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!≫


「おいッ! 大尉さん!? 突っ立ってたら危ないから、どっかに行っててくれ!!」

『小型種に接近された場合、この武器では誤射の可能性も考えられるッ! それとも何だ!? その機体は上等な"乗り物"に過ぎないと言う事なのか!?』

『!? す、すみませんッ! この機体は不知火……奴らに後れは取りません……!!』

「だったら、動けなくなっているBETAを始末してくれないか!? 俺達は動けるのを中心に狙う!!」

『了解しました!!』


————以下の会話は、戦術機のリンクによるモノなのでタケルとダンスには聞こえていない。


『すみません大尉ッ、遅れました!!』

『速瀬かッ』

『……って、一体どう言う状況なんですかァッ? コレ!?』

『い、伊隅大尉……いつの間に、こんな必殺技を……』

『馬鹿を言うな、宗像。私が出来る訳が無いだろう。全て特殊部隊の方達の戦果だ』

『特殊部隊……って、あの歩兵がァァ~~!?』

『さっきから声が大きいですよ? 速瀬中尉』

『ともかく。我々は無力化されたBETAのトドメを刺す事にするッ。くれぐれも、お二人の射線には入るんじゃないぞ?』

『……って事は、楽して撃破数ゲットォ?』

『フフッ。早い者勝ちですね』

『ま、全く貴様らはッ。それでは、兵器使用自由!! 状況開始せよッ!』

『————了解!!』


≪————ヒュルルルルルルルル……!!!!≫

≪パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!≫


「どうやら、援軍が来てくれたみたいだな」

『ふむ。しっかりと部隊が機能している組織の様だ』


更なるミニ・ニュークの発射と、膝砕きのガトリング・レーザーでの面制圧、そして計7機の不知火の弾幕により、戦闘は人類側の一方的な蹂躙で展開していった。

そしてBETAの数が減ってくると、難敵と思われる要塞級がようやくパラディン・ダンスの射程距離内に入り、かつ重光線級がチャージを開始するのだが……

何と要塞級の方は、あっという間に"膝砕き"によって地面に崩れ、既に只のデカブツと化していた。


「何だァコイツ。只の案山子か?」

『マイアラーク・クイーンと良い勝負だな』

「それよりも、向こうのデカブツが……!」

『彼女達を狙っているのか!?』

「だとすれば、今度は"コイツ"の出番ってワケか」

『!? "それ"を持ち出すとは、今日は大判振る舞いだな』


————"爆発のコンバットショットガン"。

距離がかなり有るので、射撃の威力そのものは減衰により効果が薄いドコロか装甲を貫けないだろうが、この武器は着弾した"8発"全てが爆発を巻き起こすオーパーツと成っている。

『ロングポーテッド・シールドバレル』により、ショットガンにしては飛距離も抜群なので、36秒によるチャージで存在感を露わにしている重光線級など、良い的でしか無く……


≪ダンッ! ダンダンッ!!≫

≪————ズウウウウゥゥゥゥン……!!!!≫


計3×8=24発の爆風を受けると、弱点の照射粘膜は完全に粉砕され、地面にどうと倒れた。

その様子を横目にしつつ、タケルは光線級の時と同じように、次々とターゲットを変えて重光線級を撃破してゆく。

大型かつ非常に目立つので、小型種には必須だったV.A.T.S.は必要無かった。

また、遅れて接近しようとしてくる小型種をも、V.A.T.S.の索敵によって光線級をメインにショットガンの爆風で纏めて粉砕してゆき、膝砕きで無力化させていた大型種の方も、要塞級を含めてA-01に撃破された結果、彼らに近寄って来たBETAは全て殲滅される迄に至った。


「敵性反応無しッ。作戦終了!!」

『これがB.O.Sの遣り方だ……!!』


ようやく警戒を解く事が出来たタケルとダンス。

流石に精神的に疲労したので、タケルはできればパワーアーマーを脱ぎたい心境だったが、今の状況では無理な話である。

一方、同じく作戦を終えた伊隅は、速瀬達に指示を出してこの場から自機以外の戦術機を離脱させていた。

対して、歩兵の正体が気になり過ぎた速瀬は若干ゴネていた様で、此方に何度かメインカメラを向けている動作が確認できた。

さて置き、伊隅は2人の近くに不知火を着地させると、何と機体を待機状態にしてコックピットからから出て来た。

小型種の存在を考えると危険にも程が有るが、当然レーダーを再三確認してでの行動である。

また、彼女にとって彼らと生身で接触するのは、仲間達の命を守ってくれた事への、最低限の礼儀だと言えたのだ。

流石に場所を考えるべきとも捉えられるが、見るからに『訳アリ』そうな2人の状況を考えたのだろう。

歩兵ながら大型を含めたBETAを蹂躙できる凄まじい強さを持っていながら、何故か人類共通の敵である『その名』を知らなかったのだから……

それに対して、タケルとしても伊隅がコックピットから出てくるのは意外であり、しかも想像していたのと全く違う、非常に際どいパイロットスーツを着ていた事にも驚いた。

汎用性の高い、"99式衛士強化装備"と言う高性能な防護服なのだが、伊隅が美人な事も有り、そのボディラインは独り身のタケルにとっては目の毒であった。

しかし、直ぐ考えを改めると同時に、前述の通りタケルも丁度パワーアーマーから出たかった為、コレを良い機会と考えて生身で伊隅と接触する事に決めた。

BETAと戦っている伊隅達はともかく、タケルにとってはむしろ生身の方が従来の戦闘スタイルと言えるのだが。


「パラディン。すまないが、周囲の警戒を頼む」

『承知した。だが手短に願うぞ』


≪プシュ————ッ……≫


「ふ~ッ……」

「(彼が……タケル・シロガネ……というか、あのパワード・スーツはああやって開くのね……)」


伊隅が目の前まで近付いて来ると、タケルはダンスに周囲を警戒するよう指示してから、パワーアーマーから出た。

少し詳しく述べると、パワーアーマーの背面と四肢が開いて真後ろに降りると言った感じで、乗る際はその逆である。

また、彼は"フュージョン・コア"と呼ばれる背中の核電池を抜き取ると、それを右手で転がしながらパワーアーマーの正面に回り込んで来た。

そんなタケルは『Vaultジャンプスーツ』と言う青い全身タイツを着用しており、背中には『111』と言う番号が記されている。

また、左腕には『pip-boy』と言う携帯型デバイスが装着されていた。

————タケル・シロガネ。

戦前世界の最大の激戦区『アンカレッジ戦線』で活躍した元軍人で、エンジニアとしての能力にも優れた英雄。

正真正銘の日系アメリカ人であるが、それを知る由もない伊隅は、思ったよりも男前だった彼に、先程のタケルと似た様な感情を抱いていた。




————これが連邦の英雄と、異世界(?)の日本人との、初めての接触であった。




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