SSブログ
海外の業者がコメントを荒らす為、ブログユーザー以外の書き込みを禁止しました。
管理人に用事がおありの方は、[Pixiv][Twitter]で直接連絡をお願い致します。
また、2021/10/27に旧HPのリンクが再び変更されました。[こちら]から飛んで下さい。

第2話:A-01『伊隅みちる』 [マブラヴ]

【第1話の補足】
初っ端のBETAとの戦闘ですが、実は滅茶苦茶厳しい戦いだったりしました。
前半戦の小型種が相手だと、不死属性でパワーアーマーが壊れないパラディン・ダンスがめっちゃ強いので、主人公のレベルは100以上ですし適当に援護するだけでも勝てます。
しかし、後半戦の大型種は光線級を含めて全て戦術機を優先的に狙うので、モタモタしているとモブが乗った3機の不知火がやられてしまいます。
メインキャラの伊隅・速瀬・宗像・風間の乗った不知火はプロテクトが掛かっているので撃破されませんが、モブが3人とも死んでしまうと伊隅大尉との交渉によるボーナスが貰えません。
(小型種を歩兵ながら圧倒していた時点で、かなりの信頼を得れてはいますが……)
逆に『Charisma』に自信が有れば、無理してモブを助ける必要は無いですし、逃げ回っていてもA-01が勝手に全滅させてくれます。
それでも助けたい場合は、敵の数が多過ぎる為『オーバーシアー・ガーディアン』や『スップラッター・キャノン』みたいに単体攻撃に秀でたユニーク武器を持っているだけでは難いので、実際に2人が使っていた特攻武器や『爆発のミニガン』みたいなぶっ壊れ武器を予め用意しておく必要が有ります。
(要はDLC『Far Harbor』の冒頭の戦闘が死ぬほど難しくなった感じのリスペクトです)
当然、今回はモブを全員助けたとして物語を進めてゆきます。







パワーアーマーから出た直後から、タケルは大きな違和感を得ていた。

視界のモニターによるレイヤーが無くなると、予想していた以上に周囲の植物に緑が残されていたからだ。

佐渡島ハイヴのフェイズは現在【4】とされており、ヘタすれば直ぐ近くに『門/ゲート』が存在している可能性も考えられるが、それでも連邦の環境よりは大分マシな様だ。

(ハイヴから一定距離以内の植物は約50%が壊滅してしまうと言われている)

その為か、先程は緊急時ゆえに大して気にしていなかったが、放射能もこの場には残っていない模様。

連邦とてガイガーカウンター(放射線量計測器)が反応しない場所は珍しくないが、清潔度の様なランクが有るとしたら、今の場所の方が圧倒的に上だと言う気さえする。

それなのに、敵の規模が規模だったのでBETAの群れに躊躇なく核を撃ち込んでしまったが……

ひょっとしたら、自分は大変な事をしでかしてしまったのではないか……と、タケルは心中で反省した。

ダンスとしても指示通り周囲を警戒している様に見えて、ニイガタの地形や自然の方に興味を惹かれていそうな仕草が見え隠れしていた。

一方、伊隅は正面までやって来たタケルが、前述のような事を考えて少しだけ視線を泳がせていた為、空気を読んで数秒間を置いてから、凛々しく敬礼しつつ口を開いた。


「B.O.S.のお二方。この度は、協力感謝致します」

「……とッ、それはお互い様です。あの数のトドメを刺し切るのは、俺達ダケでは骨でしたしね」

「とんでも有りません。あの規模のBETAとならば、我々7機のみでは手に余る相手でしたから」

「!? そうなんですか?」

「はい。本来であれば、戦死者が出ないのは奇跡と言っても過言では無かったのです」

「なッ、成程……それで、ワザワザ此方にまで?」

「はッ。よって、特殊任務部隊『A-01』第9中隊の隊長として、改めて礼を申し上げます。この度は、本当に有難う御座いましたッ」

『…………』

「…………」

『(十分な戦力を所有していそうに見えて……少々、分かりかねる連中だな)』

「(まさか、此処は連邦と違って、何らかの技術しか進展していない……?)」


2人にとって頭を下げる程の礼は大袈裟すぎる気がしたが、中隊で戦闘員が7名しか居ないと言う事は、隊員の入れ替わりが非常に激しく、かつ慢性的に人手不足なのが容易に察せられる。

(現在のA-01のメンバーは、伊隅・速瀬・宗像・風間+モブ3名の計7名+CPの涼宮)

ゆえにBETAとの戦いでは死者が出るのが必然みたいだが、巨大ロボットを運用できる技術と資源を持ちながら、当たり前の様に戦死者が出ているらしい伊隅達の状況に矛盾を感じた。

仮にB.O.S.が戦術機を作成する技術を持っていても、どう考えても予想される戦果がコストと見合わない。

あの(V.A.T.S.で何となくスキャンした)装甲だと、スーパーミューターントの追尾ミサイル一発で戦闘能力が大きく削がれるだろうし、ヌカランチャーを持ったレイダーにすら一撃で倒されてしまうだろう。

何より、遮蔽物が多い連邦の主戦場となる地形に対して、全く適応していない造りと成っている。

フェラルの群れやデスクローなど、近接攻撃しかできない相手には有利かもしれないが、連邦には重火器を持った敵も多数存在するし、B.O.S.としては大型ロボットに頼らずとも、複数の隊員がパワーアーマーを装備してレーザー兵器を持てば、いずれも十分対応できる相手なのだ。

その一方、タケルとダンスが侵略者と認識しているBETAに対しては話は別だと言える。

小型種は全く敵ではないだろうし、大型種は脳筋ばかりなので武器の火力で押し返してしまえば良い。

要塞級と重光線級は厄介かもしれないが、ガトリング・レーザーの様な武器を戦術機が装備できれば、それ以上でもそれ以下でも無いだろう。

つまり、歩兵だったタケルとダンスの武器でも十二分に戦えたのだから、それが戦術機のサイズとなれば圧倒は必然と言う訳だが、それが出来ないのなら技術が無いと思われても仕方ないのだ。

————それだけでは無い。

例え『敵対勢力が著しく減ったボストンのB.O.S.』ですら、資源の問題で造るのが戦術機7機にもなると、完成に掛かる期間は半年ドコロでは済まず、更に整備も必要となると尚更コストが掛かるだろう。

それだけ戦術機とはコスト的に、パワーアーマーよりも圧倒的に上等な兵器と言えるのだが、それでも味方が殺される可能性が極めて高かったと言う事は、武器の技術に根本的な問題が有るのは前述の通りであるが……

AIの技術も非常に進歩している2289年の現状、全ての機体にパイロットが搭乗していたのも、被弾=即死を考えると意味不明だった。

B.O.S.に置いて資源と人員には常に限りが有るが、どちらかと言うと当然『人命』の方が(限度は有るが)優先されるからこそ、戦闘員にはT-60型パワーアーマーが支給されている。

よって、仮に戦術機を量産できる程に資源に余裕が有れば、装甲の見直しは必須だろうが……戦場によっては最悪『AI搭載型が集中砲火を受けて破壊される事』を前提とした上でなら、人命の優先ゆえに採用する可能性も高いだろう。

それなのに、彼女達は量産できる資源が有りながら囮としても運用していなかった様なので、武器ダケでなくAIの技術の方も進展していなかった可能性にも信憑性が出てきた。

タケルとダンスは以上の自分達の知る連邦の常識と、彼女の言葉に疑問を感じて少し押し黙ってしまったが、伊隅は逆に彼が"奇跡"と言われて目を丸くしている事にも違和感を得ていた。

しかし、この段階では懐疑心よりも仲間を守ってくれた事に対しての『感謝』の気持ちの方が圧倒的に強く、努めて冷静を装っていそうなタケルに対し、野暮な事を指摘する気にはなれなかった。


「(この落ち着き様……)その、貴官らは……何時もあの様な戦いを?」

「とんでもない。今回みたいに有効そうな武器を持っていなかったら、貴女達に戦いを任せていた可能性も有ったと思います」

『持ち込んでいたのは偶然とも言えたからな。相変わらず、悪運は強かった様だ』

「は、はァ(それでも、可能性が有ったダケ……?)」


————さて置き。

見た感じは日本人っぽいタケル・シロガネは、鬼神の様な戦いを繰り広げていながらも、想像していたよりも温厚そうな人物であった。

偶然居合わせたとは言え、歩兵に戦闘の主力としての役割を担わせてしまった事から、一つや二つ皮肉や罵声を浴びせられるのは覚悟して赴いたのだが、良い意味で肩透かしを食らった伊隅。

例え叱責されようとも、前述の様に部下が一人も戦死する事なくBETAを殲滅できた時点で、彼女にとっては釣りが来る程度のモノでしかないのだが……

考えてみれば、こうして礼を言う事以外は何も考えていなかった伊隅であった。

対して、タケルは真っ先に伊隅に確認したかった事を、今になって告げるべく口を開く。


「話は変わりますが、此処は"ニイガタ"と言う場所で間違いないですか?」

「……そうですが?」

「だとしたら"ニイガタ"とは、地球のどの辺りに有るんでしょう?」

「!? ご、御存知……無いのですか?」

「…………」

『…………』

「(冗談では無いみたい……)此処は……日本。ユーラシア大陸の東にある島国です」

「……なッ……そう、でしたか……」

『(想像していたよりも、遥かに遠くに飛ばされてしまった様だな……)』

「(ついでに、時差も確認しとくか……)大尉、今は11月11日の7時みたいですが……?」

「い、いえ。2001年11月11日の8時で間違いありません」

「あァ。(夕方に出発したんだけど、14時間進んでたみたいで)惜しい……って……」


————2001年。

本来ボストンと日本の時差は13時間だが、冬時間になると日本の方が14時間進むようになる。

だが、今はそんな事はどうでも良い。

律儀な伊隅は親切にも年代まで教えてくれたが、その言葉で再びタケルとダンスが固まる。

2人がボストン空港より出発したのは、正真正銘2289年の11月10日だった筈なのだ。


『……!?』

「…………」

『センチネル。彼女は……?』

「嘘は言っていないな」

『……そうか……よもや、タイムスリップ……』

「えっ?」

「————パラディン!?」


日本に飛ばされてしまったのは意外だったが、まだギリギリ許容できるトラブルだった。

何せテレポーテーションの失敗なので、火山や海中に落とされるよりは遥かにマシな状況だったと言える。

……と言っても、日本からボストンへと帰還するには、想像できない程の手間が掛かってしまうだろうが、新たな敵対生物との交戦による血液サンプルの回収・見知らぬ土地の探索による技術資料の回収・勢力の拡大を想定した現地の組織との交流……など、帰還の過程でB.O.S.の糧と成り得る要素は数多く存在しているだろう。

だが、本当に『タイムスリップ』してしまったのなら話は違ってくる。

仮に過去の世界が、いかなるテクノロジーで溢れていようと『元の世界に戻る』と言う事が最優先事項となる。

例え『失われた戦前の技術』が入手できそうな場所を見つけようとも、探索などは帰還できる目途が立ってから行うべきである。

そもそも、伊隅が本当の事を言っていない可能性も考えられるが……彼女が嘘をつくメリットは全く無いし、タケルの高い『Charisma』とPerk(特殊能力)により、それを判断するのは容易だった。

また、最終戦争時はアメリカ軍が中国本土に攻め込んでいたので、必然的に属国か解放状態になっていたと思われる日本が、核戦争後にどうなっていたのかは想像に難しくなく、2289年で此処まで緑が残っているとは考え難いだろう。

更には戦術機の貧弱な武装や資源の偏り……そしてBETAと呼ばれる、未知の侵略者等々……同じ時代としては腑に落ちない事が多過ぎた。

正直『同じ地球』なのかも疑わしく思えて来るが、其処まで考えてタケルは考えを中断した。

『Intelligence』のPerk(特殊能力)によってかは知らないが、無駄に思考し過ぎるのは彼の悪い癖だ。

そんなタケルは約210年冷凍保存されていた経験が有るので、タイムスリップしてしまった驚愕を何とか押し殺したが、ダンスの方は冷静でいるよう努めてはいたモノの、流石にショックが大きかったか肝心な言葉を漏らしてしまい、それは伊隅にも聞こえてしまった様だ。


『いやッ、すまない。私のアーマーのOSとは、いささか誤差が有った様でな』

「更に話が変わって来たな……どうしよう?」

『分かりかねる。君の判断に任せよう』

「オイオイ……(またかよ……)」


伊隅には既にBETAは勿論『日本を知らない事』に驚かれており、しかも『タイムスリップ』していた事も加わったとなれば、もはや平然を装ってはいられなかった様で目が泳いでしまっていた。

ダンスから一言漏らされたに過ぎない『タイムスリップ』だが、彼女としても今迄の2人の言動の全てを踏まえると、その単語を聞いた直後に模範解答を得た様な心境になったのだ。

対して、タケルは(伊隅にとって)不審者だと言う事を隠すのを諦めたのか、彼女の前ながらダンスに相談を持ち掛けたが、彼の返事は自分に委ねると言う『いつもの』内容だった。

……思ってみれば、B.O.S.に入ってから共に任務を進める事となっても、ダンスは上官ながら『お目付け役』を称して最終的な選択は全てタケルに委ねていた。

それはタケルが『センチネル』に昇進してB.O.S.全体の『お目付け役』に近い存在に成ったとしても変わらなかったので、元々の指揮官としての『パラディン』では無く、戦闘に集中できる今のポジションが本来のダンスのB.O.S.としての在り方だったのかもしれない。

現にダンスの尻拭いをする羽目に成っているので、タケルにとっては良い迷惑ではあるが……彼の実力には何度も助けられているダケに、ツッコミは野暮だと言うのが心憎い。

ともかく、断定はできないとは言え完全な孤立無援と成った可能性が高い以上、早い段階で伊隅の様な軍人と接触できたのは大きな利点と言えた。


「あ、貴方達は……いったい……?」

「……ッ……」


生憎、伊隅からは訝しげな視線を向けられてしまっているが、それは当たり前の事である。

対して、タケルは伊隅に向かって姿勢を正すと慎重に言葉を選んでいた。

本当に2001年ならば国は勿論として司法等も機能しているだろうし、最終戦争が起こっていなければモンスターは徘徊しておらず、国内では人間同士の殺し合いも起こっていない。

最終戦争後だったら彼女には全てを忘れて貰い、新たなB.O.S.の拠点を築く選択肢もアリだったろうが、国が機能している以上は権利の問題で意味が無さそうなので却下。

一方、BETAが人類の共通の敵として存在しており、かつ土地の荒れ具合から苦戦していると思われるので、それを少しでも『どうにか』するのが彼女達にとって大きな助けになると考え、タケルは口を開こうとする。


≪————ザッ≫


「!?(突然、真面目な表情に……考えが纏まったのかしら?)」

「伊隅大尉」

「はッ」

「えっと……貴女の所属する……ヨコハマ基地でしたっけ? 其処に上官とかで、出来るだけ色々な権限を持ってて、かつ『機密』の保護を徹底できる人に、心当たりとか有ります?」

『(先ずはダメ元か……エルダー・マクソンの時には、私の紹介も有ったからな……)』

「は、はい。一人おりますが……」

「えぇ~!? 本当ですかッ!?」

「(————顔が近いッ!?)」

『センチネルッ』

「も、申し訳ない。本当に居るとは思わなくって……」

「お……お構いなく」

「もしかして、お話と言うか……交渉する事とかできます?」

「そう、ですね……私の権限ならば、無線での会話は可能かと。尚、横浜基地の副司令官です」

「!? 随分と、アッサリと教えてくれるんですねェ」

『不本意だが……我々が怪しいと者だと言うのは、否定できないが?』


————2人は特に苦労する事なく、権限を持つ者と『交渉』できる。

結果が伴わなければ意味が無いので、まだ喜ぶのは早い気がするが……たかが『交渉』と侮るなかれ。

タケルは高い『Charisma』により、交渉を有利に進められる能力にも優れているので、話が出来ると出来ないでは全く話が違ってくるのだ。

無自覚ながら『Lady Killer』の様なPerk(特殊能力)も取得しているので、相手が女性なら更に有利となる。

逆に紹介に至らない場合は、善人だと思われる伊隅の権限を頼りつつ『タイムスリップ』の事を隠して彼女達の軍に参加し、下積みとしてBETAと戦う事すら必要だと考えていたタケルとしては嬉しい誤算だった。

そもそも『この時代』に置いて、まだまだ知らない事が多過ぎるので、こんなに早く未知の軍隊と交渉する事自体が悪手なのかもしれないが、今のタケルとダンスの状況が状況ゆえに、ある程度は周囲の流れに身を任せてから、その結果に応じた行動を執るのも必然となる。

そう考えると、この初期段階で招けたチャンスとしては申し分ないので、タケルが喜んだのも無理のない話だった。

一方、ダンスの性分からか、彼の口からは慎重な意見が漏れていた。

伊隅の容易な返答には、2人を『都合の良い存在』として引き寄せる意図も感じられたのだ。

また、昔の『ミニッツメン』の様に、兵士である伊隅が善人だとしても、軍の上層部はそうでもない可能性も十二分に考えられる。

だが伊隅としては、あの戦果に加えてタケルとダンスの人柄をも考えると、彼らを副司令に紹介するのは必然だとしか捉えていなかった。


「貴方達が何者なのかは、私には理解しかねます。ですが、分かった事も有ります。貴方達は、我々と比べて卓越した技術を持っており……かつ、それを良い方向に活かそうとされている……」

「…………」

『ふむ……』

「現在、私達は……いえ、地球はBETAの脅威に直面しています。ですが副司令ならば、その技術を必ず人類の希望として活かせると思います」

『その副司令とは、それ程の人物だと?』

「……はい」

「(この大袈裟な言い様……もしかして、思った以上にヤバい状況なのか?)」

『センチネル。我々のテクノロジーを活かせる人物とならば、此方の要望(帰還)にも応える事が可能かもしれん。だとすれば、我々B.O.S.が協力してやるのも吝かでは無いのではないか?』

「うしッ! それじゃあ、決まりだな……大尉さん。ヨコハマ基地って場所に案内して貰えます?」

「も、勿論ですッ。責任を持って御案内・及び通信の段取りを組ませて頂きます!」

『……感謝する。他にも聞きたい事が山ほど有るが、それは場所を移してからにするべきだな』

「それじゃあ、俺が先行するッ。パラディンは後方の警戒をしながら後を追って来てくれ」

『了解した』

「おっと、忘れるところだった……アド・ヴィクトリアムッ。伊隅大尉」

『アド・ヴィクトリアム。日本人よ』


ダンスの言い方は相変わらずだが、2人が横浜基地に案内して貰える方向で話は纏まった。

よって、タケルは伊隅にB.O.S.式の敬礼(直立し握った右手を胸元に付ける)をしてから、反応に困っている彼女を他所にマップを確認するのか『pip-boy』を少しだけ弄ってから、パワーアーマーの背面に回り込んで持っていたフュージョン・コアを拳の側面で押し込み、その流れで搭乗すると直ぐに移動を開始した。

その手にはレーザーピストルの『ライト・オーソリティ』が握られており、早くも気持ちを『警戒』へと切り替えた様だ。

ダンスも伊隅に敬礼すると、タケルの移動開始を待ってから彼の後を追い、武器は"ツーショット・レーザーライフル"に持ち替えている。

尚、2人が直ぐに武器を持ち替えているのは『インスティチュート・コーサー』も活用していた(本作オリジナルの)特殊な技術だが、伊隅がその違和感に気付くのは少し先の事だった。


「……アド・ヴィクトリアム……」


それよりも、伊隅の興味を惹いたのはB.O.S.として発せられたと思われる言葉。

彼女とて『Ad Victoriam』がラテン語で『勝利の為に』を意味する事までは分からないが、ビクトリーが"勝利・優勝・克服・征服"と言う意味なのを考えると、何となく意図を察する事が出来た。

割と軽い感じで言ったタケルから考えて、A-01の隊規の様なガチガチな方向性では無いのかもしれないが、その言葉は伊隅にとって非常に心強く感じられた。

————B.O.S.と名乗る彼らが先程、勝利の為に行った事は何か?

それはBETAを圧倒的な力で蹂躙する完璧な戦闘であり、更には仲間を死なせないと言う奇跡も簡単に起こしてしまい、自分達とは明らかに次元が違う戦果を叩き出していた。

あんなモノを魅せられてしまうと、今現在ドスドスと移動している何の変哲もないパワーアーマーの後ろ姿ですら、輝かしく映ってしまっても仕方なかった。

作戦の度に増え続ける部下達の亡骸を背に、永遠の闇を彷徨う様な戦いを続けていた伊隅の様な人間にとっては尚更である。

一方、伊隅の知る『副司令』は"結果"の為にはいかなる手段でも用いる人間だが、交渉を円滑に進める為なら、自分の命を賭ける価値すら有ると感じるまでに至っていた。


「し、しまった。そう言えば、副司令からの任務は失敗ッ……いえ、私も急がないと」


ちなみに、伊隅は副司令から『BETAの捕獲作戦』の展開を指示をされていたが、B.O.S.の活躍のインパクトが有り過ぎて、彼女にしては珍しく完全に忘れてしまっていた。

だが、それすら些細な事と考えられる程、B.O.S.から得られる恩恵が大きいと感じた伊隅は、新たな希望を胸にパワーアーマーを追い越すような勢いで走り出すと、自分の戦術機の元へと急いだ。

この後、大型のトレーラーに到着すると、伊隅はパワーアーマーを脱いだ2人を内部に案内し、移動の合間に"A-01が全員揃っていたとしても広い車内"で『今の世界の状況』を説明したのだが、それにタケルとダンスが驚愕の連続を強いられたのは言うまでもなかった。

その反応を見て、伊隅は本来の性格からか2人の境遇に同情し、タケルとダンスは『タイムスリップ』で済んだ方がまだマシだったのではないか……と、暫く額に手を当てざるを得なかった。








【あとがき】
今回は互いの認識の違いを説明する回だったので、読んでて死ぬほどつまらなかったと思います。
でもクロスオーバーとして物語の進行上、避けては通れないので無い知恵振り絞って書きました。
尚、仮にゲームだったら伊隅大尉が横浜基地で落ち着いた辺りでコンパニオンになると思います。
Fallout4的には『ロマンス』を何人にでも行える仕様なので、その辺も活かしてみたいなあ……




nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 0

コメント 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。