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TAS娘さんがBETAと戦うようです【後編】 [マブラヴ]

とりあえず書きたい所までは書けたので、連載はコレで終了と成ります。すみません。
事情により返事は出来ませんが理想郷で感想を下さった方達、有難う御座いました。







――――横浜基地 地下19階・香月 副司令の執務室にて。

其処のデスクの椅子に腰掛けていた夕呼は、書類に貼ってある仏頂面の少女の写真を見ていた。

コレは"彼女"が自分と対面する以前に撮ったモノであり、時期としては訓練兵と成る直前である。

無理に気を張っているのか表情は強張っており、緊張しているのが目に見えているのが笑える。

だが初めて出会った"彼女"の雰囲気は余裕に満ち溢れており、同一人物かさえ疑問に思えた。


「相沢 亜衣……ねぇ」


年齢16歳。

1月11日生まれ。

身長160センチ。

体重45キロ。

握力26キロ。

100m走18秒。

武道の心得無し。

学力も平均的。


同じ年齢層で更に衛士志望と考えれば"彼女"と同等か それ以上の人間が殆どだと言って良いだろう。

そもそも総戦技評価演習を通れるか危うい所か、衛士適正が無ければ訓練兵にすら成れなかったレベルだ。

それなのに既に幾つも確認されている、信じられない"彼女"の行動に伴う結果。


自分より一回り以上も大きな門兵の伍長を容易く投げ飛ばして失神させ。

彼の相方(黒人)の銃口に振り向きもせず投げたナイフを命中させた上に。

ヴォールク・データでフィードバック・データも無しに、一度も地に足を着ける事無く反応路まで辿り着き。

訓練兵→大尉の待遇と言う少女の為か絡んでくる馬鹿な衛士を何人も失神させて病院送りにしている。


「一体何者なのかしらね」


夕呼は"彼女"を見た瞬間から只者では無いと言う事は分かった。

其の力量が読めない少尉ならともかく、大尉クラスと成らば役立たずだろうしさっさと前線に送り込もう。

それはさて置き。

相沢亜衣という元訓練兵は前述の妙な行動以外は、至って平凡な少女なのは変わっていなかった。

大尉権限でハンドガンによる射撃訓練を行いたいと言って試した結果は、中央の的にも当てる事さえ困難。

また毎日 夜に行っていると言うランニングは御世辞にも早いとは言えないペース。

シミュレーターに至ってはXM3の調整を繰り返している為か、ログを漁っても以前の様なデータは無い。


……だとすれば猫を被っているのだと考えるのが定石だが、投薬を行っても結果は全くの白。

只 自白により分かったのは彼女は何か"特別な力"を持っていると言う事だ。

まァそう誤魔化されたダケなのだが、対面して白銀の横に並んで立っていた彼女は妙な事を言った。

死んだ筈の白銀と同様に、自分の唐突な変化は"因果律量子論"が絡んでいる故だと。

下手な人間が"その事"を知っている時点で万死に値するのだが、白銀と言う男は言い分に存在の辻褄が会う。

だが相沢は確証が少なく、利用が安易そうな彼とは違うし消してしまうのも良いかと思った矢先。

撃震に搭乗してのヴォールク・データの人類初の単機制覇……少なくとも利用しない手は無かった。

本来 大した能力も無い癖に余裕ぶっている態度は癪だが、自分に協力する様だし置いておくのも良いだろう。

白銀と違って邪魔なら即座に切れば良いダケであるし、柔軟に考えれば良い"拾い者"と言えるのだから。

しかしながら。

11日に出撃したいと言う要望に無茶な指令をしてしまったが、アッサリと飲むとは思わなかった。

BETAが本当に上陸してくれば、真っ先に自分が単機で迎え撃って数を出来る限り減らすと言うのだ。

それも何の管制も無しに完全に帝国軍の防衛基準体制2の範囲外で。

また相沢には変態的な動きによる戦果を隠蔽して欲しい為、何か手を考えて置いて下さいと言われたが……


「まさか死んだりしないでしょうね?」


夕呼の女の勘は言っている。

相沢は白銀以上にオルタネイティヴ4を始め様々な事を知っているのだと。

それは"未来"の事も当て嵌まり、彼女は自分の持っている情報の10分の1も喋ってはいないだろう。

反面 白銀はベラベラと喋っていた印象を受けるのは置いておいて。

少なくとも00ユニットの確信に迫る情報を引き出す迄は、相沢には利用価値が有った筈だ。

それなのに(無茶な)出撃の許可を貰ったのが嬉しかったのか、鼻歌交じりで自分に告げた言葉を思い出す。


『それじゃあ夕呼先生は待ってる間、当日の中央作戦司令室の弛みっぷりに顔でも顰めてて下さい』


――――アレは もはや元 平凡な訓練兵と言う認識を改めざるを得ない決定的な発言であった。


「まァ……生きて帰って来れたら天然のコーヒーでも淹れてあげようかしら」




……




…………




2001年11月11日 早朝


『到着致しました。大尉』

「んっ? わざわざ有難う。じゃあ君達は下がって貰って構わないよ?」

『ははッ。で、では御武運を』

「成るべく早く戻って来る様にはするから宜しくね」


横浜基地を数人の同伴者と共に輸送車で出発した僕は、撃震の内部で待つ事 数時間。

どうやら目的地の新潟に到着した様で、先ず輸送車を第三防衛ラインに迄 下がらせるように指示させた。

対して僕は撃震で海沿い付近までやってくると、平地で機体を跪かせ両手の支援突撃砲を海の方へと向ける。


≪――――ズシンッ≫


「うん。反応速度・出力共にデータ上では最適ってところかな?」


尚 単機だけど僕の機体のポジションは砲撃支援のインパクト・ガードに近い。

装備が支援突撃砲+長刀では無く、支援突撃砲が2丁に変わってるけどね。

さて実戦となれば弾倉の無駄遣いは一発もする気は無いし、僅かな節約が月の制圧を僅かでも安易にする。

だとすれば……そろそろ初のTASと言う"能力"の発動とゆこうじゃないか。

嵐の前の静けさと言える長い沈黙の中、僕は以前に能力の一部を使った時の事を考える。

門兵に対しての件・シミュレーターの件・御剣君に魅せた技の件・投げ飛ばした馬鹿達の件。

どれも大した追記数も無い事から、TAPと言う身体的な影響が其処まで高くは無い能力を使用していた。

だけど"今回"は相場が違う。

抜けるダケだったヴォールク・データと違い、置いて当てて読んで避けて跳んで降りて生きる……負担の連続。

……とは言え命に別状は無く遣り遂げてしまうのがTASと言う能力。

少女の肉体と言う事から無限の体力も無いから限界も有るけど特に問題は無い筈なんだ。


「くくくくっ」


――――それなのに。


「く、くくっ……ッ……ハァッハァッ……くくくくっ……グッ……」


多少の予想はしていたけど、何と言う事だ。

心では分かっていても……僕の少女と言う肉体の精神が、今から始まる阿鼻叫喚を受容 出来ていない。

ヴォールク・データでは命の危険性は無いし大丈夫だったみたいだけど、実戦となれば違うのか。

これは参ったなァ。

勝手に呼吸が荒くなり・歯はカチカチと鳴り・ダラダラと汗が止まらない。

思えば僕の特徴とも言える笑い方も、何故か遣ってれば多少は緊張が抑えられるからって言うのが大きかった。

だけど流石に5000ものBETAが迫ってるって成ると何の意味も持たないみたいだね。


≪――――ブツッ≫


「……痛ッ……うぅ……くくくくっ……はぁ、はぁ、はぁーーーーっ……」


よって僕は躊躇する事 無く薬物を注入。

激しい動悸をクスリによって治め、深呼吸しつつ間もなく迫って来るBETAを待ち続ける。

そして……地平線を眺める事 更に数分。

唐突に出現したBETAを万全な状態で捕捉した艦隊の砲撃音が遠くから鳴り響いたと思うと同時に。

姿は まだ僅かにしか確認できないが、突撃級の接近による地響きが鳴り響いて来た。


≪ドドドドドドドド……ッ!!!!≫


「くくくくっ。容赦はしないよ?」


間もなく支援突撃砲の射程内では無く"飛距離内"と言う事で僕は能力を発動させる。

だけど"容赦はしないよ"と言うコトバと、その直前の笑みとの間に既に準備は終了したといっても言い。

反面 其の一瞬の間に数え切れない追記が繰り返され、何万もの違う僕が犠牲に成ったとは述べて置こう。

さて僕は列を作って突っ込んでくる突撃級が支援突撃砲のロック距離に入る前にトリガーを引いた。


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


「…………」


≪ズドドドドドドドドォ……ッ!!!!≫


その"置かれた"一発一発は丁度 一体一体の突撃級の進行方向と被り、全てが足元に吸い込まれてゆく。

対して弱点の一部を狙われた突撃級はヘッドスライディングする個体・ダイレクトに横転する個体。

更には余りにも綺麗に入った為かカラダが僅かに宙に浮き、仰向けに転がる突撃級までもが出て来る。

そう陣形を崩すのも計算通りであり、各突撃級を押しのけて接近してくる同種を更に射程外から狙撃。


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


「照準内」


≪ドドドドドドドド……ッ!!≫


突撃級の右・左の前足に36ミリを命中させ左右に突撃級を転がして移動の制限を重ねて掛けて行く。

だけど敵の物量は圧倒的で早くも射程内に突撃級が接近し、此方を目指して突き進んでくる。

対して僕は未だに"その場"から動く事無く、突撃級の前足を狙い全て最短の射撃間隔で弾丸を命中させる。


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


「…………」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


「ぐっ……」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


そんな僕は歯を食いしばっており、何度も連鎖する連射の反動で肉体に負担が掛かって来ている。

しかし射撃を緩める事は無くトリガーをミリ単位で操作し、狙撃を継続して接近する突撃級を転がしてゆく。

もう300発は撃っただろうか? 残弾数を見る限り間違い無いけど、それでもBETAの数は減らない。

よって全弾を弱点に命中させているとは言え、既に数体の突撃級が僕の機体の傍まで接近して来ている。


「……!!」


≪ダアアァァンッ!!!!≫


だが僕は依然として撃震を跪かせたままだったけど、直撃を受ける寸前に手前の突撃級の前足を狙う。

それにより"その突撃級"も加速の反動で宙に浮き……撃震の頭上のスレスレを通って背後に仰向け着地。

一方 既に僕は機体を立ち上がらせており、左右に軽く反復して更なる突進をスレスレで避ける。


「行かせないよ」


≪ダダンッ!! ダダンッ!! ダダンッ! ダダンッ!!≫


けど安易に通す気は無く、更なる荒技。

可動兵装担架システムによる、もう一丁の支援突撃砲の補助攻撃で"抜けた"突撃級の背後から狙撃させる事で。

36ミリを紙装甲である背後から受けた突撃級は、その場で悶えて地面に転がる。

また正面から接近してくる突撃級は未だに両手の銃で迎え撃っており、間に合わない場合は反復して避ける。

この繰り返しにより僕は向かってくる突撃級の殆どを一切 宙に飛ばずに単機で捌いていた。

有難う"いちいち振り返って命中を確認した"何万人もの違う時間軸の撃震に乗る僕達。

さて流石に隊列が広過ぎて全ての突撃級の標的にはされて無かったけど、それは戦術機の限界とも言える。

僕の機体を狙わずに素通りしてようと、背の支援突撃砲の射程範囲内なら出来る限り当ててるけどね。


「……ッ……」


≪ダダンッ!! ダダンッ!! ダダンッ! ダダンッ!!≫


「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……」


≪ダダンッ!! ダダンッ!! ダダンッ! ダダンッ!!≫


「まだまだッ」


≪ダダンッ!! ダダンッ!! ダダンッ! ダダンッ!!≫


「ラストかな」


残弾が1400と1800に減った辺りで向かって来た突撃級は全て無力化する事が出来た。

死んではいないみたいだけど、もうマトモに動く事は無理だろうしTASのクリティカルに抜かりは無い。

よって後に帝国軍に蹂躙されるだろうと考え、僕は更なる迎撃の為に撃震を操り地面スレスレを匍匐飛行。

リアルで遣ったら躓いて爆死する可能性が極めて高いけど、僕がそんなミスをする事は有りえない。

……そんな僕の機体の次の相手と思われるのは、今回でも主力だと見て間違い無い要撃級。

匍匐飛行で距離を詰めている今、既に視界にも入っているし間もなく接触するだろう。

しかし要撃級全てを相手にしては機体を持たせるのは まず不可能な以前に僕の獲物は他に有るんだ。

つまりコイツ等は無視することにし、最も手前の要撃級の前腕に接触する寸前で撃震の高度を上げ回避する。


≪――――ブワァッ!!!!≫


「くくくくっ。撃ってみなよ」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「ひょいっと」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「くくくくっ。それじゃ自分で位置を教えている様なモノだよ? いや撃った瞬間に君達は死んでるけど」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「其処にも居たんだったね」


≪ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「ようやく片付いたか」


獲物とは勿論レーザー級。

数は200は下らず その真っ只中で跳ぶなんて自殺行為だけど、僕の機体が被弾する事は有りえない。

何万もの追記により未来の分かる僕の機体は、レーザーが放たれる直前には既に軌道から動いているんだ。

つまり光線級が何処に居るかも全て分かっているので、敵より先に射撃してからレーザーを避けている僕。

それを2発撃ってから2本避ける・3発撃ってから3本避ける等 状況に応じた対応をしてBETAを翻弄。

XM3の恩恵により空中で"その動作"が可能になっており、最低限しか動いていないので機体の負担も少ない。

さて50回ほどの回避行動の間に挟んだ200発前後の"置き撃ち"で小さい方を全滅させた僕はと言うと。


≪――――チャキッ≫


「次は君達だ」


≪キイイイイィィィィン……≫


"大きい方"のレーザー級に匍匐飛行で接近しつつ、両手の支援突撃砲とサブアームの支援突撃砲を向ける。

要は2丁の支援突撃砲で"重レーザー級"を狙っているのであり、その数は合計で10体程である。

だけど距離が離れ過ぎしまっては威力の関係で無駄弾を使ってしまう為に、節約の為に近付いているんだ。

尚 両手の支援突撃砲はデカブツの足を狙っており、サブアームの支援突撃砲は弱点の照射粘膜を以下同文。

そんな中 追記により"保護膜を確実に36ミリで貫ける距離"まで接近した直後。

長いインターバル中で射撃が出来ないデカブツに、僕はトリガーを僅かな時間差で2回引いた。


「ひとつ」


≪ダダァンッ!!!! ダダァンッ!!!!≫


「ふたつ」


≪ダダァンッ!!!! ダダァンッ!!!!≫


「みっつ」


≪ダダァンッ!!!! ダダァンッ!!!!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「無駄ッ」


僕の一度の2発×2回の狙撃により、重レーザー級は地面に倒れ周囲の小型・中型種を巻き込んでいる。

ちなみに4発全てを照射粘膜では無く2発は足を狙ったのは、転倒させる向きをコントロールする為。

そうすれば無駄弾を使わずに更に多くのBETAを倒せるしで一石二鳥ってワケさ。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」


≪ダダァンッ!!!! ダダァンッ!!!!≫


「ラスト」


≪ダダァンッ!!!! ダダァンッ!!!!≫


【レーザー警報】


≪――――カッ!!!!≫


「遅いね」
 

さて全ての光線級の撃破で制空権を得た僕が、能力を解いてチラりと陸に目を移すと。

1000は下らないBETAが犇いて素敵な事に成っており、別の僕が悲鳴を上げている事が分かった。

今や危険性は皆無なんだけど……能力を切ってしまうと此処まで抑制が出来なくなってしまうのか。

でも要塞級なんて初めて見たら恐れるのも仕方無いだろうし、限界が来る前に離脱する事にしよう。

よって僕は顔を顰めつつTAP能力に切り替え、低空飛行で触手を避けつつ出来る限りのBETAを集めると。

再び高度を上げて無理を言って持たせて貰った"S-11"をBETA群の中央……要塞級の辺りに投下した。


「任務完了。帰還する」


≪――――ズガアアアアァァァンッ!!!!≫


「ふぅッ、ふぅッ、ふぅッ、ふぅッ」


≪キイイイイィィィィン……≫


「……ぅッ……――――ッ……っと危ない危ない。家に帰るまでが遠足ってね」


トドメの一発により全体の6割程のBETAを殲滅した僕は、輸送車の待つ場所へと向かう事にした。

その際 危うく意識を喪失しかけてしまったが、体力はギリギリ残してある為 何とか僕は持ってくれるだろう。

だけど思ったより多少 夕呼先生は僕の事を気に掛けてくれた様で、帰還の途中 見知った機体が目に入った。


「おや? その国連軍の不知火……もしかして伊隅君達かい?」

『あ、あァ。此方A-01の伊隅だ。其方は相沢大尉だな? 我々は香月副司令の命で警戒に当たっていた』

「丁度良かった。それなら助けてくれないか? 哨戒中にBETAに襲われて逃げるのがやっとだったんだ」

『だとすれば……先程の爆発は?』

「機密なので詳しくは話せないが、イタチの最後っ屁と言うヤツさ」

『そ……そうか。ともかくBETAと接触次第 交戦せよとの指示だ。後は任せて置いてくれ』

「それは頼もしい限りだね。其処まで数は多くは無いと思うから、一人も死んではダメだよ?」

『貴女に言われる迄も無い。それよりも顔色が悪いぞ? 大丈夫なのか?』

「床に就くまでは持たせる様にするさ」

『無粋な心配だったか。では生きていたら また会おう』

「くくくくっ。楽しみにしているよ?」


≪――――プツンッ≫


『……速瀬』

『何ですか~? 大尉』

『彼女は何故"向こう"から戻って来たのか、何か思う所は有るか?』

『えぇ~っ? えっと……自分以外の部隊が全滅して逃げて来たとか?』

『涼宮は?』

『その……相沢大尉の仰った通りBETAを確認し次第 一目散に引いて来たとしか』

『妥当な考えだな』

『だったら大尉は どう御考えで~?』

『正直な所 私にも全く分からん。だが先程の機体は明らかに匍匐飛行するにしては高度が有り過ぎた』

『!?!?』

『ひょっとするとだが……今 横浜基地には とんでもない衛士が存在しているのかもしれんな』

『……っとォ大尉ッ! 敵さんのオデマシですよ!?』

『ヴァルキリーマムより各機へ。要撃級が接近中。距離1000。数は約100前後です』

『ふむ。思ったよりも少ない様だな……では全機・兵器使用自由!! 行くぞッ!』

『了解!!』


――――後日 僕はA-01が大した被害も無くBETAの鹵獲作戦を終えたと言う事を知るのだった。




……




…………




……数時間後。


「ふぅ~っ」


≪――――コツッ≫


「それでは皆。機体のメンテナンスは任せたからね?」

『ははっ!』


何とか輸送車まで辿り着いた僕は能力を過剰に使用した疲労により、暫くの間 撃震の中で眠っていたけど。

横浜基地に到着すると同伴者に起こされた為、機体を操縦してハンガーに収めるとコックピットの外に出る。

だけど一応 大尉と言う事で"しんどさ"を顔に出す事も無く、整備兵達に声を掛けると その場を歩き去った。

そして眩暈を感じつつ何とか強化装備から軍服に着替えると……重い足を引き摺る様にして自室を目指す。

当然 奇襲に備えて気を張っているのも何時もと同じなので、歩いているダケに見えて僕の体はガタガタだ。

でも計算によれば特に問題も無く僕は自室まで辿り着いて、直ぐ様 泥のように眠る事が出来る筈なんだ。

余計なイベントが発動しても困るし其の為に誕生日は11月11日で無く1月11日に変えたと言うのに……


「!? ……亜衣ッ!」

「……ぇッ……」

「良かった~っ! 無事に戻って来たんだな!?」

「し、白銀君……?」

「全く何で黙ってたんだよッ? 夕呼先生から"一人で出撃した"って聞いた時はマジ驚いたんだぜ!?」

「ご……ごめん」

「謝って済んだら警察なんて要らね~って! ともかく。無茶な事すんだったら絶対 先に知らせろよ?」

「…………」


まさかの主人公が登場だ。何か切羽詰った顔をしているけど、僕を心配して待ってくれていたのか?

大方 僕の姿が見えない事を白銀君が気にして、その理由を夕呼先生に聞いた為に察したんだろうが……

僕にとっては夕呼先生が"答えた"のも白銀君が此処まで心配したのも予想外だったを言わざるを得ない。

いや それ以前に……もう僕の体力が持たないんだけど……此処は読み間違えた僕の負けとして置こう。

よって仕方なく彼の言葉に笑みを浮かべつつ、僕は無言で左肩の階級証を右手人差し指でトントンと叩いた。


「ぅげっ!? い、イェッサーッ!! 御無事で何よりです大尉殿ォ!!」

「くくくくっ。よろしい。それでは……白銀訓練兵に僕からの命令だ」

「へっ? 命令? それより何かオマエ顔色が悪いんじゃ……」

「……ぅッ……」


≪――――どさっ≫


「うぉっ!? い、いきなり倒れ掛かっちまって……どうしたんだよ? 亜衣ッ!」

「……実を言うと……もう立ってるのも限界なんだ……悪いけど僕を部屋まで運んでくれないか……?」

「だけど――――って気絶しちまったのかよ!?」

「…………」

「仕方無ぇなァ……おぶってってやるから感謝しろ。それと御疲れ様でした~っと」

「すぅ……すぅ……」


――――生憎 意識を失ってからの事は覚えていないけど、きっと僕の寝顔は幸せそうだったんだろう。




■ブログ用■
一ヶ月ほど前に理想郷に投稿:記事3 感想30 Pv20685 (08月25日現在)
理想郷が非常に重い時期に投稿したのでタイミングが悪く読んでくれた方は少なかったと思います。
私はTASさんをマブラヴで動かすに当たって、現実味を尊重し露骨な乱数調整の行動はさせてません。
何せ本来アドベンチャーですしスタミナ等有りますしツールのノウハウを全て反映させるのはほぼ不可能。
ですが一発ネタと言う事で、TASらしく変態チックな動きで無双させる方がウケが良かったのかもです。
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コメント 2

NO NAME

自作小説の部屋
ttp://www002.upp.so-net.ne.jp/shinjigate/jisaku-ss.htm
のリンクに後編がないのでリンクを追加するといいと思います。
前半しか読めなくて打ち切りかと思ってしまったので。
by NO NAME (2014-05-31 23:42) 

Shinji

ご指摘ありがとう御座います。
一応当ブログに飛んだ後、前編のラストに後半のリンクが
ありますので特に問題はないと思っております。
しかし若干分かりにくいので次の更新の参考にさせて頂きますね。
by Shinji (2014-06-06 02:24) 

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