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また、2021/10/27に旧HPのリンクが再び変更されました。[こちら]から飛んで下さい。
歩みを進め始めてから数キロ、ランス一行は悪魔の群れと戦闘していた。
種族は凶鳥、名前はフリアイ。
上半身は女性の姿だが、ランスの守備範囲ではないようで、ソードを片手に叫ぶ。
「鳥の化け物が出たぞ! マリス、リア、撃ち落とせ!!」
「はい!」
「えいっ!」
≪ズダンッ、ズダンッ、ズダァァンッ!!≫
命令により、デザートイーグルを発砲する二人。
3時間ほど前までは全く使用方法がわからなかったが、
歩みながらリアが弄って遊ぶ中、間違えて発砲し、はじめて武器と判明。
そしてマリスが自分なり分析した結果、元の世界ではありえない威力と使い易さをほこるものと判った。
よって魔法を使えなくなったマリスとリアも戦う事ができ、空を飛んでいるフリアイに攻撃できないランスを援護した。
『ピギイイィィッ!!』
「あっけないですね……」
「凄い武器だねぇ、これ……」
マリスは片手で、リアは両手で狙いを定めてでの発砲。
一発一発を確実に命中させる事はできないが、
一発命中しただけでフリアイの肉は弾け飛び、地面へと転がった。
そして起き上がろうとした時に、ランスが素早く止めをさした。
こうして、数度目の戦闘が終ると、ランスは死体を踏んで溜息を漏らす。
「……ったく、見た事も無いモンスターばかりではないか」
「殆どのモンスターはランス王が倒されていましたが、
そのモンスターは、この遠距離武器が無ければゾッとしますね」
「ダーリン、リアの活躍見てくれたぁ~?」
「アホか、そんなデタラメなもん使ったら誰だって強いだろうが!」
「ぶぅ……」
発砲するだけでは疲労はたまらないが、ランスは白兵戦なので疲れる。
今のフリアイと最初のコカトライス以外にも、ランスは3体ほど一人で、なんとか悪魔を倒していたのだ。
ついさっき使用方法が判明したデザートイーグルをランスも使ってみたかったが、
マリスは左肩が石になっており、リアは非力なのでしぶしぶソードで我慢する。
「しかし疲れたな……休む場所はまだか?」
「段々と周りの建築物の残骸が多くなっている気がしますが……」
「リアはまだ平気だよぉ?」
「そりゃそうだろ、俺様の戦いとマリスの肩を見てみやがれ」
「何よぉ、リアだって頑張ってるのに~!」
倒した悪魔はたいした数ではないが、疲れが見えるランス。
それもその筈、元の世界のレベルなどは"こちら"では適用されていない。
また、ランスは遭遇した悪魔は全て本気で斬り伏せていた。
防具が何も無い事もあるし、攻撃らしい攻撃をされる前に倒す必要がある。
自分がマリスのようになってしまえば、全滅の可能性も考えられるからだ。
「まぁいい、俺様の予想では、回復ポイントは直ぐ其処だからな」
「わかるのですか?」
「いや、知らん! 俺様が決めたのだ、無かったら困るからなッ!」
「(本当に、根拠のない事を言うお人ね……でも……)」
今回の件で、マリスはランスのことをかなり見直した。
もしあそこでランスが来なければ確実に殺されていたし、
今前衛として戦ってくれていると言う事は、自分達の為でもあるのだ。
結果、命よりも大切なリアを守ることにも繋がっている。
「あ~もう、纏わりつくな! 体力使うだろうが~!」
「休めるところ近いんでしょぉ? だったら良いも~ん!」
「(何時もと変わらない様に見えますが、やはりリア様を、大切にしてくださっているのですね……)」
夫婦漫才をしているランスとリアの後ろを歩きながら、思うマリス。
こちらへ来た直後はリアの命の危険性で不安 極まり無かったが、
こう楽しそうなリアを見ていると、くすりと笑みが浮かんできた。
元の世界のランスは、美女美少女揃いのハーレムを持ち、
その人数も物凄いので、リアがランスに抱いてもらえるのは月に1、2回程度が良いところ。
公の場ではランスの横に居るのは常にリアだが、このようなやり取りでさえ最近めっきり少なかった。
「ぜぇぜぇ……んっ?」
「あっ……」
「おぉ! 人通りが目立ち始めたではないか!」
「も、もしかして街に着いたのッ?」
「がははははッ! やはり俺様のカンが当たったか!!」
「ダ~リンすっごーーい!!」
そんな中、歩く十数分。
運よく人がまばらに見え始め、何時の間にかランス達は人混みの中に居た。
どうやら、街に着いたのであろう。一安心したか、調子に乗るランス。
その彼の馬鹿笑いにリアも感染し、二人はマリスに振り返ろうとしたその時……
「良かった……」
≪――――ドサッ!!≫
「うぉっ、どうしたッ?」
「ま、マリス~!?」
糸が切れたように、その場に崩れ落ちるマリス。
実を言うと、彼女の疲労は限界に来ていた。
左肩はただ動かないだけでなく、重さにより歩いているだけで疲労が嵩み、
2時間も経った時には既に、何時倒れても可笑しくなかった。
それを更に1時間以上も我慢していたのだから、
ランスとリアに余計な心配と負担を掛けたくないと心底思っていたのだ。
マリスは、振り返った二人が何か叫んで近寄ってくるのを見上げながら、瞳を閉じた。
……
…………
……数時間後。
ランスがやって来た"新宿"は、地下に広がっている街であり、
その地下街にランスはマリスをおぶって侵入した。
そして治療できる場所はないかと近くに居た男に強引に聞き出し、
メシア教会という場所を訪れたが、何故か門前払い。
"属性が違う"と訳の判らない事を言われ、激怒したランスは、
マリスを放り出さん勢いで神官に問い詰めたが、リアに止められて留まる。
だが、喉元にセラミックソードを突きつけてお聞きしてみると、
街の外れに"どんな属性でも治療してくれる場所"があると言うので其処へ向かった。
「ふむ……少々危ういところだったが、なんとかなるだろう」
「"なんとかなるだろう"じゃねえ、"なんとかなる"だろ?
そいつは俺様の女だからな、しくじりやがったら覚悟しとけよ?」
「わ、わかっている。」
「マリス、大丈夫かなぁ?」
「ふん、俺様が一晩中犯っても、次の日にゃピンピン仕事してる奴だぞ? そんな女が簡単にくたばる筈が有るか」
その場所とは、回復道場。
其処の道場主は、情報の通りランスたちを迎い入れると、
意識の無いマリスをすぐさま別室のベットに寝かし、容態を確認した。
直後ランスに脅迫されるが、治療を開始するようで道場主はマリスの肩に手を当てる。
そして魔力を集め始めると、聞いたことも無い呪文を唱えた。
「はぁぁっ……ペトラディ」
≪フィィィン……≫
「あっ! ダーリン、見て見てっ!」
「ふん、やるではないか」
唱えた魔法はペトラディ。
この世界では、石化された状態を治療する魔法である。
すると、みるみるうちにマリスの左肩の色が変わってゆく。
……だが、治った直後に出血し、道場主は傍に居た巫女に声を掛ける。
ちなみに、巫女といっても彼の妻のようで、30か40歳の間辺りだろう。
もちろん、ランスの守備範囲に入っている女性ではなかった。
「……頼む」
「えぇ……ディア」
≪キュィィィン……≫
「それでは、後は任せる」
「わかりました……お客様、一旦魔法で止血をしたので、
上の服を脱がすのを手伝ってください、それから本格的な治療を行います」
「う、うんっ」
「…………」(仁王立ちランス)
「そちらのお客様は席を外して頂けませんか?」
「断る! そいつは俺様の女だ、なのに何故席を外す必要がある?」
「はぁ、それなら良いのですが……(今日は変なお客が来たわね)」
「(ぐふふ、こいつの苦しそうな顔や寝顔は滅多に見れるもんじゃないしな、
じっくり拝んでおくべきだな……カメラがあれば写真をリックに売るんだが)」
巫女は、回復魔法"ディア"を使うとリアと共にマリスの上着を脱がす。
リアはマリスの意識を取り戻そうと、柄にも無く、一生懸命"お手伝い"というものを行っている。
一方、ランスはマリスの乳房がご開帳するまでの、
上半身のストリップを、鼻の下を伸ばしながら眺めていた。
……
…………
「では、5000マッカになる」
「なんだ? そりゃ」
「なにそれ~?」
「な、"なんだそれ"は無いだろッ? 傷を治すのに掛かった代金だ」
「へぇ、マッカってお金の単位なのー?」
「なんだとぉ? 貴様、この俺様から金を取るというのかッ!?」
「……って、ダーリン! マリスを治してくれたんだから、お金払おうよぉ」
数十分後、マリスの治療は成功したようで、彼女は眠りについている。
ランスとリアは始めに入った広間に案内され、
ちゃぶ台を挟んでお茶を馳走になっていたが、料金の事を言われ、
ランスはちゃぶ台をひっくり返さん勢いで道場主をにらみつけた。
その行動にリアは、ランスの腰に抱きついて止めようとする。
見る限りでは、昼ドラのダメ若旦那と若妻、そして恐怖する旦那の父に見える。
実はランス、最初から代金を踏み倒すつもりだったのであるが、
乗る予定のリアが、マリスを助けてくれた事に恩を感じてしまったのが誤算であった。
「客人達……お主ら、まさか金を持っていないのか?」
「ふん、バレちまったらしょうがねぇ! 一文無しだ、悪かったな!」
≪――――ふんぞりっ!≫
「(こ、こいつ一体何様のつもりなんだ……
確かに私の店が高いと言う事は周知の事実なのだが……)
むぅぅ……しかし……お主、見ない顔だな」
「そりゃそうだ、さっき……なんだっけ?」
「新宿だよダーリン」
「そうそう、新宿に来たばかりだからな」
「だとすると、何処から来たんだ? 銀座か? 品川か?」
「はぁ?(……わけわからんが、ここは話をあわせるか)
俺様はな……ギンザ、ギンザだ……銀座から来た」
「そうか、銀座か! だったらお主ら、一仕事してゆかぬか?」
「仕事だとぉ?」
「うむ、お主は"デビルサマナー"だろう?
丁度隣の"邪教の館"の主が、サマナーに頼みたい事があった様だしな」
「デビルサマナーだとぉ?」
だとすると、開き直るしかない。
後でリアにはお仕置きだと考えつつ、ふんぞり返って胸を突き出すランス。
その強引さに圧倒される道場主だったが、ランスの左腕を見て気付いた。
この男は、かの有名な"悪魔召喚師"であるのだと言う事を。
対するランスは……この機械が何だという事さえわかっていないのだが。
「その左腕のものはアームターミナルだろう? それが証拠だ」
「んんっ?(何言ってんだ、コイツは? 訳がわからん)」
「(ねぇ……ダーリン、良くわからないけど、一応あわせたほ~が良いんじゃないかなぁ?)」
「(そうだな……)あぁ、そうだそうだ、俺様はデビルサマナーだ、がはははは」
「なら話は早い! "邪教の館"の主にはサマナーの紹介料として、
5000マッカを出すと言っていたからな、それで手を打つ事にしよう。
勿論、報酬は別に用意されているのは間違いないだろう」
「ほぅ、それなら紹介されてやろう、俺様の寛大な心に感謝するが良い」
「頼んだぞ、邪教の館はここを出て直ぐ左だ」
「よし……行くぞ、リア」
「まっ、待ってダ~リン!」
「おい親父、マリスに手を出しやがったら殺すからな」
≪スタスタスタ……≫
「あ、あの男……きっと凄腕のデビルサマナーなんだろうな……」
そんな訳で、ランスは成り行きで仕事を行う事になってしまった。
マリスの治療費を稼ぐだけならもっと簡単な方法を考えたかったが、報酬が別にあるのであれば、話は別だった。
勝手に自分を勘違いし、道場主見る目が変わった事に気を良くしたか、
ランスは立ち上がると外に出てゆき、慌ててリアがその後を追った。
そして残された道場主は……やはりランスのことを勘違いしているのだった。
目次
管理人に用事がおありの方は、[Pixiv]や[Twitter]で直接連絡をお願い致します。
また、2021/10/27に旧HPのリンクが再び変更されました。[こちら]から飛んで下さい。
第一部:第02話【新宿】 [鬼畜召喚師ランス]
歩みを進め始めてから数キロ、ランス一行は悪魔の群れと戦闘していた。
種族は凶鳥、名前はフリアイ。
上半身は女性の姿だが、ランスの守備範囲ではないようで、ソードを片手に叫ぶ。
「鳥の化け物が出たぞ! マリス、リア、撃ち落とせ!!」
「はい!」
「えいっ!」
≪ズダンッ、ズダンッ、ズダァァンッ!!≫
命令により、デザートイーグルを発砲する二人。
3時間ほど前までは全く使用方法がわからなかったが、
歩みながらリアが弄って遊ぶ中、間違えて発砲し、はじめて武器と判明。
そしてマリスが自分なり分析した結果、元の世界ではありえない威力と使い易さをほこるものと判った。
よって魔法を使えなくなったマリスとリアも戦う事ができ、空を飛んでいるフリアイに攻撃できないランスを援護した。
『ピギイイィィッ!!』
「あっけないですね……」
「凄い武器だねぇ、これ……」
マリスは片手で、リアは両手で狙いを定めてでの発砲。
一発一発を確実に命中させる事はできないが、
一発命中しただけでフリアイの肉は弾け飛び、地面へと転がった。
そして起き上がろうとした時に、ランスが素早く止めをさした。
こうして、数度目の戦闘が終ると、ランスは死体を踏んで溜息を漏らす。
「……ったく、見た事も無いモンスターばかりではないか」
「殆どのモンスターはランス王が倒されていましたが、
そのモンスターは、この遠距離武器が無ければゾッとしますね」
「ダーリン、リアの活躍見てくれたぁ~?」
「アホか、そんなデタラメなもん使ったら誰だって強いだろうが!」
「ぶぅ……」
発砲するだけでは疲労はたまらないが、ランスは白兵戦なので疲れる。
今のフリアイと最初のコカトライス以外にも、ランスは3体ほど一人で、なんとか悪魔を倒していたのだ。
ついさっき使用方法が判明したデザートイーグルをランスも使ってみたかったが、
マリスは左肩が石になっており、リアは非力なのでしぶしぶソードで我慢する。
「しかし疲れたな……休む場所はまだか?」
「段々と周りの建築物の残骸が多くなっている気がしますが……」
「リアはまだ平気だよぉ?」
「そりゃそうだろ、俺様の戦いとマリスの肩を見てみやがれ」
「何よぉ、リアだって頑張ってるのに~!」
倒した悪魔はたいした数ではないが、疲れが見えるランス。
それもその筈、元の世界のレベルなどは"こちら"では適用されていない。
また、ランスは遭遇した悪魔は全て本気で斬り伏せていた。
防具が何も無い事もあるし、攻撃らしい攻撃をされる前に倒す必要がある。
自分がマリスのようになってしまえば、全滅の可能性も考えられるからだ。
「まぁいい、俺様の予想では、回復ポイントは直ぐ其処だからな」
「わかるのですか?」
「いや、知らん! 俺様が決めたのだ、無かったら困るからなッ!」
「(本当に、根拠のない事を言うお人ね……でも……)」
今回の件で、マリスはランスのことをかなり見直した。
もしあそこでランスが来なければ確実に殺されていたし、
今前衛として戦ってくれていると言う事は、自分達の為でもあるのだ。
結果、命よりも大切なリアを守ることにも繋がっている。
「あ~もう、纏わりつくな! 体力使うだろうが~!」
「休めるところ近いんでしょぉ? だったら良いも~ん!」
「(何時もと変わらない様に見えますが、やはりリア様を、大切にしてくださっているのですね……)」
夫婦漫才をしているランスとリアの後ろを歩きながら、思うマリス。
こちらへ来た直後はリアの命の危険性で不安 極まり無かったが、
こう楽しそうなリアを見ていると、くすりと笑みが浮かんできた。
元の世界のランスは、美女美少女揃いのハーレムを持ち、
その人数も物凄いので、リアがランスに抱いてもらえるのは月に1、2回程度が良いところ。
公の場ではランスの横に居るのは常にリアだが、このようなやり取りでさえ最近めっきり少なかった。
「ぜぇぜぇ……んっ?」
「あっ……」
「おぉ! 人通りが目立ち始めたではないか!」
「も、もしかして街に着いたのッ?」
「がははははッ! やはり俺様のカンが当たったか!!」
「ダ~リンすっごーーい!!」
そんな中、歩く十数分。
運よく人がまばらに見え始め、何時の間にかランス達は人混みの中に居た。
どうやら、街に着いたのであろう。一安心したか、調子に乗るランス。
その彼の馬鹿笑いにリアも感染し、二人はマリスに振り返ろうとしたその時……
「良かった……」
≪――――ドサッ!!≫
「うぉっ、どうしたッ?」
「ま、マリス~!?」
糸が切れたように、その場に崩れ落ちるマリス。
実を言うと、彼女の疲労は限界に来ていた。
左肩はただ動かないだけでなく、重さにより歩いているだけで疲労が嵩み、
2時間も経った時には既に、何時倒れても可笑しくなかった。
それを更に1時間以上も我慢していたのだから、
ランスとリアに余計な心配と負担を掛けたくないと心底思っていたのだ。
マリスは、振り返った二人が何か叫んで近寄ってくるのを見上げながら、瞳を閉じた。
……
…………
……数時間後。
ランスがやって来た"新宿"は、地下に広がっている街であり、
その地下街にランスはマリスをおぶって侵入した。
そして治療できる場所はないかと近くに居た男に強引に聞き出し、
メシア教会という場所を訪れたが、何故か門前払い。
"属性が違う"と訳の判らない事を言われ、激怒したランスは、
マリスを放り出さん勢いで神官に問い詰めたが、リアに止められて留まる。
だが、喉元にセラミックソードを突きつけてお聞きしてみると、
街の外れに"どんな属性でも治療してくれる場所"があると言うので其処へ向かった。
「ふむ……少々危ういところだったが、なんとかなるだろう」
「"なんとかなるだろう"じゃねえ、"なんとかなる"だろ?
そいつは俺様の女だからな、しくじりやがったら覚悟しとけよ?」
「わ、わかっている。」
「マリス、大丈夫かなぁ?」
「ふん、俺様が一晩中犯っても、次の日にゃピンピン仕事してる奴だぞ? そんな女が簡単にくたばる筈が有るか」
その場所とは、回復道場。
其処の道場主は、情報の通りランスたちを迎い入れると、
意識の無いマリスをすぐさま別室のベットに寝かし、容態を確認した。
直後ランスに脅迫されるが、治療を開始するようで道場主はマリスの肩に手を当てる。
そして魔力を集め始めると、聞いたことも無い呪文を唱えた。
「はぁぁっ……ペトラディ」
≪フィィィン……≫
「あっ! ダーリン、見て見てっ!」
「ふん、やるではないか」
唱えた魔法はペトラディ。
この世界では、石化された状態を治療する魔法である。
すると、みるみるうちにマリスの左肩の色が変わってゆく。
……だが、治った直後に出血し、道場主は傍に居た巫女に声を掛ける。
ちなみに、巫女といっても彼の妻のようで、30か40歳の間辺りだろう。
もちろん、ランスの守備範囲に入っている女性ではなかった。
「……頼む」
「えぇ……ディア」
≪キュィィィン……≫
「それでは、後は任せる」
「わかりました……お客様、一旦魔法で止血をしたので、
上の服を脱がすのを手伝ってください、それから本格的な治療を行います」
「う、うんっ」
「…………」(仁王立ちランス)
「そちらのお客様は席を外して頂けませんか?」
「断る! そいつは俺様の女だ、なのに何故席を外す必要がある?」
「はぁ、それなら良いのですが……(今日は変なお客が来たわね)」
「(ぐふふ、こいつの苦しそうな顔や寝顔は滅多に見れるもんじゃないしな、
じっくり拝んでおくべきだな……カメラがあれば写真をリックに売るんだが)」
巫女は、回復魔法"ディア"を使うとリアと共にマリスの上着を脱がす。
リアはマリスの意識を取り戻そうと、柄にも無く、一生懸命"お手伝い"というものを行っている。
一方、ランスはマリスの乳房がご開帳するまでの、
上半身のストリップを、鼻の下を伸ばしながら眺めていた。
……
…………
「では、5000マッカになる」
「なんだ? そりゃ」
「なにそれ~?」
「な、"なんだそれ"は無いだろッ? 傷を治すのに掛かった代金だ」
「へぇ、マッカってお金の単位なのー?」
「なんだとぉ? 貴様、この俺様から金を取るというのかッ!?」
「……って、ダーリン! マリスを治してくれたんだから、お金払おうよぉ」
数十分後、マリスの治療は成功したようで、彼女は眠りについている。
ランスとリアは始めに入った広間に案内され、
ちゃぶ台を挟んでお茶を馳走になっていたが、料金の事を言われ、
ランスはちゃぶ台をひっくり返さん勢いで道場主をにらみつけた。
その行動にリアは、ランスの腰に抱きついて止めようとする。
見る限りでは、昼ドラのダメ若旦那と若妻、そして恐怖する旦那の父に見える。
実はランス、最初から代金を踏み倒すつもりだったのであるが、
乗る予定のリアが、マリスを助けてくれた事に恩を感じてしまったのが誤算であった。
「客人達……お主ら、まさか金を持っていないのか?」
「ふん、バレちまったらしょうがねぇ! 一文無しだ、悪かったな!」
≪――――ふんぞりっ!≫
「(こ、こいつ一体何様のつもりなんだ……
確かに私の店が高いと言う事は周知の事実なのだが……)
むぅぅ……しかし……お主、見ない顔だな」
「そりゃそうだ、さっき……なんだっけ?」
「新宿だよダーリン」
「そうそう、新宿に来たばかりだからな」
「だとすると、何処から来たんだ? 銀座か? 品川か?」
「はぁ?(……わけわからんが、ここは話をあわせるか)
俺様はな……ギンザ、ギンザだ……銀座から来た」
「そうか、銀座か! だったらお主ら、一仕事してゆかぬか?」
「仕事だとぉ?」
「うむ、お主は"デビルサマナー"だろう?
丁度隣の"邪教の館"の主が、サマナーに頼みたい事があった様だしな」
「デビルサマナーだとぉ?」
だとすると、開き直るしかない。
後でリアにはお仕置きだと考えつつ、ふんぞり返って胸を突き出すランス。
その強引さに圧倒される道場主だったが、ランスの左腕を見て気付いた。
この男は、かの有名な"悪魔召喚師"であるのだと言う事を。
対するランスは……この機械が何だという事さえわかっていないのだが。
「その左腕のものはアームターミナルだろう? それが証拠だ」
「んんっ?(何言ってんだ、コイツは? 訳がわからん)」
「(ねぇ……ダーリン、良くわからないけど、一応あわせたほ~が良いんじゃないかなぁ?)」
「(そうだな……)あぁ、そうだそうだ、俺様はデビルサマナーだ、がはははは」
「なら話は早い! "邪教の館"の主にはサマナーの紹介料として、
5000マッカを出すと言っていたからな、それで手を打つ事にしよう。
勿論、報酬は別に用意されているのは間違いないだろう」
「ほぅ、それなら紹介されてやろう、俺様の寛大な心に感謝するが良い」
「頼んだぞ、邪教の館はここを出て直ぐ左だ」
「よし……行くぞ、リア」
「まっ、待ってダ~リン!」
「おい親父、マリスに手を出しやがったら殺すからな」
≪スタスタスタ……≫
「あ、あの男……きっと凄腕のデビルサマナーなんだろうな……」
そんな訳で、ランスは成り行きで仕事を行う事になってしまった。
マリスの治療費を稼ぐだけならもっと簡単な方法を考えたかったが、報酬が別にあるのであれば、話は別だった。
勝手に自分を勘違いし、道場主見る目が変わった事に気を良くしたか、
ランスは立ち上がると外に出てゆき、慌ててリアがその後を追った。
そして残された道場主は……やはりランスのことを勘違いしているのだった。
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