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第二部:第02話【獣人】 [鬼畜召喚師ランス]

ランスは夢で聞いた声に従い、仲魔を探しつつ六本木を目指す事にした。




……昼過ぎ。

現在も、ランス達は戦闘の最中(さなか)だった。

相手は8体にもおよぶ小型マシン"ビット・ボール"の群れ。


「(……当てる)」


≪ダキュゥーーン!!≫


『ビガッ!?』


≪……ドゴォォンッ!!≫


マリスがライフル弾を一体のビット・ボールに命中させると、
ビット・ボールは錐揉み回転して吹っ飛び、大破した。

このマシンは素早さが取り柄なのだが、的確にライフルを命中させたあたり、
早くも彼女はライフルの扱いに慣れてしまった様だ。

そんな彼女がガシャリとリロード音を響かせると、
丁度空中でビット・ボールを破壊し終えたエンジェルナイトが地面に着地した。


≪トッ……≫


『ご主人様、これで全てのようですね』

「ふん、鬱陶しいポンコツどもだったな」

『強くは無いが、"面倒"と言うべきか』

「それにしてもぉ……なかなか、仲魔になってくれそうな悪魔、出てきてくれないね~」

「そういや何時間も、頭の悪ぃ悪魔ばっかだな……」

「確かに、交渉ができない"ダーク悪魔"ばかりですね……ですが、
 もう少しで荒野を抜けると思うので、そうすれば話のわかる悪魔が出る可能性も上がるかと」


再度出発してから3時間は経っているものの、荒野に出現する悪魔は、
"邪龍"や"凶鳥"……そして"マシン"が大部分を占めていた。

人間があまり寄り付かない荒野だけあって、
獰猛な性格の悪魔が多く、会話にならないパターンが多かったのだ。

その上、数だけは達者であり、群れを成す編成が多い。

救いなのは、ワームやビット・ボールのように群れを成す悪魔達は、
個々には大した強さが無く、逆に"魔獣タムズ"のような、
レベルが若干高めである悪魔は、集団で襲って来ないという事だ。

……ちなみに、上記はマリスが考えていた事であったが、
ランスはそんな柔軟に物事を考えられる筈も無く、少し機嫌が悪そうだった。

だが、何処を見ていたのか、ふと彼の表情が突然一変した!


「――――むむっ!?」

「ダーリン?」

「ランスさん?」

「なんだか、あっちで俺様に助けを呼ぶ声がするぜっ!」

『何? そんな声は聞こえんが――――』

「こうしちゃおれん! 行くぞぉぉ~っ!!」


≪だだだだっ!!≫


『お、お待ちくださぁ~い!』


元の世界でも、ランスは他の皆が気付かないのに、何かを探し出すのが得意だった。

その対象はもちろん"♀"なのだが、その勘はこちらでも健在のようである。

さて置き。いきなり走り出すランスに、慌てて4人も後を追っていった。


……


…………


『ブルルルルル……』

『グルルルルル……』

『フゥゥゥゥッ!!』


……同時刻、荒野の外れ。

荒野と廃墟の境目辺りに、3体の悪魔の姿があった。

それらは何やら争っているようで、片方の二体は"魔獣ストーンカ"。

ギョロリと大きい一つ目が印象深い、赤い牛の姿をした悪魔だ。

対してもう一方は、全裸の成人女性に尻尾と猫耳が生えた姿をしている悪魔。

人間と猫が強引に合体をさせられた結果、力を得たモノの精神の大半が猫となった哀れな存在だ。

そんな2体と1体は互いに威嚇し合っていたが、片方の"ストーンカ"が、
今の状況に痺れを切らして猫の姿をしたの悪魔に突進した!!


≪ドドドドドドッ!!≫


『ブモオオォォッ!!』


≪――――ドォォンッ!!≫


『フギャアァッ!!』


見かけによらず、素早く勢いのある突進に吹き飛ばされる半獣の悪魔。

それもその筈、ストーンカは、先程まで半獣の悪魔を追い掛け回しており、
何時の間にやら彼女は瓦礫の壁際まで追い詰められていたのだ。

それにより、瓦礫の壁に体を強打した悪魔は、仰向けに地面に倒れた。


『グフウウゥゥ~~……』


≪のそっ……≫


『ヒッ……』


思いのほかダメージが高く、直ぐには動けない半獣の悪魔。

そんな彼女に、一体のストーンカが覆いかぶさる。

直後、舌を出して猫の姿をした悪魔の頬に這わせようとしている。

そう……この"ストーンカ"は、彼女との"交尾"が目的だったのだ。

悪魔と言えど、動物としての性(さが)は同じなようである。

よって異様な臭気を放つストーンカの舌が、自分の体に近付いてくる事で、
抵抗できない半獣の悪魔の表情が恐怖で歪んでしまうが――――


「どりゃああぁぁッ!!!!」


≪――――グサァッ!!≫


『ゴガハァッ!!』

『グゴォッ!?』


突然、遠距離から"プラズマソード"が一直線に飛んで来て、
半獣の悪魔に覆い被さっていたストーンカの左横腹を貫いた!

遠投にはなかなか勢いがあったようで、急所を貫かれたストーンカは、右にどうと倒れた。

そして もう片方の、何が起こったかわからないストーンカは、
とっさにプラズマソードが飛んで来た左遠方を確認するが……


「(……あれくらいの大きさなら)」


≪――――パァン!!≫


『ガッ!? グギャアアァァッ!!!!』


50メートルほど離れた距離から、マリスがライフルを発砲!

直後、一発の神経弾はストーンカの目玉を撃ち抜き、
視力を失ったストーンカは、その場で雄叫びを上げて悶えた。

その視力が失った数秒の間に――――


≪ザシュッ!!≫


『……うるさい』

「(ピピピッ)ふん、こいつも"魔獣"なのか……仲魔にはなりそうだが、こんなエロ悪魔なんぞいらんわ」

「マリスぅ、凄いねぇ、あんなに遠くからなのに……」

「自分でもわかりませんが、"こちら"では、私は"これ"を使うのに向いているのかもしれませんね。
(狙いを定める"スコープ"というものも、便利ね……)」

「(むむむむ、それよりも――――)」


素早く切り込んでいたアリアンロッドが、
視力を失ったストーンカの首に剣を突き挿して、苦しむ間もなく絶命させていた。

それに遅れて、ランスは投げて突き刺さったままの、
プラズマソードを抜いて"ストーンカ"のアナライズを確認した。

そんなランスの後ろから、リアとマリス・エンジェルナイトも歩み寄ってくるのだが、
彼女達をよそに、ランスは半獣の悪魔に視線を移した。


『ファッ?』

「(素っ裸のねーちゃんに、猫の耳に尻尾……全くなんてエロい姿をしている悪魔なのだ)
 ……おい、大丈夫か? え~と……(ピピピッ)」

『フニャ……?』

「ほぅ"獣人ワーキャット"か……お前も悪魔なのか?」

『ニャア』


ランスが助けた悪魔は、獣人ワーキャット。

前述の通り全裸の成人女性に、猫耳と尻尾が生えているその姿は、
ランスのスケベ心を十二分に刺激してしまっており、
この時点で仲魔にする為の交渉を既に始めようとしていた。

対してワーキャットは、上半身だけを起こし、ランスを見上げている。

それにより、胸や股間などの大事なところが丸見えなのだが、
ランスは心の中で鼻の下を伸ばしながら、真顔で話す。


「人の言葉が喋れないようだが……俺様の言ってる事はわかるか?」

『ニャア』

「ふむ、じゃあ話に入るが、俺様はなぁ……
 お前の危ないところを助けてやったのだ、つまり……命の恩人と言うわけだ」

『ニャア!』

「(殺そうとした訳ではなく、交尾目的だった気がしますが)」

「(うるさい、似たようなものだろうが! それに見ろ、なんだか喜んでいる様子だぞッ)」

「(まぁ、そのようですが……)」

『…………』


≪じぃ~~……≫


「んっ? この"アームターミナル"が気になるのか?」

『ニャア』

「ほぅ、それなら話は早い、俺様はデビルサマナーなのだ。
 だから最強の俺様は大丈夫だが、お前のような か弱い悪魔が一匹では、
 またあんな"エロ悪魔"に襲われてしまうぞ? 最悪殺されてしまうだろうな」

『フニャゥ……』

「ならば、俺様の仲魔になるのだ! そうすれば、人生薔薇色だぞ? がははははは」

『ニャアッ、ニャアニャアッ!』

「むむっ?(何て言ってるんだぁ~?)」

『ご主人様、彼女は是非仲魔になりたいと言っているようです』

「ほぉ」

『ニャニャニャニャっ!!』


ワーキャットは、今度は尻尾を振るわせながら、エンジェルナイトとアリアンロッドを交互に指差す。

現在は本来の体型の四つん這いで、これも色気たっぷりである。

その行動に、アリアンロッドもワーキャットの言葉が何となく判るのか、腕を組みながらランスに言おうとする。

仲魔が必要な事は、彼女は百も承知だが……なんだか、機嫌が悪そうだ。


『……"ワーキャット"も、私達のような、"ライト系悪魔"になりたいようだ』

「何ぃ? って事は……」

「"自分も合体させて欲しい"って事なんじゃないのぉ?」

『ニャアッ!!』

「がはははは、ならば仲魔にしてやろう!」

『フニャァ~ッ♪』


≪がばっ!!≫


「おわっ!?」

『ゴロニャァ……』


どうやらワーキャットは、ランスの事が気に入ってしまったらしい。

その為か、仲魔にしてくれるのが嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべてランスに抱きつく"獣人ワーキャット"。

この行動は動物としては普通のスキンシップなのだろうが、
姿は95%が人間の女性の姿なので、ランスは胸が押し付けられる感触を受け、
無意識に左手は右肩に、右手はお尻に手を伸ばしていた。

その感触が、ワーキャットも心地よく感じているようだ。


「(ぐふふふ、素っ裸なのはアルケニーと一緒だが、
 なかなか尻や胸は良い感じだな! いっその事押し倒して――――)」


≪さわさわ≫


『ファッ♪』

「……ダーァリィンッ?」

『ご主人様ぁッ?』

『そろそろ出発ッ……しないのか?』

「!? お、おぉ……そうだったなぁ、わかっているぞ……びくびく」


……


…………


頬ずりしてくるワーキャットを、思わず押し倒そうと思ってしまったランス。

だが、後ろから凄い殺気を放ってくる3人に考えを押し留められると、
ワーキャットをアームターミナルに吸収するのだった。

……それが終ると、少し4人から距離を置いていたマリスがランスに声を掛けた。


「どうやら、無事に荒野を抜けれたようですね」

「うむ、これで六本木は目と鼻の先と言う訳だな?」

「はい、その筈です」

『とてもやり甲斐のある守護でしたッ』

『悪魔の歯応えも、なかなかだったな』

「(とりあえず、ワーキャットを可愛がってやるのは、後にしておくか。その後か前には合体検索だな……うむ)」

「リア、早くお風呂入りたいよぉ~」

「もう少しです、リア様」


……こうして、ランスの働いた勘(?)にもよって、"獣人ワーキャット"が彼の仲魔となった。

この2時間後、ランス一行は結局 更なるNEUTRAL悪魔に遭遇する事も無く、
"六本木"を視界に収める事に至るのであった。




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